クィンにゾルバ村へ帰るぞと促そうとしたところに焦りが混じった声で呼び止める奴が出てきた。無視しても良かったのだが、俺もあのクズどもには少々言いたいことがあるにはあったから、相手してやることにした。
今更だが、ここには俺を含む異世界召喚組が全員揃っているわけじゃねーみたいだな。五人……いや六人か、ここにはいない。まさかさっきのモンストールどもに殺されてしまったのか?うーん、あまり考えられないな。ここにはいないことが分かっている
で……俺を呼び止めたのは、クソクズ野郎の……大西だ。
「何なんだよお前……あの力は何なんだ!?あんな雑魚ステータスだった甲斐田が、一人でGランクモンストールの群れを倒しただと?どんなズルしてそんな力を得たんだよ!?」
「…………」
「というかお前……あの状況からどうやって生き延びた!?おかしいだろ!?俺たちよりはるかに弱かったくせに、弱いくせにまだ上から目線だったクソ野郎のお前が、ハズレ者のお前があんな…!」
「…………」
「教えろよ!?あんな雑魚だったお前がそこまでの力を得たって言うなら、この俺がお前と同じやり方で力を得たら、間違いなく最強になれる!ほら教えろよ!この不正野郎!!」
相変わらず好き勝手に俺を罵って、力を手にした経緯を教えろと命令するという、立場を全く分かっていないこのクズに、俺は今日初めて大西と目を合わせる。虫けらを見る目でその汚い面を見る。
「今の俺と同じ力が欲しいのか」
俺の冷淡な声に大西は一瞬怯んだ様子を見せるも、すぐに強気な態度に戻す。
「そ、そうだ!さっさと話せよ!その後に俺もお前以上の力を手にして…………」
「だったら死ねばいい」
大西の耳障りな声を遮って俺は相変わらず冷淡な声で切り込んだ。
「は……?」
大西は何を言われたのか分からないって顔をしている。そんな大西に一瞬で接近して、髪を掴んで…
ドゴォン!「あぐぇ!?」
顔面から地面に叩きつけた。もちろん死なないように力をすご~~く抑えながら。突然の俺の行動にクィンも元クラスメイトどもも驚愕する。
「黙って聞いてりゃテメー、誰に対して上から目線で口利いてんだ?テメーが今話しかけてる男はな、テメーらが束になっても勝てなかった
のぼせ上がんのも大概にしろよクソ野郎」
「が……ぐぁ!?」
手を放して今度はうつ伏せ状態で無防備の背中に足を置いて踏んづける。ちょっと力を入れただけでも大西の背中からミシベキと音が鳴り、悲鳴が出てくる。
「げぁ…!や、め………!だ、ず、げ………!」
「立場を弁えろよ、今はテメーが俺のはるか下にいる分際だってことをよく頭に刻んどけ。今の俺は、テメーら程度のゴミ虫なんか秒で絶滅させられるだけの力があるんだぞ?言葉に気をつけろ」
ガン!「か…………っ」
最後に大西の顔面を軽く蹴飛ばして元クラスメイトどものところへ飛ばした。奴の顔面は面白いくらいに凹んでいた。
「こ、コウガさん……!」
「安心しろ、殺したりはしないから」
クィンは元クラスメイトどもを守るように俺の前に立ってくるが、殺さないと誓ってどかせてあいつらのところへ行く。殺気とかは飛ばせない体質なので代わりに全身から魔力を迸らせて威嚇代わりに使う。俺の超濃密な魔力を前に、山本も片上も安藤も鈴木も須藤も里中も、学校で俺をハブにしてこの世界で罵って虐げたクズども全員が恐怖する。
ある者は立ってられず尻もちをつき、ある者は全身を震わせ、ある者は顔を真っ青にさせていた。特に俺を虐げた連中は今にも逃げ出そうとしている様子だ。俺を散々貶めたっていう自覚はあるみたいだな。
そんな小物どもに対する俺は、ゴミを見る目で見下すだけに止めておいた。
「テメーらはあの時俺を見捨てる選択をした。ただ選択しただけじゃねー。テメーらは俺を罵倒しながら見捨てた。嗤いながら見捨てた。あの時の屈辱と怒り、そして憎しみ…昨日のことのように思い出せる。
今すぐテメーらをここで皆殺しにしても良いなと考えてさえいる」
俺の言葉を聞いた連中は全員顔を真っ青にさせる。安藤なんかはイヤイヤと呟きながらガタガタ震えている。
「だがそこは安心しろ。依頼任務の縛りがある以上、今回はテメーらをここでぶち殺すようなことはしない。ただ…これ以上俺にヘイトを溜めさせることがあれば、気が変わるかもな」
スッと手を前に突き出して魔法を発動する。直後数人が俺のところへ引き寄せられる。
「ぐぇ!?」「なあ!?」「げぇ!?」「ひぃ!?」「うわぁ!?」「いやぁ!?」
引き寄せたのは大西と同じく俺をリンチしたり学校でも色々貶めてきた奴ら…山本、片上、須藤、里中、小林、安藤だ。
重力を操って六人を宙に浮かせる。そして順番に、体にギリギリ触れないところに拳を放って、全員を殴り飛ばした。こいつら程度の相手なら、空気を殴りつけただけの拳圧でもまるでぶん殴られたかのようなダメージを負わせることが出来る。直接当ててたらたぶんモンストールみたいに爆散させてたかも。
空気越しにぶん殴られた六人はキモい悲鳴を上げながら大西と同じように無様に地面に転がり落ちて倒れた。それを見た元クラスメイトどもはさらに俺を怯えた目で見て震えだす。
「あの時…初めの訓練で俺を囲ってリンチしやがった分だ。何が訓練だ、そう称してただ俺を虐げたかっただけのくせに。
おい、この程度で倒れてんじゃねーよ。テメーらはあの時…骨が折れるまで殴って蹴って、魔法も容赦無く浴びせてきたよな。俺をズタボロのぼろ雑巾にさせてくれたよなぁ?」
須藤の胸倉を掴み上げながら、平坦で冷淡な声で恨み言を吐く。山本と片上はパニックを起こし、安藤は泣き出し、里中と小林は心が折れた様子でいる。須藤を乱暴に投げ捨てて再び六人を浮かび上がらせる。
「山本純一…テメーも大西と同じように見た目だけイキってるだけで、自分はクラスでカーストトップに位置していると気取ってる虚勢だけの野郎。テメーごときが何でこの世界の救世主の枠に入ってんだ?異世界主人公のが」
面汚し
地面に叩きつける。
「片上敦基…このクソ坊主が。テメーも以下同文だクソが」
地面に叩きつける。
「須藤賢也…ヤニカス野郎。テメーみたいな喫煙マナー守らないクズが何でまだ生きてんのかねぇ」
空気越しに殴りつけて顔面を潰す。
「里中優斗、小林大記…この世界に来てから堂々と暴行するようになったな。小物が力を持つとホントに調子に乗るよな。後の報復をロクに考えずにぶん殴りやがって」
空気越しに脳天を殴って地面に打ち落とす。
「安藤…クソ女、存在がブスのゴミカスが」
歯を折って鼻を潰して髪を半分燃やしてから地面へ捨てる。中身だけじゃなく見た目もブスにしてやった。
「ひ、酷い…!こんなの…いくら何でも……っ」
顔に手をあてて泣き出した安藤を見ながら、奴と仲が良い女子…柴田あいりがそうほざく。
「酷い?いいか、このクズどもはあの最初の訓練の時に俺を囲ってリンチしやがったんだ。それもズタボロになるまで。俺はあの時やられた分をそのまま返しただけだ。殺されないだけマシだと思ってほしいくらいだ」
再び地面に這いつくばっている六人を見下しながら俺はまた手を掲げる。
「とはいえまだズタボロって状態じゃねーな全員。もうちょい遊んでやろうか……………」
「コウガさん!いい加減にして下さい!!」
重力魔法を発動しようとしたところに、クィンが立ち塞がる。いかにも怒ってますといった顔をして俺を睨みつけてくる。
「強大な力を持つあなたがこんなことをしないで下さい!いくら何でもこれはやり過ぎです!」
チラと安藤を見て悲しそうな顔をする。