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第15章 九頭竜八雲の学園生活編

第310話 みんな大好き♪ノワール先生~!日常編

―――平和な日常が続くフロンテ大陸北部ノルドの超大国ヴァーミリオン皇国。


その首都レッドの周囲を浮遊周回している浮遊島―――


その浮遊島にある『バビロン空中学園』に、今日も朝から多くの生徒達が集って来る。


そんな当たり前の日常な景色の中で―――


「―――キャア~♡ カワイイ~♡/////」


「―――ヒャア~♡ あの子達、こっちに手振ってるぅ~♡/////」


―――女子生徒達の黄色い声を集めるのは、


地獄狼ガルム達に跨ったシェーナ、トルカ、レピス、ルクティアのエルフチビッ子四人組だ―――


通学路の彼方此方からカワイイ♡ という声が上がり、手を振られたら振り返すチビッ子達。


そんなアイドル級の声援を受けるシェーナ達の隊列につき従って護衛のシリウスが続き、その後ろには学園に通う生徒である雪菜、ユリエル、ジェミオス、ヘミオス、コゼローク、シャルロット、ヴァレリア、そして今日は以前に学園へ編入しているアルヴィトも含めた『龍紋の乙女クレスト・メイデン』達が続いていた。


もはや毎朝の恒例行事の様になっている幼女達の通学姿に、以前はロリータ性癖の変態が湧いてきたのを八雲が剣聖技『衝撃拳ダムド・インパクト』で吹き飛ばしたが、今はシリウスが目を光らせて護衛している。


シリウスからすれば、もしこの幼女四人に何かあろうものならノワールと八雲から何をされるか想像すらしたくない……


下手をすると首都レッドが地図から消えることまでシリウスの頭を過ぎる。


だからこそ護衛には細心の注意を払ってギラギラした目つきで周囲を見回していた。


そしてチビッ子達が学園の正門まで到着する時には―――


「フオォ~♡ 来た来たぁ♡ 我の可愛い天使達よ♡ いや、神にジョブチェンジしたんだっけ?」


「一度、本気で神に怒られてください、ノワール様」


「オオッ!今日も無事でしたか!よかったぁ♪ 何度、通学路を出迎えに行こうと思ったことか……万一、何かあったなら私の『雲雀殺ひばりごろし』で……」


「そんなことで神龍の武器を出すのはやめなさい!……まったく、ノワールに何か悪いものでも感染うつされたの?」


近づいて来るチビッ子達に、今日もノワール先生とダイヤモンド先生は通常運転だった。


アリエス先生と白雪先生の溜め息までセットで……


だが、そんなふたりの様子を気にも留めずノワールとダイヤモンドは、只管チビッ子達にブンブンと笑顔で手を振っているのだった……






幼年部その一

―――登校から全員が揃うまで自由遊び時間


幼年部の子供達は各家庭の事情により通学時間がバラバラになりやすい。


親の仕事の都合もあれば、その日の都合で時間がズレてくる。


そんな全員が揃うまでの時間は皆で遊んだり、室内で絵本を読んだりと自由時間になるので先生達の仕事はその様子を見て危ないことをしていないか見守るのが仕事だ。


そして見守るのが自称得意のノワールが、


「よしっ!子供達を見守るのは我に任せろ!―――『龍眼ドラゴン・アイ』!」




―――『龍眼ドラゴン・アイ


黒神龍の能力の1つ。


任意の対象付近に『龍紋』を飛ばして対象のことが視覚に映り、視認出来る能力。


対象が複数であっても黒神龍の瞳がまるでマルチウィンドウの様な状態となり、神龍だからこそ大量の映像状況を脳が処理可能となっている。


以前の解説から何度も繰り返すが……決して覗きに使用するための能力ではない。




「シェ~ナちゃん♪ アルファちゃんに触ってもいい?」


同じ幼年部の幼女がアルファから降りたシェーナに話し掛ける。


「……コクコクッ/////」


表情に乏しいシェーナだが、アルファに触れたいとニコニコするその女の子に、照れ隠しをしながら黙って頷いた。


「フワァ~♪ モフモフだねぇ♪ 可愛いねぇ~♪」


大人しく座っているアルファの胸元を撫でたり、背中を撫でたりニコニコと褒める女の子に、シェーナの表情がパァ☆と輝いたかと思うと―――


「―――あるふぁちゃ!ちょーかわいい!!」


【―――ワゥン!】


その女の子にシェーナは嬉しさで我慢出来なかった気持ちを声に出して伝えると、アルファも返事を返していた―――


「ブハッ?!―――ハァハァ♡ お友達にドヤ顔キメるシェーナ、マジカワユス……/////」


「幼女を覗き見しながら鼻血とは立派な変態ですね、ノワール様……」


アリエスはそっと取り出したハンカチで、ノワールの鼻血を拭き拭きしていった……


そんなノワールに負けず劣らずのダイヤモンドは―――


「エヘヘッ♪ ダイヤしぇんしぇ~♪ ニコニコしてるぅ♪」


「あ~!ダイヤしぇんしぇ、おとななのに、よだれたれてるぅ!」


「ハッ?!―――いや、これは皆が今日も可愛くて!可愛くて思わず!まぁ皆の元気な顔が私の元気の元なのです♪」


「ふ~ん、元気になると、よだれがでるのぉ?」


「そ、それは偶々笑顔になっていたら、無意識に出てしまっただけで―――/////」


「―――わたちたちを食べりゅ気なんだぁ~!逃げりょ~♪」


「キャー!キャァア♪」


「コ、コラッ!は、走ったら危ないからっ!―――よぉし♪ それじゃあ~捕まえますよぉ~♡」


「―――キャァアッ♪」


ダイヤモンドが子供相手に始めた鬼ごっこで、幼年部の校舎の前にある広場では子供達が元気に走り回る。


「はぁ……白い妖精ホワイト・フェアリーの総長が見せていい顔じゃないわね」


呆れ顔ではあるものの、そんなダイヤモンドの姿に、白雪も笑みが浮かんでいた。


そんな白雪のスカートを、チョンチョンと引っ張る大人しそうな男の子がいた。


その手には絵本が握られている。


「……今日はそれを読んで欲しいの?」


優しい声色で問い掛ける白雪に、その幼児はコクリと頷いた。


「それじゃ、静かな部屋の中で読みましょうね」


そう言って男の子の手をそっと握ると、そのまま校舎の入口に向かう白雪―――


「……私もダイヤのこと、どうこう言えた義理ではないわね/////」


―――そう呟いて、手を繋いだ子供と校舎に入って行く白雪。


それをノワールとアリエスは生温かい視線で見つめていたのだった―――






幼年部その二

―――お片付け・朝の会


全員が揃った時間に遊んでいた物をお片付けして、それぞれのクラスに入って朝の会と言われるホームルームが行われる。


そこではバビロン空中学園の生徒全員に渡されている学生証カードを先生の持つ水晶に近づけると出席記録が付く。


それから体調の確認をしたり、今日の予定について先生から説明したりといったことが行われる時間だ。


もう自分達で子供の面倒が見られるとアムネジアから認められたノワール達は、朝の会も校長抜きで任されていた。


「さあ!我の可愛い天使達!!―――今日の午前中は我等と共に外で遊ぶぞォオオッ!!!」


「―――違います。屋内で絵本の日です。ノワール様」


「なにぃ!?外で遊ぶ方が楽しいではないか!?」


「ノワール様の基準でプログラムの変更しないでください……」


「えっ!?……外で遊ぶのではないのですか?」


「貴女はまずプログラムを覚えなさい……」


勝手に外で遊ぼうとするノワールと、外で遊べないと知ってショボーンとなるダイヤモンド……


そんなふたりにアリエスと白雪のツッコミが斬れ味を増していくのだった―――






―――屋内で教室の床にペタンと座り込む子供達。


アルファ達の周りに集まってモフモフを感じながら座っている幼児達は、ダイヤモンドの読み聞かせる絵本に夢中だった。


ダイヤモンドは子供達に絵本を読み聞かせる時は、臨場感の溢れる感情の籠った読み聞かせをする。


「キャァ!お姫さま逃げてぇ~!」


「アイツわるい子なんだ!お姫さまあぶないよ~!」


子供達はダイヤモンドが、ゲフゲフッ♪ と悪い魔女と捕まる姫のシーンで感情を込めて語ると、途端に子供達から可愛い逃げてコールが上がっていることにノワールが歯軋りする。


「可愛い子供達の声援を一身に受けるとは……ダイヤモンド!恐ろしい子!」


「いやノワール様も絵本読んでいる時には大概同じ様に声援受けているじゃありませんか?」


ノワールもまた、絵本を読む際の感情移入やシーンごとの語り方が抜群に上手いため、子供達からはノワール先生の絵本の日も人気なことをアリエスが言うと、


「馬鹿か!―――我以外に子供達の声援が集まるなど、天使達の守護者たる黒神龍としてゆるせんだろう!!」


「何たる理不尽……八雲様の気持ちが分かりました……」


ノワールのダイヤモンドに対するライバル心が芽生えた瞬間だった―――






それから―――


お昼ご飯の時間になって食事を取り、午後のプログラムをこなしてから帰りの会になる幼年部。


帰りの会になると一般的な道徳を説いた本の読み聞かせなどを行い、帰りの準備を行っていく。


子供達の親達宛ての、子供達の様子などが書かれた手紙をカバンに仕舞って、今日の幼年部は終了となった。


皆が幼年部用の上から着て腕を通す薄桃色の制服姿で、赤いベレー帽を被って帰りの支度を始める。


黄色い肩掛けバッグを下げていき、そしてシェーナのバッグからは相変わらずクマのぬいぐるみが顔を出していた。


「それじゃあ、皆さん。また明日、元気に学園で会いましょうね。はい、さようなら」


最後に白雪が落ち着いた声で帰りの会を終えて、保護者が迎えに来た順に次々と帰路に就く。


「さあ!我達も帰ろう♪ そろそろ八雲達がアズールから戻ってくる頃だからな!!」


ノワールの声に、チビッ子四人組は床に伏せているアルファ達に一斉に跨る―――


「よし!出発だ!!」


―――ノワールの掛け声で一斉にゆっくりと立ち上がり、歩き出すアルファ達に揺られながら進むシェーナ達。


「―――待ちなさい。教師はこれから明日の授業の準備よ!」


そう言って白雪はシェーナ達と一緒に帰路に就こうとしていたノワールの肩をガシッと掴み、引き戻す。


「えっ?―――ヤダ、ヤダヤダッ!!我の天使達が帰り道で何かあったらどうするのだ!?」


「そのためにあの男を護衛に就けているのでしょう?―――貴女も何勝手に帰ろうとしてるの!!」


そこで荷物を纏めて、そっと外に出ようとするダイヤモンドの肩も捕まえる白雪―――


―――すると振り返ったダイヤモンドは泣きそうな顔で、


「白雪様!どうか私だけでも護衛させてください!!あの子達に何かあったら―――」


「―――だ~か~らぁ~!」


駄々を捏ねるノワールとダイヤモンドを額に青筋を立てて肩を力強く握る白雪―――


―――そんな三人の傍では、


「エヘヘ♪ アリエスしぇんしぇ!さよ~なら~♪」


「ファ~……トルカ、かえるの……」


「ルクティアもちゃんとかえるから!」


「……(クマのぬいぐるみの手を振ってバイバイ)」


レピス、トルカ、ルクティア、シェーナがアリエスに挨拶する。


「はい、さようなら♪ 気をつけて帰ってね」


「はぁ~い♪(コクコクッ)」


アルファ達に跨って校門に向かって行くシェーナ達四人組を見送るアリエス。


【雪菜様―――いま校門に向かいました】


【了解だよ~♪】


ノワール、ダイヤモンドが白雪と言い争っている間に、『伝心』で雪菜達にお迎えを頼むアリエス。


そうしてノワール達に向かって振り返ったアリエスは八雲から習った額に右手を当てて、左手で腰を抱くようにしながら、クイッとその腰をくねらせて斜め立ちするような体勢で―――


「やれやれだぜ……ですわ……ノワール様」


―――と、ポーズをキメて溜め息を吐く。


そこから白雪の応援に向かうのだった―――






―――そして八雲がアズールを出発して、早一週間が過ぎていた。


八雲は『伝心』でディオネにブラウ公国の港町エンティアまで天翔船黒の皇帝シュヴァルツ・カイザーで迎えに来てもらい、シュティーア、スコーピオ、ジェーヴァ、ルビー、サファイア、葵、白金、『天空神殿』のラースと共にヴァーミリオンの浮遊島へと帰還した。


ただ、その際に蒼天の精霊シエル・エスプリのサジェッサとエスペランザもマキシの元に行くと言い出し、まだアズールに残っているセレストに『伝心』で了承を得たふたりも、一緒に搭乗してヴァーミリオンにやって来ていた。


こうしてアズールから帰国した八雲の元には―――




黒神龍の龍の牙ドラゴン・ファングからは―――


序列01位アリエス

序列03位クレーブス

序列04位シュティーア

序列07位アクアーリオ

序列08位レオ

序列10位リブラ

序列11位ジェミオス

序列11位ヘミオス

序列12位コゼローク


―――以上9名がヴァーミリオンの屋敷にいて、サジテール、フィッツェ、スコーピオ、ジェーヴァはティーグルの黒龍城に駐在した。




白神龍の白い妖精ホワイト・フェアリーからは―――


総長「不屈」のダイヤモンド

副長「幸福」のエメラルド

四番「情熱」のルビー

六番「高潔」のサファイア

七番「創造」のオパール

八番「潔白」のトパーズ

九番「誓い」のラピスラズリ

十二番「聡明」のアクアマリン


―――以上8名がヴァーミリオンに駐在する。




蒼神龍の精霊シエル・エスプリからは―――


セカンド『賢明』のサジェッサ

フォース『願い』のウェンス

エイス『夢』のレーブ

トゥウェルフス「希望」のエスペランザ


―――以上4名がヴァーミリオンに駐在することになった。




そして―――


ヴァーミリオンに戻ってから、日常的に学園へ朝から向かう八雲達。


だが、その集団の中に今日からひとり、新たな学生が加わっていた―――


「オオッ!似合うじゃないか」


「そ、そうですか?あ、ありがとう、ございます……八雲殿/////」


八雲と同じく真紅のブレザーとグレーを基調とした赤と黒のチェックカラー膝上プリーツスカート。


胸元に校章があり、白のブラウスに高等部の赤色の大きなリボンを襟元に結んだ―――七野ななのが立っていた。


「今日からよろしくな、七野」


「はい、私こそ……あの、本当に私が学園に通っても、よろしいのですか?」


「ちゃんと許可も貰ってるんだ。良いに決まってるだろう?」


「畏まりました/////」


八雲はこの一週間の間、七野を『完堕ち』スキルと『調教』スキル、そして何より『神の手』スキルによって、身も心も八雲に従順な女へと変わっていた。


その際の『調教』については、また語ることになるだろう―――


その八雲も、ずっと七野に掛かり切りだった訳ではなく、ヴァーミリオンに戻ってからは七野を傍で監視するために学園の校長達と交渉して七野の編入を認めてもらったり、学園側にメリーアンの『研究テーマ』に出来るだけ協力を願ったりと、バタバタと動き回っていた。


「それじゃあ、学園に行こうか」


「―――オオォ~♪」


アルファ達に乗ったチビッ子四人組を先頭に、バビロン空中学園に通う女生徒達と新たに七野を加えて、八雲は日常の学園生活へと向かうのだった―――



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