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「ハズレ者の逆襲」2

 「「「「「…………」」」」」


 離れたところにいる元クラスメイトどもは、俺がつくりだした地震を見て唖然としている。言葉も無い様子だ。

 これで群れは全滅……かと思ったが、まだ終わらなかった。

 地面からあの地震から生き延びたモンストールが5体程這い上がってきた。多分だが他のモンストールどもを身代わりにして致命傷を避けたんだろう。

 で?それがどうした?這い上がってきたらきたで叩き潰せばいいだけだ。

 というわけでいちばん近くにいた蜥蜴型モンストールの顔面に、「硬化」した黒脚の蹴りを入れて破壊した。あと四体。

 続いて、蜥蜴を殺した直後に亀型モンストールがこちらに黒い魔力光線を放ってきた。


 “水砲”


 対するこっちは水魔法で迫りくる光線を相殺する。すぐに駆けて亀の真上へ跳んで、急降下からのドロップキックを放つ。要塞みたいな甲羅だが、既に脳のリミッターを500%程解除している俺の攻撃に耐えうる防御力はなかったらしく、甲羅は粉々に破壊される。勢いそのままで、亀の背中にドロップキックが突き刺さり、亀を再び地の裂け目へ突き落す。


 「じゃあな」


 追い討ちをかけるように炎熱魔法でつくった爆弾を投下して、亀型モンストールを消し去った。あと三体。

 次の相手は、やたら発達した脚を持ったカンガルー型モンストールだ。早速自慢らしい脚を使って殺人級の蹴りを放ってきたので、こっちも蹴りで応戦する。力の差は歴然で、三回目の蹴り合いでカンガルーの脚が砕ける。嵐魔法を付与させた左脚でカンガルーの首を刎ねて討伐。あと二体。

 今度は狐型と狸型が同時に襲いかかってくる。狐が九つの尻尾から複数の属性の魔法を放ち、狸が魔法と並走するように駆けてくる。あの手足で俺をズタズタに引き裂くつもりのようだ。

 俺は意識を集中させて右手に九つの小さく超濃密な魔力の弾丸をつくりだして、それらの狐の魔法攻撃にそれぞれ飛ばした。

 これは「魔力弾まりょくだん」って呼ばれるらしいな。

 魔力の弾丸で狐の魔法を全て相殺した直後、爆風に紛れた狸が接近したが、竜人族から習った武術を駆使して狸をいなして、返り討ちにした。

 そこからさらに狐に向かって「魔力光線」を撃ったが、「魔力障壁」で防がれる。さらに撃つも全て防がれた。あいつ魔防がかなり高いのか、だったら物理だな。

 「瞬足」で狐に接近して、「硬化」した拳と脚でドゴドゴと攻撃しまくって、障壁を強引に破壊する。そして狐の顔面に「絶拳」を放って、ワンパンKOした。


 「これで全部か」


 物言わぬ肉塊と化したモンストールどもの死骸を焼き払い、俺は一息ついた。これでドラグニア王国に侵攻してきた群れは全て消し去った。

 で……この依頼クエストは確か、モンストールの討伐に加え、人命救助もするように、とのことだったな。えーと、俺が来てから死んだ奴はいたかな……?


 「「「「「………………」」」」」


 まずは相変わらず啞然とした様子でこちらを見ている元クラスメイトども。数は……俺が戦いを始める前と変わらず。死者は無し。

 次は兵士団……こっちは俺が来る前からけっこう死んでた奴がいたよな。けどパッと見た感じ、死者が増えてることはないみたいだ。

 後は……一般の国民どもか。まあこれは最初からいなかったからノーカンで。


 「というわけで、お前が出した任務は達成ってことで良いよな?」


 くるりと振り返って、元クラスメイトどもの傍で控えていたクィンに確認をとる。


 「はい、何も問題はありません!全ての敵の討伐を確認、この方たちも無事。兵士団は……間に合わなかった方々が元からいたのは残念でしたが、コウガさんが来てからは死傷者が出てません。王宮も無傷のようですからそこにいる方々も全員無事でしょう。

 コウガさん、ありがとうございます!依頼通りに行動していただいて…!」


 クィンは俺のところへ駆け寄り、恭しく頭を下げて礼を述べた。


 「結局、本当にコウガさん一人に敵を全て相手させてしまいましたね…。私がしたことと言えば、至急手当てが必要な兵士さんや…あの、救世団の人たちの簡単な治療措置と、彼らのパニックを治めることくらいでした。コウガさんにはかなりの負担をかけてしまったと、痛感しています」

 「別に気にすんな。やれることをしっかりやれただけ流石だと思ってるし、そもそもあの程度の連中の相手は負担にも思ってねーし」


 お礼の次は詫びの言葉を出すクィンに、俺は気にするなと言う。実際あんなのは負担には入らない。力を程よく発散させるのに丁度よい相手だと思った程度だ。


 「よし、じゃあ任務が終わったところで、帰ると――「ま、待てよ!!」――あ…?」


 耳障りな声が、辺りにうるさく響いた。

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