「ところでコウガさん……あなたの体の秘密について教えてくれると、約束しましたよね?今教えてくれませんか?」
「何かやらしい表現だな、体の秘密って」
「どこがですか!?はぐらかそうとしないで下さい!」
「冗談だ、空気を緩和させる為のな」
「と、とにかく……あなたはいったい何者なのですか?」
先程まで俺の行動について改善を求めてきたクィンだったが、今度は俺の体の謎について、という話題に変えてきた。
クィンは俺のやり方・在り方に対してまだ納得がいっていない様子だが、そのことについてはもう蒸し返さなかった。説得はまだ諦めていないようだが。
その代わりに、帰還途中でいつの間にか再生していた腕について説明するという約束の方に話を切り替えてきた。そういえば帰ったら話すって適当に返事してたっけ。
「そうだなぁ………」
「コウガさん?」
これって、どこまで話して良いのか……迷うな。クィンに話すってことは、サント王国の国王や上層部にも俺のことが色々知られるってことになるんだよなきっと。
果たしてありのまま全て話して良いのか…。
「もしかして…私に話すことでサント王国に、世界中にコウガさんの秘密が知られてしまうことを恐れているのですか?」
「よく分かったな。うんその通りだ。やっぱり報告するよな?」
クィンは少し思案してから、いいえと否定する。
「約束します。今は……コウガさんたちの旅に同行している間は、コウガさんが話してくれることは国王様には報告しません。コウガさんがそれがお望みでしたら安易に世間にあなたの秘密が漏れることはさせません」
「ふーん?そう言ってくれるのなら………分かった。話すよ、俺の体の謎ってやつを」
「ありがとうございます…!」
旅の間ってのは少し引っかかる。旅が終わってクィンがサント王国に帰った時には、国王に同行中のこと全てを報告するってことだろうか。
「だったら…さっきのいざこざのことはもう報告してたりするのか?」
「それは………するべきことなんだと思いますが…。これから話してくれるのであれば、特別に今日の一件については報告を伏せておくことにしようと思ってます」
「じゃあ話すわ。テメーとこの王国に色々悪印象を持たせるのは得じゃないかもだし。
つーか気になったんだけど...」
話している途中で、そもそもの疑問を聞くのを忘れていたことを思い出したので問うてみる。
「何でそんなに俺のことを知りたがろうとするんだ?」
「へ…?」
「いや、帰り途中の時もそうだったけど、どこか必死に俺のこと知ろうとしてるようだからさ」
単純な好奇心なのか何なのか、俺には分からないことだ。
「………アレンさんは、コウガさんが何者なのか知っているのですよね?」
クィンの問いにアレンはこくりと頷く。アレンには洞窟で俺の今までの境遇を全て話している。
そういや何であの時アレンに話したんだろう?ま、いっか。
「私だけ…コウガさんのこと何も知らないというのが、嫌だと思ったからです。ただそれだけ…。な、納得出来たでしょうか…?」
「うーん?ま、とりあえずはそういう理由で納得するか。仲間はずれが嫌ってことだな、は」
「えーと、それだけではないのですが……まあそうです」
「?」
アレンはクィンの反応を不思議そうに見ているが、俺には大体理解できた。特に裏があるってわけじゃないようだし、気兼ね無く話すことにしよう。
おほんとわざと咳払いして真剣な話をする空気をつくる。クィンも真剣な態度をとって俺の方を見る。
「まず最初に教えることだが、俺は一度死んでいる」
「死んで…………え?」
早々にクィンが予想外のことを聞かされたって反応をする。気持ちは分かるがここは続けさせてもらう。
「死んで、その後原因は分からねーけど俺はゾンビっていう動死体として復活した。しかもこのように意思があって話すことも出来る状態でだ」
クィンはしばし黙ったまま俺の姿を凝視する。死んでいることが信じられないといった様子だ。
「本当に死んで……。確かに目や肌が普通の人族と違っている。
っ!だからコウガさんからは何のオーラも、生気さえも感じ取れなかったのですね」
「まあな。この体はいくら損傷しようが、バラバラにされようが、燃やされようが、しばらくすれば元の状態に戻ることが出来る。戦いで失った腕が再生したのもそういうわけだ」
細胞残らず消されたら果たして再生出来るのか?そういった細かなことはまだ分からない。実験はしたくねーけど。
それからゾンビや俺の今の職業についても軽く教えた。