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「次の旅の方針」

 勝負の舞台となった大草原からサラマンドラ王国へ戻った。

 国に戻ると竜人たちが何やら騒いでいた。どうやら俺とエルザレスの戦いで生じた力の余波がここまで伝わったらしい。突風やら地震が発生して何事かと騒いでいた。

 屋敷まで移動する間、カブリアスが竜人たちに突風や地震の原因が俺たちだってことを説明して回った。

 その際今度は、俺たちとカブリアスたちの集団を見てさらに騒がれた。理由はエルザレスが意識を失って伸びているからだ。

 誰が彼を!?という質問がくる度にカブリアスは俺を指して存在を知らしめた。


 「この人族がエルザレスさんを!?」

 「おいおいマジで言ってるのかカブリアスさん!?あんたがとうとう下剋上果たしたんじゃないのか!?」

 「人族が竜人族の長に勝てるはずがない!冗談なんだろ!?」


 竜人たちは俺を見ては口々に何か言ってカブリアスの言葉を疑った。

 鬱陶しさから溜息をついていると、ドリュウや他の序列持ち戦士たちがカブリアスの言葉が真実であると国中に言い広めた。彼らはこの国では発言力が大きい為、竜人どもはようやくエルザレスが俺に負けてしまったと理解したようだ。


 「納得してないようだから、今度あいつらの前で力少し見せてやろうか?相手はカブリアスで」

 「無茶言うな。親父を完全に負かしたお前と戦うなど、今は御免だ。だが……」


 カブリアスは俺を見て、その目に微かな闘志を見せた。


 「いずれはこの国の長になろうとしている俺が今よりさらに強くなる為にも、お前とはいずれ勝負しなくてはならない。その時は今日の親父の……いやそれ以上の本気の勝負をさせてもらうぞ、カイダコウガ」

 「まぁ、いいぞ別に。俺も今日は楽しめた。エルザレス程に強い奴とはあまり戦えないものだったから」


 モンストールや魔物以外でSランクの強さを持つ人族や魔族なんて、この世界にはどれくらいいるのだろう。別に戦うことが好きってわけじゃないけど、この世界にいる間は戦う以外に楽しめることが現代世界と比べて圧倒的に少ない以上、やっぱり戦うことが退屈しのぐ手段の筆頭候補になるんだよなー。

 あーあ、マジで早く元の世界へ帰りたい。



 エルザレスの屋敷に戻って、カブリアスがエルザレスを介抱するとのことで彼らとはいったん別れる。


 「竜人族の長に勝っちゃうなんて、アレンの仲間は凄いね。しかもまだ私たちと同じくらいに若いのに」


 勝負の結果を聞いた鬼族たちもとても驚いていた。ガーデルが凄い凄いと俺の背を叩いて何故かはしゃいで、ギルスは俺を憧れの目で見て兄貴と慕ってきた。


 「ねえカイダ君、あなた鬼族にならない?魔法か何かで頭に角を生やせば………うん、立派な鬼に見えるよきっと。あなたみたいな強い人が仲間になってくれればより強い鬼族がつくれるわ。アレンもあなたを凄く気に入ってるようだし」


 センに至っては意味不明なことを言って俺を鬼族へ入るよう勧誘をしてくる。


 「角生えたからって鬼になれるのかよ…。つーか俺は死体だから、その……子作りは出来ねーんじゃねーか?知らんけど」

 「そんなの、気合いで何とかすればいいんだよ!里を復興させたらまずはアレンとラブラブ子作りだ!!」

 「が、ガーデルさん!女の子がそんなことを言ってはダメですよ!?」

 「…?なんでダメなの?鬼族は私たちくらいの年になると結婚するのが当たり前なんだよ?」

 「な…っ!?」

 「子作り………結婚………コウガと……………ふふ」


 さらに意味不明なことを言ってくるガーデル、それをたしなめようとするクィン。そんな女子たちの様子に俺は苦笑いするしかなかった。


 それから半日経って夜になると、エルザレスが顔を見せにやってきた。


 「もう歩いて大丈夫なのか?骨を何本か折ったと思うんだが。アバラとか色々」

 「抜かせ。竜人族は魔族の中でも特に体がタフに出来てるんだ。骨折程度なら半日もすれば戦いは無理でも普通に動くくらいは出来る」


 竜人族の頑丈さ自慢をするエルザレスは、俺に勝負で負けたことを気にしていない様子だ。いや内心では悔しがっていて顔には出していないだけかもしれない。


 「国中の竜人たちはあんたが俺に負けたことをもう知ってしまってるんだが、そこのところ大丈夫なのか?族長の威厳とか。今更だけど」

 「………まあ動揺はさせてしまっただろうな。まあそれでもあいつらなら大丈夫だろう。世界には俺を凌ぐ強者がまだいる。それがお前だったってだけの話だ。それにお前はこの国の侵略者ってわけでもないしな。敵ではない奴に負けたところで別に気にするまい」

 「………そういうものなのか」


 竜人族の価値観というより、エルザレスがあっけらかんとし過ぎているだけなのかもしれない。隣にいるカブリアスがはあ…と溜息ついてるしな。



 「さて………アレンだったな?お前が捜していた仲間たちとこうして再会できたわけだが、お前たちはこれからどうするつもりだ?この五人を連れて旅をするのか、この国に滞在するのか」

 「ああ、そのことなんだけど……」

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