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「サント王国兵士団」2

 「あの方は、私たちをまとめている兵士団団長です。戦闘力の高さは王国内でトップクラスです。あの方がいればきっとエーレに勝てるでしょう」


 クィンはまだ去ろうとはせず、俺にさっきの兵士のことを教えてくれる。


 「あんたは、何で俺らがクエストで来たと思ったんだ?自分が言うのもなんだが、冒険者の服装からして、Gランクの討伐に来た奴とは思えないんじゃないのか?」

 「それは、この村で魔物やモンストールによる被害が全く無いから、冒険者の身なりをした人がいることはまずないんです。だから、あなた方が今回の討伐対象のクエストを受けて来たのでは、と思ったのです」

 「ふーん、そっか。引き止めて悪い。討伐頑張って」

 「...お互いに、ですよね?」


 クィンがくすっと笑ったその時、


 「お前は…!!」


 と男の驚きが混じった声が聞こえてくる。声がした方へ顔を向けると…


 「げ……っ」


 昨日程か、地上へ出たばかりの草原にて絡まれたあの時の兵士たちの一人…リーダー格の男兵士が俺を凝視していた。


 「まさか、この村に滞在していたとは…!」

 「…?デロイさん、この方がどうかされたのですか」


 クィンがデロイとかいう兵士に疑問の声をかける。アレンも隣で「?」といった反応を示している。


 「この男こそが、正体不明の人族です…クィン兵士副団長」

 「え…彼が!?」


 あ、クィンって副団長なんだ…ってそれどころじゃないな。


 「…改めて問う。お前は何者だ?場合によってはすぐに拘束することになる」

 「あー……駆け出しの冒険者の、オウガです。これじゃダメか?」

 「昨日は自分が冒険者だとは名乗らなかったが?それはどうしてだ?」

 「それは……昨日までどうも記憶喪失だったみたいで、テメーらから逃げたしばらく後に自分のこと思い出したんだ。」


 嘘である。


 「ふざけているのか…?やはり怪しいなお前。今ここで拘束しておいた方が良いだろうな」


 当然こんな嘘が通じるわけもなく、デロイは怒った様子で手から魔力を発生させる。

 アレンがデロイを睨んで戦闘態勢を取る。


 「ま、待って下さいデロイさん!彼は…オウガさんは別に逃げようとはしていないそうですし。手荒なことはやめましょう?」


 逃げないですよね?と、確認するように俺を見る。


 「まあ、そっちが攻撃とかしないなら、今はここから去る気はねーな。今はエーレ討伐の任務中だろ?それが終わってからテメーらのところに来るからさ、捕まえようなんてこと、しないで欲しいな」

 「……クィン副団長のお情けに免じて、ここでは拘束はしないでおく。我々の任務が終わった後、必ずこちらに来ると約束しろよ?」

 「ああ」


 面倒事になりそうだったらアレン連れて逃げるけどな!

 デロイは俺たちから立ち去って行った。


 「……まさかあなたが報告に上がっていた正体不明の人族だったとは。デロイさんの言う通り、あなたのことについて後ほど詳しく教えてもらいますよ、オウガさん」


 クィンも俺に忠告して、去って行った。


 「……正体不明の人族」


 アレンがその肩書(?)を呟いて、可笑しそうに笑った。


 「コウガ、追われてる身だったの?」

 「まあ…途中面倒になって逃げたせいかもな」

 「そうなんだ……それよりもいいの?あの人たちに討伐をやらせて」


 兵士団に討伐をさせて良いのかとアレンは尋ねる。


 「あいつらが倒したところで、報酬が減ることがないし、楽できていいんじゃないか?それに、サント王国の兵力を知るいい機会だしな」


 と答えて、宿に入ってのんびりすることにする。とりあえずは面倒事にならずに済んでよかった。



 30分後、遠くから生物とは思えない甲高い鳴き声が響いてきた。不審に思い、「気配感知」を発動すると、数キロ先からスゴい速さで村に近づく生物が引っかかった。


 「コウガ。来るよ、ここに...」


 アレンも感知したようだ。間違いない。エーレが釣れたみたいだ。彼女に頷き、声のする方へ顔を向ける。

 さぁ、初クエストだ!


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