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「元クラスメイトたちとの再会」

 「うっわ、ダメだこりゃ」


 ドラグニア王国に着いた直後、空を飛んで俯瞰ふかんするように戦場を眺めてあいつらの様子を見てみたのだが……。


 「いやー酷い、酷過ぎる。もう一回言おう、酷い」


 本当に酷いとしか言えなかった。実際そうだもんな。あいつら本当に異世界召喚の恩恵をもらったチート集団?何アレ、クソ雑魚じゃん。

 ここからだとしっかり「鑑定」できないからステータスは分からないけど、Gランクの群れを相手にここまで追い詰められているからどうせ雑魚なんだろうな。


 「コウガさん、戦況はどうでしたか?」


 地面に着くと一緒にここへ来たクィンが心配した顔で尋ねる。彼女にもここからでも王国に異常が起きていることが視認出来ている。門を通過した時点でクィンは焦燥に駆られていた。


 「クィンが懸念している通りだった。劣勢だ。今すぐ全滅する気配はねーけど、このままだと軍が敗ける確率は高い」

 「そうでしたか…。加勢しに行かなければ…!」


 俺の返事を聞いたクィンはさらに急こうとするので、落ち着けと待ったをかける。


 「助けに行きたいという熱意は伝わったがクィン、お前はこの戦いにどう介入する気なんだ?」

 「え……?」

 「敵はまだ二十数ってところだ。しかも全員近くにいる状態でいる。戦場に行けばあいつらから一斉に敵意を向けられることになる。つまり二十数体のモンストールどもと同時に戦わなければならない。お前はこれをどう攻略する?」

 「それ、は…………」


 クィンは急に勢いを失くしてしまう。彼女とて無謀に突っ込んでは今回の敵には勝てないと分かっている。今回の敵の布陣はクィンにとっては………というか普通の戦士たちにとってはかなり難しいものとなっている。何せGランクがあんなにたくさん、しかも同じ場所に位置しているのだからな。肝心のドラグニア軍は瓦解しかかっているし、状況は人族側にとってはマズい。

 しかし、俺にとっては何の障害にもならない。あんな雑魚どもが何体いようが関係無い。


 「というわけでここは俺一人で行く。クィンは後からゆっくりついて行けばいいから」

 「何がというわけなのか分かりませんが……それは結局コウガさんに全て任せてしまうことになりませんか…?」

 「他に方法は無いだろ?分担して…ってレベルじゃないだろ、クィンにとって。それにクィン……まだ万全じゃねーだろ?」


 俺の「鑑定」は誤魔化せない。俺の目にはクィンの体力の数値が満タンではないことがバッチリ映し出されている。


 「見抜かれてましたか………悔しいですがコウガさんの言う通りにするしかないですね」

 「そう気にするな。昨日みたいにモンストールの止めだけ刺す係をやらせてあげるからさ」

 「それも……憚れます。私は……負傷した人たちをなるべく救済することにします」

 「ふーん。じゃあ全部、俺がぶっ殺していくからな。じゃあ、戦場へ行くか」


 クィンを少し距離を置いた状態のまま後ろに連れて王国の中心地へ進む。

 やがてモンストールどもと………半月以上ぶりに見るなぁ。


 元クラスメイト、3年7組の連中だ……。あとついでに兵士団も。

 視力を上げて見てるからよく見える、よく分かる。あそこにいる連中はほぼ全員俺を……学校ではハブり、この世界では蔑んだり虐げたりして………嗤って見捨てたんだ。

 そんなあいつらは今、Gランクモンストールの群れを相手に大苦戦していて、このままでは敗北して全滅してしまいそうな状況にまで追い込まれている。

 しかも醜いことに、互いに互いの足を引っ張り合って互いに文句を言い合うという、敵を前にして仲間割れを始めている様ときている。どいつもこいつも冷静さなど皆無で、クラスメイト同士で口汚く罵り合って、連携が取れずにロクな攻撃しか出来ていない。

 あれではまだ兵士団の方がマシだ。まあその兵士どももあんな醜い連中を庇って前に出て、倒されていってるが。

 それにしても何だよ、あいつらのステータス。平均レベルが30ちょい。異世界召喚の恩恵がある分レベルの割には能力値が普通の人族と比べて高いがそれでもいちばん高いやつで2000がやっとで他は1000ギリギリかそれ以下ばかり。固有技能もパッとしない。魔法レベルが6すらいってない…………………カスじゃん。

 想像をはるかに下回った、クソ雑魚じゃんこいつら。は?それで対モンストールの組織、人族の希望「救世団」って名乗ってるの?冗談だろ?

 俺が地底で化け物どもを喰い漁って地上を目指して必死に這い上がろうとしていた間、こいつらはロクな鍛錬や実戦しか積まなかったんだな。それが今よーく分かった。そりゃGランクの群れにも勝てねーわ。


 ゆっくり歩きながらあいつらの分析が終わったところで、クィンの方へ振り返って「じゃあ戦ってくる」と言って彼女をここで待たせておく。

 そして歩みを少し速めてあいつらのところへ向かった。




                *


 「はぁ、はぁ、はぁ………ヤバい。体力がだいぶ削られた。何で全く倒せてねーんだよ!?」

 「俺も魔力が少なくなってきた、魔法はあまり撃てない……っ」

 「ぐ……クソ!こんだけ攻めてんのに何で敵の数が減ってねーんだ!?俺はヘトヘトになるまで頑張ってんのによ!お前らサボってんじゃねーのか!?前に出ろよ!!」

 「ふざけんな!俺だってモンストールと対面して撃ち合ってたんだぞ!サボってるってんならコイツがそうなんじゃねーのか!?」

 「はあ!?意味分かんないんだけど?あたしだってちゃんと戦ってますー!てゆーかあたしも魔力全然無いんだけど!なんなのあのモンストール、強過ぎよ!異世界召喚されたあたしらは凄く強いはずなんでしょ!?」

 「そうだよ……っ!なんで俺たちこんなに苦戦してるんだよ!?こんな奴らが相手だろうと、勝てるはずだろ……っ」


 連携が崩れて味方も大勢失ったクラスメイトたちは、モンストールたちに抗いながらも互いを責めて足を引っ張り合っている。当然時間が経つにつれて体力と魔力も消耗していくわけで、今の彼らは戦闘開始の時と比べてかなり弱っている。心身ともに追い詰められてしまった彼らが絶望し始めたその時―――




 「見るに堪えないレベルの醜態を晒してんじゃねーか。それでこの世界をモンストールから救う『救世団』とか名乗ってんのかよ?笑わせてくれるなぁ~~~~~オイ」



 クラスメイトたちを心の底から蔑んで見下したような声が、戦場に響いたのだった。

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