目次
ブックマーク
応援する
2
コメント
シェア
通報

第371話 龍紋の妹達と暗闇に潜む者

―――コゼローク、アマリアの純潔を捧げられた八雲


まだ夜は終わらない―――


汗だくになって肩で息をするコゼロークとアマリアを横に、上に四つん這いになるジェミオスと下で横になったヘミオスは、ベッドの上で重なり合っている。


「はぁ♡ 兄さま……こちらに♡/////」


「兄ちゃん♡……僕の方が先だよね?/////」


ふたりから熱い視線を向けられながら、ヘミオスの膝裏に膝を入れたジェミオスが腰を振って、まるで美少女のフェロモンを振り撒くようにふたりして小さな喘ぎ声を上げていく。


「―――ヒャウンンンッ♡♡♡!!!/////」


「―――ヒャアアアッ♡♡♡!!!/////」


―――『神の手』スキルで快感が電撃のようにふたりの身体を走り抜ける。


「に、にいさまぁ♡! そ、そんな―――/////」


「やぁん♡! に、にいちゃん―――/////」


絶頂してすぐに律動を開始した八雲に、涙を溜めた瞳で懇願するように見つめるジェミオスとヘミオスを見て、八雲の中の欲望がどこまでも膨らんでいく。


そこから―――


「あぁあんっ♡ にいさまぁ♡ にいさまぁああ♡―――/////」


「あっ♡! あっ♡! あぅうううっ♡ に、にいちゃんっ♡―――/////」


ふたりの肢体が波打つ様で八雲の欲望も高まっていく―――


―――寝室にはふたりの嬌声と美少女の汗と愛液から漂う香りが充満して、腰の動きを止めない八雲は美少女姉妹に限界まで貯めた欲望を注ぐことしか考えられない。


「ああっ!すげぇ!もうっ!―――ジェミオスッ!!」


―――そう叫んで容赦なく欲望を注ぎ込む。


「アハァアアア―――ッ♡!/////」


その熱でジェミオスは幸福感に満たされながら再び絶頂する。


「―――ヘミオスッ!!」


続けて迸る欲望をヘミオスに向けて欲望解放を開始する―――


「ア”ア”ア”ァアアッ♡!―――ォオオッ♡/////」


背中を弓なりに仰け反らせて、ビクビクと痙攣しながら大量の欲望を注ぎ込まれるヘミオスは、美少女がしてはいけない顔を見せて絶頂の余韻に酔いしれていく。


「ああ……ぜんぶ……」


ようやく欲望を吐き出し終えて八雲は達成感に満たされるのだった―――






―――それから、


キャンピング馬車に設置している豪華な浴室に浸かる五人―――


巨大なキャンピング馬車には五人で入っても余裕のある湯船が設置されていて、さきほどの汗を皆で洗い落としていた。


「あの……兄さま……/////」


「もう♡ エッチだよ、兄ちゃん/////」


「アウゥウゥ……はずかしぃ……/////」


「こんな格好……/////」


掘り込み式の湯船から身を乗り出した八雲の妹ポジション美少女四人が、尻を八雲に突き出していた―――


「ホント皆、可愛いなぁ♪ でも……まだ、これからだからな」






―――そして、


何回したのかも分からなくなるくらいに続いた夜も明けて、ベッドに並んで眠る五人―――


誰からともなく目を覚ましていき、裸の美少女達にひとりひとり、おはようのキスをしたあとに、


「ああ、そうだ!皆にこれを渡したくて―――」


―――そう言って八雲は『収納』から四つの細長い化粧箱を取り出すと、四人に手渡した。


「兄さま?これは……」


「うん、まあ開けてみてくれよ」


八雲の言葉に四人が綺麗に化粧装飾された箱を空けると―――


「うわぁ♪」


「これ、可愛い♪」


「こ、これ……頂いていいんですか?」


「すごく可愛い/////」


皆それぞれ感動した表情で八雲を見つめる。


「昨日寄った装飾品を扱ってる店で見つけて、皆に丁度いいんじゃないかと思って」


八雲が装飾品の店で買った物とは―――


お揃いのペンダントで、銀のチェーンとペンダントトップには黒い鏡面にまで磨かれたクロスが付いている。


「このペンダントって……」


「おっ、流石にジェミオスは気がついたか。そのペンダントトップは俺が黒神龍の鱗で造ったんだ。チェーンが装飾品の店で売られているのを見つけて、ペンダントトップは俺が後から付けた。四人とも仲がいいから、一緒の物を贈りたくて」


そう言って照れくさそうに頬を掻く八雲に、四人が一斉に抱き着くと、四人が口々に礼を告げる。


そのペンダントを首に付けてお互いを見ながら笑顔を見せるジェミオス達。


その様子を見て八雲は心の中で―――


(やっぱり妹は最高だぜっ!)


―――と、妹分達のことを見つめていた。


こうして新たな『龍紋の乙女クレスト・メイデン』が加わり、そしてこの四人は八雲の命名した『龍紋の妹達クレスト・シスターズ』となった瞬間だった―――






―――コゼロークとアマリアが『龍紋の乙女クレスト・メイデン』に加わって一週間ほどの時間が過ぎた。


その間に八雲は当初の計画通り、オーヴェスト=シュヴァルツ連邦に加盟する国々の首都まで繋げた道路の拡張工事を、滞りなく進めていった―――


―――そして、最も先進的な交通網を引いた大国が、この世界に生まれる。


もうすぐ八雲は公式にオーヴェスト=シュヴァルツ連邦の盟主となる。


各国から代表がティーグル公王領の黒龍城へと集い、『シュヴァルツ皇国』と―――


―――レオパール魔導国、ウルス共和国、フォック聖法国、イロンデル公国、フォーコン王国から成る『オーヴェスト五大同盟』が調印式を行い、フロンテ大陸西部オーヴェストを統一するという世界の歴史上始まって以来の連邦国家の誕生を成し得たのだ。


しかし―――


―――大きな時代の動きには必ずひずみが生まれるのも、また世の常である。


八雲の与り知らぬところでは今も世界の闇に浸り、調和を望まぬ者達がこの連邦国家誕生を忌々しく、疎ましく捉えて世界を濁流の渦へと落とそうと画策していた―――






―――ティーグル公王領 首都郊外


そこは一商人が財を投じて建てたという立派な屋敷があった―――


白壁の宮殿のような屋敷は夕陽に赤く染められていき、立派な庭の外を鉄の柵で囲われて、その正面の門にも柵の周囲にも厳重な警備の者達が行き交っている。


その屋敷の一室には―――


「―――どうか、どうか私の願いを聞き届けてもらいたい!」


―――甲高い声で目の前の初老の男に詰め寄るように告げる男がいる。


「まあ、どうか落ち着いてもらいたい―――ゲオルク王子」


宥めるように語りかける初老の男の前には、ティーグル公王領第二王子であるゲオルク=ツヴァイト・ティーグルがソファーに座っていた。


「申し訳ない、ペイウッドスベン卿……しかしっ!!奴隷制度も廃止を正令し、更にはティーグル、エーグル、エレファン、リオンの四カ国を統一した国の皇帝などと宣う、あの成り上がりの男!九頭竜八雲にこれ以上、オーヴェストを好きにさせる訳にはいかぬ!!!」


ドンッ!と目の前のテーブルに拳を叩きつけて持論を展開するゲオルク。


だが、目の前の初老の男ペイウッドスベンは微動だにせず、黙って彼の言い分を聞いていた……


「この上更にレオパール、ウルス、フォック、イロンデル、フォーコンの五カ国が成したオーヴェスト五大同盟とも繋がり、『オーヴェスト=シュヴァルツ連邦』などというふざけた国家まで立ち上げようなどと、あの成り上がり者が欲をかきよって!!!」


ゲオルクの八雲に対する憎悪は止まらない。


初めて会ったアークイラ城での謁見の一件から、八雲のことを気に入らないゲオルクにとって、ティーグルを支配下に置かれた上に可愛い妹までもが妻として娶られ、今や飛ぶ鳥を落とす勢いに乗っている八雲のすべてが気に入らなかった。


シュヴァルツ包囲網を提案したダニエーレ=エンリーチ侯爵も自らの欲望にその身を滅ぼし、ゲオルク自身もダニエーレの巻き添えになり、その罪を暴かれそうになったことで余計に八雲に対する恨みを募らせているのだ。


「国々が新たな発展を求めて協力し合うその姿は、非常に喜ばしいことでしょう?ゲオルク王子」


ペイウッドスベンの言葉に、ゲオルクは逆に冷静さを取り戻して、


「はっ!これはオーヴェストを裏で操っているとさえ言われるゴルテスト=ペイウッドスベン卿のお言葉とは思えませんな!」


軽く鼻を鳴らしながら目の前に佇むゴルテストを見て見苦しい笑みを浮かべていた。


その言葉を表情も変えずにジッとゲオルクを見つめながら聞いていたゴルテストの様子に、ゲオルクは背筋に悪寒が走るのを感じて笑みを引っ込めて至って冷静を装い、静まり返った。


すると、ゴルテストが重い口を開けてゲオルクに告げる。


「王子の想いは拝聴致しました……確かに我等にとってその世界が生きやすいかと言えば……得てしてそうではないでしょうな。我等の生きる場所は、それこそ冥府の袂に近い暗闇の世界。国を光で照らす者には我等のような影の存在を知らしめることも……また必要ではある」


その言葉を聞いて大人しくなっていたゲオルクに再び笑みが浮かぶ。


「オオッ!!―――流石はペイウッドスベン卿だ!貴方の御力をお借り出来るのであれば、このゲオルク、百万の軍を得たに等しいですぞっ!!」


ニヤニヤと醜い笑みを浮かべて力説するゲオルクにゴルテストが告げる。


「しかし事は巨大にして重大……考え無しに事を進めるのは愚の骨頂というもの。こちらでどう動くかは幾つか立案してあるので、それから選び慎重に、隠密に、静かに、事を運ぶことと致しましょう」


ゴルテストの言葉に満足したゲオルクは最後に握手を交わすと、ゲラゲラと笑い声を上げながら部屋から去って行く。


「……騒がしい男だったな。ゴルテスト」


ゲオルクが去った後に、隣の部屋の扉が開いたかと思うとそこから一人の女が姿を現す―――


「お耳汚しとなってしまいまして、申し訳ございません―――ルドナ様」


―――ゴルテストの前に現れた女は、かつて魔界門インフェルノ・ゲートを越えて、この世界にやってきた魔界の七十二柱アンドロマリウス伯爵の血統に連なるグラハムド=アンドロマリウスに喰われ、更にその魔神と一体化して自ら魔神と同化することで、その力を手に入れたレオパール魔導国元三導師のひとり―――ルドナ=クレイシアだった。


ダークエルフの時と同様、身体は褐色の肌ではあるものの、その全身には魔神グラハムドと同じ赤い入れ墨のような紋様が入っている。


ストレートの長い銀髪に赤い瞳、飛び出す勢いの大きな胸に引き締まった身体をした、この世界の新たな『魔神』―――


「別にかまわない。馬鹿な人間がどこまでも道化として踊っている様は滑稽で逆に笑えもしよう」


そう語りながらゴルテストの向かいのソファーに座り、深いスリットの入ったスカートから褐色の肌をした太腿を露わにしながら足を組むルドナに、ゴルテストは危険な魅力に引き込まれそうになる。


「恐縮でございます。その御力をお貸し頂けることで、我等の望みも実現へと捗ることとなりました」


「フフッ……そのような些末なことは気にするな。私はあの九頭竜八雲に礼をしなければならんのでな。こうして魔神の身体を手に入れられたのも、かの黒帝の力によってだったからな」


八雲に礼をすると言ったその顔は、決して言葉通りに捉えることが出来ない殺気と狂気が入り混じる喜々とした表情だ。


人の身で見てはならないと本能が訴えるほどの狂気に、ゴルテストはゴクリと息を飲む。


「それで……先ほどのゲオルク王子の件、如何致しましょうか?」


恐る恐る問い掛けるゴルテストに、ルドナは素の表情に戻ってから今度は普通に笑みを浮かべ、


「それについてはもう手を回してある。間もなく届くであろうよ……ヴァーミリオンに地獄の使者がな♪」


そう告げたルドナの言葉に、ゴルテストは―――


「遂に動かれますか。かの『鉄血の帝国』が……」


―――そう呟くように唱える。


「フフフッ……待っていろ、九頭竜八雲。精々今は楽しいひと時を女共と過ごしておくがいい」


闇が広がっていく窓の外を見つめながら、ルドナは不敵な笑みを浮かべるのだった―――






―――八雲のいるシュヴァルツ皇国から遠く離れた国


フロンテ大陸北部ノルドの超大国ヴァーミリオン皇国にある紅龍城―――


国の式典に重なり、八雲と同行出来なかった皇帝炎零イェンリン=ロッソ・ヴァーミリオンは、それでも努めて冷静を装ってはいるが、元々堪え性のないイェンリンにとって今の窮屈な生活は臨界点に近づいている。


皇帝位を三大公爵家のアイン家の三女火凜フォウリン=アイン・ヴァーミリオンに譲位することを決めてから、国の式典催事についてのことや、国家の中枢に関わる情報から国外のことまで、それこそ六百年統治してきたそのものを引き継ぐために、毎日のようにフォウリンに教えを説いている。


しかしそれも会いたいと思った時に八雲に会える環境であればこそ、イェンリンの心も穏やかに過ごせていたということを八雲が国元に戻ったことによってそれも叶わなくなり、どれほど自分が八雲に傾倒していたのかを痛感させられたのだった。


そして今日もまた、イェンリンは自分の執務室でフォウリンを相手に引き継ぐべきことを教えていた。


実際のところ、六百年もこの国を護り、支え、繁栄させてきたイェンリンの跡を継ぐなどという途方もない出来事は、普通の人間に務まるものではない。


八雲に『龍紋』を与えられ、その能力も寿命も分け与えられたフォウリンといえどもイェンリンから見れば、まだまだ赤子に等しいのだ。


(それでも泣き言ひとつ言わずに余の期待に応えようとしてくれている……本当に良い子だよ、お前は)


イェンリンと同じく教育係には紅の戦乙女クリムゾン・ヴァルキリー達も持ち回りでフォウリンに指導してくれている。


国の経済の在り方については『未来を司る者』スクルドが―――


―――戦争関連や戦術戦略については『勝利する者』ブリュンヒルデが。


生産業全般については『武器を轟かせる者』フロックが―――


―――そして国家の機密事項や他国の情勢については『先駆者』ヒルドが担当して教えている。


誰もがその筋のエキスパートたる彼女達に指導されて、フォウリン自身も充実感を得る毎日を送っていた。


だが、この日はそんないつもの日々とは、大きくかけ離れた日になる―――


執務室のドアをノックして入室をイェンリンが許可する。


「―――入ってよいぞ」


その声を聞いて部屋の中にやってきたのは、ヒルドだった。


「引継ぎ中にすまない」


言葉短く謝罪したヒルドを見て、イェンリンが眉を顰める。


「お前が態々自分で余の元にくるとは、何かあったのか?」


諜報部の責任者であるヒルドの来訪は決して良いことばかりではない。


むしろ悪い知らせの方が圧倒的に多いのだ。


その経験がイェンリンに嫌な予感を引き起こさせる。


「実は今し方、先触れが到着してインディゴ公国の女王の血筋に当たる公爵がふたり、この首都レッドに向かっているとの知らせが来た」


「インディゴからだと?」


―――インディゴ公国


ヴァーミリオン皇国の西側に隣接する国家であり、今はシュヴァルツ皇国となったリオン議会領とも隣接している国である。


リオンとも密に交易があり、海に面していることから海運業が盛んであり、海産物も名産となっていることはリオンと近しい国と言える。


遥か昔、イェンリンが隣国と戦争を行っていた頃に、当時の王が敵対する意志がないことを示し、同盟を締結することで互いに侵略行為を行わないことを誓った国でもある。


インディゴの王が代替わりしても堅くその同盟は守られており、イェンリンもまた戦わないと誓った国を攻め滅ぼすような真似はしなかった。


そのインディゴから突然の来訪者、しかも公爵がふたりやってくるというのは只事ではない。


「なんだ?生温い同盟に嫌気がさして、ついに余に戦争を仕掛ける気にでもなったのか?」


ニヤリと笑いながらヒルドにそう告げるイェンリンだが、


「いや、それはないだろう。しかし、何の用で来るのかまでは先触れにも知らせられていなかった」


「ほう……益々もって、きな臭い話だな」


通例であれば訪れる国に対して訪問の理由を伝えるのが礼儀である。


しかし、その訪問の内容を知らせないということはそれだけ機密性の高い話だと相場が決まっていた。


「いいだろう!古き友の血脈を継ぐ者に会ってみようではないか」


イェンリンは即決で返答し、ヒルドも黙ってその言葉に頷く。


「フォウリン!お前も良い機会だ。他国の王族というものに触れておくのもいい学びとなる」


「畏まりました。剣帝母様」


執務室にいたフォウリンにも同席を命じたイェンリンは、その多くの経験から嫌な澱みを胸に感じずにはいられなかった―――


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?