―――インディゴ公国の公爵バサラ=クロイツの親書を見た八雲
そこに書かれていたのは―――
『富士山』
―――と漢字で書かれた日本語だった。
「これは……」
イェンリンが八雲のその驚いた顔を覗き込み、
「どうした?これは一体何なのだ?雪菜とユリエルも、これが何なのか分かるのか?」
同じく驚愕して固まっている雪菜とユリエルにも問い掛ける。
「……これは、俺がいた世界、つまりここに来る前の世界の俺達の国の文字だ」
「なんだと?バサラの寄こした親書に、それが書かれていたということは……」
「俺達と同じ別の世界から来た人間か、もしくは別世界から来た人間に教えてもらったのか……どちらにしても、この文字は俺達がいた国特有の言葉だから、よっぽど俺がその国から来たと確証が持てないと、こんな親書出せないだろうな」
「ふむ……これは、なかなか面白そうなことになりそうだな」
「いや、戦争始まるって話しなのに、面白そうはないだろう……」
イェンリンの悪い癖が出そうになっているところで、八雲が顔を顰めて返す。
「でも……本当に転生者なのかな?」
雪菜が不安気な顔で八雲に問い掛ける。
「そのバサラとかいう公爵は俺や雪菜に似たような髪の色とかしてるのか?」
直接会ったイェンリンに問い掛けると、イェンリンは首を横に振って答える。
「いや、顔立ちはフロンテ大陸の人間と思える顔立ちだったな。少なくともアンゴロ大陸の人間の様には見えなかった」
「だったら俺や雪菜みたいな転移者じゃなくて、ユリエルみたいな転生者の可能性が高いな」
「そもそも公爵家に生まれているのだから、他所の世界から来た転移者という線はないだろう」
「あっ、それもそうだったな。それじゃあ、明日の調印式を終えて準備したらヴァーミリオンに戻ろう」
「分かった。では……今晩の伽は勿論、我等ヴァーミリオン勢が八雲の相手をしても、文句はないだろう?」
妖艶な笑みに変わったイェンリンがペロッと自らの唇を舐める姿が、エロさを醸し出して八雲の欲望をくすぐってくる。
「ヴァーミリオンの者達は暫く八雲の傍にいられなかったからな。よかろう、今夜は好きに楽しむといい」
正妻のノワールからも許可を得たことで、イェンリンのみならずフォウリンにブリュンヒルデ、ラーズグリーズにアルヴィト、レギンレイヴも喜びの表情を浮かべてウットリと八雲に視線を送ってくる。
「あの……明日、調印式なんだけど?」
「―――嫌なのか?」
「―――お嫌なのですか?」
「―――嫌だと言うのか?」
「―――貴方はそんなこと言いませんよね?」
「―――八雲様……」
「―――嫌なんてないですよね?」
六人に順番に問い掛けられる八雲の答えは決まっている。
「嫌な訳ない。むしろ望むところ!」
その答えに六人も満足して、今日の夜を迎える―――
―――夕食を終えて、皆が休む時間に差し掛かった頃、
八雲の自室に集まる美女六人―――
「ふふっ♪ さあ、覚悟はいいか?八雲♡/////」
そう言い放ったイェンリンの瞳は、どこか獲物を見つけた獣のように興奮した空気を漂わせている。
そんな六人は八雲の部屋で既に下着姿になっていて、早くも八雲の寝室は女の甘い香りで充満していた。
「怖いなぁ♪ でも……俺も本気出していくけどな」
そう言い放つと八雲も自らの服を脱ぐ。
六人の前に晒された立派な逸物はそそり立っていた。
久しぶりに見る八雲の剛直に吸い込まれるようにして視線が釘付けになる六人。
「さあ―――ベッドに行こうか」
八雲の誘いに全員が一歩前に足を踏み出し、ベッドへと向かった―――
―――そこからは、
八雲がこれほどの美女を前にしてここで止まる訳もない―――
『絶倫』は常に発動を続け、美女達を魅了する『神の手』も全身に発動していため八雲に触れたり、触れられたりしただけで電撃のような快感が身体を走り抜ける。
空が白むまで響き続ける獣のような女の喘ぎ声が、ようやく止まったのは朝陽が顔を出す寸前だった―――
―――朝陽が八雲の部屋を照らして、明るくなった頃
八雲の巨大なベッドの上にはビクビクと痙攣しながら幸せそうな顔をキメたイェンリン達が意識を失っていた……
そんな淫靡な惨状の中にジュディとジェナが朝の目覚ましに八雲の部屋を訪れて、その状況に一瞬驚きはしたものの慣れとは怖いもので、すぐに八雲に朝のご奉仕をふたりで始める。
そんな八雲への奉仕に夢中になっている天狼姉妹に―――
「―――なるほど♪ そうして毎朝、八雲から搾り取っているのか♪」
―――と、誰かが声を掛ける。
「ッ!?―――イェンリン様!?お目覚めだったのですか?」
「ああ、八雲に散々されて、意識を失っていても流石に誰かが部屋に入ってくれば気配で起きる。昔からよく狙われたのでな。癖になっているのだ」
「お休みを妨げてしまって、申し訳―――」
「ああっ、いやいや、お前達が悪い訳ではない。そうだな……では、余にも朝の奉仕とやらをしてくれないか?ジュディ/////」
そう言ったイェンリンはジュディに向かって自らの股を開き、先ほどまで八雲に可愛がられていた裸体を晒す。
その淫らな光景にジュディの胸がキュンと高鳴った。
「嫌なら別に無理にとは言わぬが―――」
「―――いえ!嫌だなんてことありません。それでは、失礼します/////」
そう宣言してイェンリンの脚の間に顔を近づけると、可愛い舌を伸ばして丁寧に舐め上げるジュディにブルリと身体を震わせた。
「んっ♡ ああっ♡ なかなか、いいものだな、これも♡ あっ、そこっ♡! そうっ♡! もっと、強く吸って♡/////」
背中を弓なりにしながら歓喜の吐息を吐くイェンリンの様子に、ジュディも嬉しくなってきてノワール仕込みの舌使いを披露していく。
しかしその時、イェンリンの胸に衝撃が走った―――
「あうぅうううんっ♡♡♡!!!―――や、やくもっ!もう、起きたのか♡ あんっ♡ こらっ♡ そこはっ♡/////」
―――隣で眠っていたはずの八雲が、いつの間にか目を覚まして、隣から手を伸ばしてイェンリンの胸の突起を転がしていたのだ。
「目を覚ましたら、随分とエロいことしてるじゃないか。まだしたりないのか?」
そう問い掛けながらも、八雲自身に開発されたそれを弄ばれて今にも絶頂の域に達しようとしているイェンリンは、途端に全身がブルブルと震えだしていく。
しかし、八雲も朝からジェナのご奉仕を続けられていて、早くも朝一番搾りの特濃の欲望を噴き出したい感覚に襲われる。
「イェンリン!!」
「ああっ♡♡ ウンン♡♡ 一緒に♡ ああっ♡! あああっ♡♡!! アァアアアッ♡♡♡!!!/////」
―――ジェナに欲望を解き放つ八雲。
そして、痙攣しながら絶頂を迎えるイェンリン―――
快感に微睡みながら見つめ合い、朝から最高の絶頂を迎えた八雲とイェンリンは、そのままどちらともなく引き寄せられて唇を重ねる……
それからジュディとジェナと一緒に汚れを落とすため、風呂に入りながらふたりも抱いてから八雲は身なりを整えた。
今日は八雲が正式にオーヴェスト=シュヴァルツ連邦の盟主となる宣言と、各国との調印式を行う当日だ。
―――新たな時代に突入したオーヴェストに、その周囲で不穏な動きをする者達。
そんな未来を八雲は知る由もなかった―――
―――調印式当日
この日、フロンテ大陸西部オーヴェストにおける九つの国が一堂に会して、『オーヴェスト=シュヴァルツ連邦』に加盟する調印式が執り行われる日となった―――
―――既にティーグル、エーグル、エレファン、リオンの四カ国が結ばれたシュヴァルツ皇国と、
その周辺国であるレオパール魔導国、ウルス共和国、フォック聖法国、イロンデル公国、フォーコン王国の五カ国が本日『オーヴェスト五大同盟』を締結し、最終的にシュヴァルツ皇国とオーヴェスト五大同盟が連邦締結を行うことでオーヴェストの歴史上最大の連邦国家が誕生するのだ―――
ティーグル以外の各国の代表者達は、八雲が敷いたトレーラー馬車の処女運転に合わせて各国から既に出発し、この歴史的な日に到着する手筈となっている。
エーグル公王領からは―――
「これが八雲様のお造りになったトレーラー馬車という乗り物なのですね♪ ですが、些か豪華すぎではありませんか?」
公王であり女皇帝であるフレデリカ=シン・エーグルは、宮殿の様に豪華な造りをした内装に驚いていた。
「陛下、此方の車両は王族が移動に利用する際の特別な車両だと、黒帝陛下よりお伺いしております。民が利用する際の車両は椅子が並ぶ乗り合い馬車の様な内装です」
フレデリカにそう説明するのは、エーグル騎士団団長のキグニス=オスロ―である。
「まあっ!そうなのですか!?では、この車両は八雲様がわたくしのために……」
「はい。この馬車は黒神龍様の鱗で造られた素材で覆われており、物理攻撃も魔法攻撃もすべて弾き返してくれます。勿論、民達が利用する際の車両も同様に外敵から護られるそうです。本当に驚きを隠せませんな」
「ふふっ♪ キグニス卿はいつも落ち着いていらっしゃいますから、逆に驚いた顔を見てみたいと思っておりましたわ」
「いやいや、わたくしの想像など及びもしない物が飛び出すような時代、黒帝陛下の時代となって、驚かない日はございませんよ。さあ、間もなく到着の時間です」
「ええ♪ 分かりましたわ」
―――笑顔で会話を終えたフレデリカは八雲の用意した王族専用の貴賓車両を満喫してティーグルに到着する。
エレファン公王領からは―――
公王にして獣王であるエミリオ=天獅・ライオネルが、先代王である父レオン=天獅・ライオネルと共に八雲の用意した貴賓車両で優雅な旅を満喫してティーグルに到着しようとしていた。
「父上、ティーグルに入りました。間もなく首都アードラーに到着致します」
「うむ。知らせではこの度、アマリアも黒帝陛下に同行してティーグルに来ているそうだ。知らせでは元気にしていると伝えてくれたが……」
アマリアの事となるとついつい心配症になるレオンもまた、末娘を可愛がるひとりの父親だという一面を見せる。
その様子にエミリオは、やれやれといった呆れ顔をしつつ、
「父上……アマリアも、もう子供ではありません。いい加減に子離れなされては如何ですか?」
「なにっ!?……いや、儂は別にそのようなつもりでは……」
エミリオの指摘についつい頭を掻いて誤魔化すレオン。
「黒帝陛下にお傍に置いて頂いている以上、既に大人となっていてもおかしくありません」
「な、なにいぃ!?―――そ、そう……かもしれんな……うむ……」
生々しいエミリオの指摘に気まずい顔をして落ち込むレオン。
「ふたりでアマリアの成長を見守って参りましょう」
「そう言って、お前もそろそろ嫁を娶らねばなるまい!いい加減に身を固めよ!」
「これは藪蛇でしたか……」
今度はエミリオが渋い顔を見せながら、車両は首都アードラーへと進んで行った―――