療養を終えたアーロさまは、王国へと戻ることになりました。
もちろん私が背中に乗せて送っていきます。
途中で空の散歩を楽しんだり、湖面を叩いて水飛沫を上げたりと軽くデートを楽しみました。
お目付け役のアガマが一緒でしたから、2人きりというわけにはいきませんでしたけどね。
名残惜しかったですが、王国の側でアーロさまを下ろしました。
「今度はお手紙をくださいね、アーロさま」
「分かりました。セラフィーナさまからのお手紙も待っています」
私とアーロさまが見つめ合っていると、アガマがわざとらしく咳をしました。
「ゴホンッ。アーロさま、くれぐれも体調には気を付けてください。少しでもおかしいと思ったら、遠慮なく連絡を」
「はい、分かってます」
嫌味っぽいアガマに向かって、アーロさまはニコッと笑顔を向けました。
本当にアーロさまは性格がいいですね。
惚れ直してしまいます。
「では、そろそろ戻りましょう、お嬢さま」
「ん、わかったわ」
名残惜しいですが、いつまでもここに居るわけにもいきません。
いつかずっと一緒にいられる日を夢見て、しばしのお別れです。
私は綺麗に見えるカーテシーを決めてから手を振って、シュルリと人化を解きます。
背中にアガマを乗せて空に飛びあがれば、アーロさまの手を振る姿。
私は何度も、何度も後ろを振り返り、小さくなっていくアーロさまの姿を名残惜しく眺めたのでした。
それから私とアーロさまは、文通により順調に交流を進めていきました。
お父さまは夜ごと帝国に飛んでいってお母さまの卵を探し、ついに発見することに成功しました。
「後は孵化する日を逃さずに側へ行くだけだ」
お父さまはニコニコしています。
私もアーロさまからの手紙を抱いてニコニコです。
モゼルもニコニコしてますし、アガマもお父さまを眺めてはニコニコしています。
屋敷のなかは一気にご機嫌なムードに包まれました。
とても平和です。
なので私は、お父さまに提案をしてみました。
「せっかくですから王国へ行ってみませんか?」
「なんだい? わたしに見せたいものでもあるのかい?」
お父さまはクスクス笑っています。
「そうですね。色々ありましたから見せたいものもありますけれど。私はまだ、アーロさまのご家族にお会いしたことがありませんからね。ご挨拶に行きたいのです」
「そうか。それなら、わたしも一緒に行くべきかな」
話は決まりました。
私はウキウキした気持ちでアーロさまへ手紙を書いて、頭が2つある鷲へ託しました。
そしてトントン拍子に話はまとまり、私は王国へ訪問することになりました。