アーロさまがちょっと涙ぐんだりしている感動のシーンだというのに、私はお父さまとアガマを睨んでやりました。
2人ともちょっときまり悪そうに笑っています。
私がいくら118歳のピチピチのドラゴンだったとしても、正しい知識は大切ですよ、2人ともっ。
などと思っていると、どこかから男性の低く潰れた耳障りな声が響いてきました。
「ドラゴンだ! ドラゴンが生まれたぞっ!」
「しかも増えてるぞっ! 四頭、いや五頭か⁉」
いえ、アーロさまとアガマはドラゴンではありません。
それ以前に、せっかくの感動の再会が台無しです。
「なんだお前たちはっ⁉」
アーロさまが大きな声を出して威嚇しています。
それにココは崖の中腹なのに、人間はどうやってここまできたのでしょうか?
鳥に乗って? それとも魔獣でしょうか。まさか聖獣ということはないはずですが、人間は自力では飛べません。
「あれは
アガマが冷静に伝えてきます。
人間たちは鳥のような形をした
暗い色を使っているようで、はっきりとは見えませんが、
「我らは帝国軍だ! ドラゴンを捕らえにきた!」
私たちは
アガマが無駄口を叩くこともなく冷静だということは、今のこの状況、かなり危険ということです。
お父さまも、お母さまも、回りを素早く見回して状況を把握しようとしています。
アーロさまは聖剣を構えました。
「私は将軍だっ! 大人しく投降すれば傷つけはしない!」
帝国の将軍が叫んでいます。
お母さまの表情に、ピキッと音がしそうなほどの苛立ちが浮かびました。
「投降? 我はドラゴンだぞ⁉ なぜ人間ごときに投降せねばならんのだ!」
「ここは帝国軍の領土だ。大人しく従ってもらおう」
お母さまの怒号にも、帝国軍が怯む様子はありません。
お母さまは人化したまま口を開いて火を放ちました。
かなりの火力です。
炎は玉となって帝国軍を襲いましたが、当たることなくカンッと音がしそうなほど軌道を逸らし、どこかへ飛んでいってしまいました。
防護の魔法もかかっているようです。
お母さまの攻撃を受けた帝国軍は、怯むどころか目を爛々と輝かせています。
「素晴らしいっ! なんという力だっ!」
将軍が興奮して嬉々としながら叫んでいます。
周囲に富んでいる
「捕まえろっ! 奴らを捕らえろっ! ドラゴンは何頭いても邪魔にならん。生死は問わない! 捕まえろ!」
将軍の叫び共に、赤い閃光が次から次へと襲ってきました。
「これも
防御の魔法で攻撃をはじき返しながらアガマが言いました。
アガマの解説は正確です。
パンパンと打ってくる赤い閃光は、山の岩肌を削っていきます。
バラバラと落ちてくる岩を避けながら、どうするか私たちはしばし考えます。
お母さまは目覚めたばかりですし、私たちは足場の悪い崖の上。
これってピンチですか?
ピンチですよね。
人化を解いて逃げるという手もありますが、相手も空を飛ぶ
下手に屋敷へと逃げ帰るのも危険かもしれません。
帝国はしつこくて、ゴキブリ並みに嫌われています。
国ごと潰してしまっても文句を言う者は少ないでしょうけれど、なんとか円満に済ませたいです。
私は平和主義なので!