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第296話 天使との攻防戦

―――バサリッ!と鳥類が羽ばたく様な音が周囲に響き渡り、


「おい、嘘だろ……あれって……」


吹き抜けとなっている天から地面に舞い降りてくる集団―――


それは―――


―――壁の紋様の姿そのままの、


「……天使……なのか?」


重厚な鎧を纏った天使の軍団が、八雲達の前に現れた―――






―――次々と浮遊島の大地に舞い降りる天使達。


夜の様に暗がりになった空には飛翔する天使がどこかの空間から次々と姿を現して、その数は既に数十体になっていた。


鈍く光る銀色の重厚な鎧にフルフェイスの兜、鎖帷子のような装備まで纏った聖騎士然とした天使の軍団が隊列を組んでいく―――


「これは……どうなってる?おい、誰かあの天使を以前に見たことあるか?」


振り返って神龍の眷属達に見た憶えがないか確認する八雲だが、


「私は初めて見るぞ」


ルビーの返事に他の眷属達も首を横に振る。


「ここに来て新キャラ登場とか、もしかしてあれが『守護者ガーディアン』ってヤツなのか……」


「その可能性は高いね……でも、御先祖様達が無事に帰ってきたってことは、対話とか出来るんじゃないかな?」


メリーアンの意見には八雲も、そう願いたいと思っているが向こうも腰に剣を下げている以上、簡単に油断は出来ない。


「―――私が話し掛けてみよう」


「ちょっと、アン!危険よ!!」


普段は冷静なアイズが思わず幼馴染の愛称で止めるほど、メリーアンの行動を制止しようと必死だ。


「大丈夫だよ、アイズ。無茶はしないさ。ただ会話が成り立つのか試してみるだけだよ」


アイズに落ち着く様にと諭してから、メリーアンは探索チームの前に出た。


「貴方達は此処を護っている者なのだろうか?私達はこの遺跡を探索しにきた者で、決して遺跡に危害を加えようなどと考えていない!」


「……」


メリーアンの訴えが理解出来ているのか、出来ていないのか騎士姿の天使達は何も返答をしない。


「もしも此処が神聖な場所だというのであれば、我々は直ちに撤収する!だから―――ッ?!」


―――そこまでメリーアンが告げたところで、地上に下り立った天使達が腰の剣を一斉にスラリと抜き去った。


「会長!―――下がれ!!!」


そう叫んだ八雲の声が響いた時にはメリーアンの目前に剣を振り上げた天使が空から舞い降りながら、その剣を振り下ろそうとしていた―――


「……えっ?」


―――突然の急降下攻撃に、一拍反応が遅れたメリーアンの目前にその鈍い光を放つ天使の剣が迫った瞬間、


「あ……ああ……ハァ……ハァ……」


キィイ―――ンッ!という甲高い金属の衝突音がメリーアンの目の前で火花を散らし鳴り響く―――


「話し合う気は、なしかよ……」


「―――九頭竜君!?」


―――両手で黒刀=夜叉を握った八雲が、メリーアンの前にその夜叉を差し出したことで天使の剣を受け止めて彼女の命を救った。


「……会長、後ろに下がってくれ」


天使の剣を受け止めながら八雲がメリーアンに後退を促す。


「九頭竜君……ありがとう!」


礼を言ってウェンス達の元に下がるメリーアンを確認して、天使達の動きに集中する八雲―――


―――まだ空から増えてくる天使達はひとり、またひとりと次々に腰の剣を抜き左手に盾を構え直していく。


八雲が飛び出した時点で―――




ウェンスは―――

蒼龍鎧=蒼壁を身に纏っている。


シュティーアは―――

黒神龍装ノワール・シリーズの黒戦鎚=雷神を構えていた。


ルビーは―――

白龍大剣=雪崩を片手でブンッ!と振り抜いた。


サファイアは―――

白龍槍=初雪をくるくると器用に回して、ビタリと天使に穂先を向ける。




「―――これは俺も得物を出すとするか!」


そう言ったリベルタスは『収納』から何かを引き出すと―――


「蒼龍鎚=蒼撃そうげき!」


―――その蒼い戦鎚はリベルタスが蒼神龍の鱗を鍛えて造り上げた鎚である。


平面になっているハンマーヘッドと対になるように尖ったヘッドが反対側にあり、シュティーアの雷神によく似た形をしている。


「それじゃあ、僕も!―――おいで!蒼空そうくう


コレッジが両手を空に向けると、そこに開かれた『収納』から剣の柄が舞い降りてくる。


その柄を握って構えるコレッジの剣は、マキシの蒼夜によく似た姿をした蒼き剣だった。


そのマキシも手には蒼龍剣=蒼夜を握り、天使に向かって構えていた。


―――メリーアンもクラフト家の家宝であるスラッシュを鞘から抜いて構える。


―――アイズは家宝のトゥーエッジを両手に握って、クロスに構えた。


―――ロレインとラミアはそれぞれ魔法杖を握りしめて後方支援を心掛ける。


こうして臨戦態勢が整ったところで、天使騎士達が一斉に探索チームに襲い掛かってきた―――






―――先陣を切って飛び出したのは九頭竜八雲だ。


―――『身体加速』

―――『身体強化』

―――『思考加速』

―――『限界突破』


身体を強化する系統スキルをフル活用して、飛び掛かってきた天使騎士の先陣を一文字に横薙ぎで真二つにした。


その一番槍を皮切りに八雲と共に攻撃担当アタッカーのシュティーア、ルビー、サファイアも天使騎士と激突する―――


「オリャアァアア―――ッ!!!」


―――雪崩を大きく振り被り、次の瞬間神速の剣が天使騎士を袈裟斬りに斬り裂く。


「掛かってきなさい!!ハァアア―――ッ!!!」


初雪の柄を握り、ブンブン!と頭上で回転させたサファイアに向かってくる天使騎士―――


―――天使の剣を初雪で振り払い、回転させた槍の石突きで天使の鎧の腹部を突き飛ばす。


突き飛ばされた天使騎士が神殿の壁まで吹き飛ばされて、べコリ!とクレーターのような窪みを作って壁にメリ込んでいた―――


―――更に飛び掛かる別の天使騎士をサファイアは返す穂先で斬り倒していく。


「そりゃァアアア―――ッ!!!」


八雲と共に前に出たシュティーアは雷神を両手で握り締めるとフルスイングで天使騎士を打ち付け、その瞬間に得意の《雷撃《ライトニング》》を天使に流し込む―――


―――バチバチ!と閃光が天使の鎧に走り抜け、鎧の隙間の彼方此方から灰色の煙が立ち上ってきているのが見えた。


そして改めて黒小太刀=羅刹も取り出した八雲は―――


―――『限界突破オーバー・ステータス』を発動すると蒼白いオーラが包み込み、そこから『身体加速』に乗せた神速の残像を残しながら神殿の地に下り立った天使騎士を次々に斬り倒していく。


八雲達に倒された天使騎士達は流血もなく斬り飛ばされたり潰されたりした端から、まるで消えるように光の粒子の様になってその場から消えていく……


次々と消えていく天使騎士の軍団は徐々にその数を減らしていくが、それでもまだ数十体の天使が空に地上に犇めいている。


「す、凄い……あれが、九頭竜君の本当の力……」


スラッシュを握りながらマキシとウェンス、コレッジとリベルタスと共に周囲を警戒しながら八雲達を見ていたメリーアンは、予想の遥か斜め上を突き抜けたような八雲達の戦闘力に思わず身震いをしていた。


それは一緒にいるアイズ、ロレイン、ラミアもまた同様だった……






―――戦いは始まりから八雲達の圧倒的な戦闘力に天使騎士達は次々とその姿を消していった。


「オォオオオ―――ッ!!!」


気合いと共に神速の身体加速と斬撃で次々と天使騎士を斬り倒しては、光の粒子へと回帰させていく八雲―――


―――神龍の眷属達も天使騎士達を薙ぎ倒していく。


八雲達が奮闘していることで幸運にもメリーアン達の元まで近づく天使は少なく、向かって来てもコレッジとリベルタス、そしてマキシによって駆逐されていった。


「アハハッ!―――マキシ様!暫く会わないうちに凄く強くなってるね♪」


コレッジが天使騎士を蒼夜で斬り倒すマキシを見て、明らかにLevelが上がっていることを喜ぶ。


「うん!八雲君の『龍紋』のおかげなんだけどね」


そう答えたマキシにメリーアンが問い掛ける。


「ヘイト君、その『龍紋』とは何だい?」


素の好奇心で問い掛けたメリーアンだったが、『龍紋』のことを質問されると思っていなかったマキシは一辺に顔が真っ赤に染まる。


「ヘッ!?りゅ、りゅう、『龍紋』……ですか?/////」


「うん?どうしたの?何か変なこと訊いた?」


自分の通っている学園の生徒会長に対して八雲に精を注がれることで刻まれる刻印だ、などとは緊迫したこの状況でとても説明出来る訳もなく―――


「い、今はそれどころじゃないから!!/////」


―――と話しをはぐらかせて切り抜けるマキシ。


「それもそうだね……ところで、あの天使騎士……あのレリーフの紋様……どこかで見た様な気がしているんだが、思い出せない……」


壁の天使騎士を模した紋様の様なものに視線を向けながら、メリーアンは自分の記憶を遡っていく―――


「―――ったく!いつまで湧いてくるんだ!この天使は!天使なら大人しく天国で昼寝でもしてな!!!」


―――そう叫びながら蒼撃を襲い来る天使騎士に打ち付けるリベルタスの言葉に、メリーアンの脳裏でパズルが完成していくかの様に記憶が再構築されていった。


そこから引き出された記憶が教えるあの天使とは……


「天使……天国……天聖神……天聖神の……まさかっ!そんな!!!」


そこで何かに思い至ったメリーアンが叫び声を上げた。


「どうしたの!?―――アン、何かあったの!?」


幼馴染のアイズが突然叫んだメリーアンの様子に不安そうな声で呼びかける。


「ああ……でも、そうだ……あれは……間違いない」


目を見開いて壁の紋様を見つめるメリーアン。


「―――九頭竜君!!!」


そして次の瞬間には前線で戦っている八雲の名を叫んでいたメリーアンと、その声に思わず振り返ってメリーアンを確認する八雲。


その様子から只事ではないと感じた八雲は、神速のスピードでメリーアン達の元に駆けつけた。


「どうしたんですか?会長、こんな時に俺に何か?」


「九頭竜君!あの『守護者ガーディアン』の正体が分かったかも知れない!!」


突然のメリーアンの発言に、八雲も驚きを隠せない。


「―――アイツ等の正体が!?それは一体何ですか?」


急かすように問い掛ける八雲に、メリーアンは一呼吸置いて話し始める。


「あの壁の天使の紋様―――どこかで見覚えがあると思って、ずっと思い出しそうとしていた。そして思い出したんだ!あの紋様は天聖教会の聖典書物などに出てくる『天聖神の天使』だよ!確か天聖教会では『守護天使』として崇められていると聞いたことがあるんだ!!」


「天聖神の守護天使!?そんなものが、どうしてこの遺跡に?」


困惑する八雲がメリーアンに訊ねるが、


「そんなことは私にも分からない!それこそ『神のみぞ知る』ってやつだよ」


「それ、どっかで聞いたことある様な台詞だな……だけど、正体が分かっても向こうの目的が何も分からないんじゃ―――ッ!?」


そのとき空と大地を覆う天使軍団の中央に、暗がりに包まれた空から一筋の光が差し込む―――


「あれはっ!?―――何か来るぞっ!!!」


―――八雲はその光の柱に嫌な予感しか浮かんでこない。


そして―――


「あれはっ!!!」


―――その予感は的中した。


光の柱が差した天から何かが―――いや誰かが降臨してくるのが八雲の目に映った。


それは守護天使達とは違って白い布を纏い、白く大きな六枚の羽根を羽ばたかせて下りてくる女の姿をした天使だった。


―――銀のウェーブが掛かった長い髪


―――白い布を押し上げる豊かな胸元


―――白い布の裾から見える細くて美しい脚


―――全身を覆う光のようなオーラ


すべてが神々しい彼女だが―――


―――その顔は両目を黒いベルトのような物で覆い隠し、口と鼻の周りは烏マスクのような黒いマスクで覆い隠されている。


「……顔にコンプレックスでもあるんですかね?」


思わず馬鹿なことを口ずさむ八雲に、異質な存在が現れたことで緊張していた全員が呆れ顔を向ける。


そんな八雲達に向かって、覆面の天使は右手に握っていたベルのような物を天に向かって翳す。


「ホラァ!!貴方の言動で天使が怒っていらっしゃいますわよ!どうしますの!!!」


八雲のせいだと言わんばかりにサファイアがツッコミを入れた瞬間―――


―――覆面天使のベルがその頭上で振られたかと思うと、その鐘から発せられる眩い光の放出と頭痛がするほどの超音波の様な音が神殿の周囲に鳴り響く。


振っているのはベルの様なものなのに響いてくるのはキィ―――ンッとした機械音の様なもので、


「ウォオオッ!?音波攻撃か!?―――おい!皆、大丈夫か?って、オイッ!?」


思わず夜叉と羅刹を地面に刺して両手で耳を塞いだ八雲だったが、周囲の皆を見回すと様子がおかしい。


その様子とは―――


八雲以外の全員が紅潮した頬でトロンとした目に変わり、全身がフラフラと揺れている。


「おい!どうしたんだ!?―――しっかりしろ!!!」


あまりにおかしなその様子の変化に声を張り上げて皆の正気を取り戻そうとする八雲。


だが、しかし―――


「……熱い……これ、熱いぞ……/////」


―――何かをブツブツと呟いたルビーが羽織っていた白いコートを脱ぎ去る。


「おい!ルビー!!しっかりしろ!!!」


ルビー以外にも次々とコートや上着、装備を脱ぎ去っていく探索チームに八雲は困惑して、それでも叫び頬を叩いたりしてみるが、まったく正気に戻る様子がない。


「……痛いよ、八雲君……ハァ♡……それにしても、此処は熱いねぇ♡/////」


頬を叩かれたマキシですら正気を取り戻すことなく、蒼神龍のコートを脱ぎ捨てていた。


彼方此方で美女、美少女達が次々と身に着けている装備から服まで脱ぎだしていく状況に、八雲も何が起こっているのか理解出来ない。


「ハァアア……やくもさまぁ♡……アタイ……なんだか、身体が火照って……/////」


シュティーアはもう下着に手を掛けている。


「アア♡……いけませんのに……でも、身体がいうことを聞きませんわ♡……はやく、やくもさまに……/////」


いつの間にか蒼壁を解いたウェンスも、執事服を次々に脱ぎ去っていく。


「ウンンッ……なに、これぇ♡……なんだか熱くって……はやく、服を脱がなきゃ♡/////」


コレッジまでトロンとした表情で脱いでいく。


「鍛冶場にいるよりも熱いじゃないか♡……ハァハァ♡……あついぃ♡/////」


その隣ではリベルタスが早くも白いレースの下着姿になっていた。


そして―――


「なんだいぃ?この熱さはぁ♡ まるで真夏の日差しの様じゃないかぁ♡/////」


上着も下も脱ぎ捨てて、青い色の下着姿になったメリーアンは巨乳をプルン♪ と揺らしながら前屈みになってブラの背中のホックに手を伸ばしていく。


「クッ!こんなに熱くなるなんて♡……私としたことが♡ はやく脱がないとぉ♡/////」


クールビューティーのアイズもメリーアンの横で次々と服を脱ぎ、そのセクシーな赤い下着を披露していった。


「熱いですぅ♡……くずりゅうせんぱぁいぃ♡……なんですかぁこの熱いのぉ♡/////」


ロレインも可愛いピンクの下着姿で、さらにブラを外し始めた。


「ウゥッ!……こんな、ところで……でも、もう我慢、出来ない……/////」


ロレインの隣で装備も放り出したラミアが次々に服を脱ぎだして、白い清純な下着姿に墜ちていく。


「ど、どうなってるんだ!?まさか、魅了チャームや催眠の類いなのか!?でも、神龍の眷属まで掛かるような催眠なんてあるのかよ!?」


あられもない姿を披露していく美女達に、思わず後退する八雲を背中から抱きしめる者がいた―――


「ッ!?―――お前!サファイア!!おい!しっかりしろ!!!」


―――後ろを振り返って見えるサファイアの顔に、怒鳴りつけるようにして正気を取り戻させようとする八雲。


しかし―――


「クッ!……うるさいですわよ……この、変態……貴方は……大人しく……」


そう言って八雲を突き飛ばし―――


「―――わたくしを抱けばいいのですわ!!!/////」


―――そう叫んだサファイア。


既にすべてを脱ぎ捨てた生まれたままの姿、つまり全裸の姿ですべてを晒して仁王立ちしながらサファイアは八雲を睨みつけているのだった……



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