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「Sランクモンストールとの戦い」

 「救世団が………異世界召喚した方々が、Sランクモンストール数体にやられて、全滅してしまいました……」


 Sランクモンストール四体から十分に距離をとったところから戦況を見ていたミーシャは、3年7組の生徒たちがモンストールたちに殺されてしまったことに激しく動揺していた。


 「こんな、ことになってしまうなんて……。フジワラミワさんに会わせる顔が、ありません……。彼らを死なせるようなことはしないと、約束していたのに……」


 がくりと膝をついて目に涙を溜めて震える。ここにいない美羽に対する罪悪感で圧し潰されそうになってしまっているミーシャの肩を、シャルネは慰めるように両腕でそっと包み込む。


 「………どうしてですか、コウガさん」


 一方クィンは、剣を握っている手に力を込め、険しい顔で皇雅を見つめていた。その目には怒りが含んでいた。


 「どうしてあなたは、彼らが殺されていくのをただ見ていたのですか?どうして、彼らを救わなかったのですか………っ」



                   *


 ゴリラ鬼のモンストールが咆哮を上げながら最初に近づいてくる。さっきぶっ飛ばしたことを根に持っているみたいだ。続いて怪獣型もエーレっぽいのもプテラノドン型もやってくる。全員殺気を向けてきている感じだ。元クラスメイトどもと相手していた時とは様子が違う。

 こいつらは俺の力量をすぐに把握することが出来るというのか?よくは分からんがまあいい。要はこいつらは今から本気で攻撃してくるってことだ。

 最初に動いたのはゴリラ鬼だ。両腕に岩石を纏ってぶん殴りにかかる。脳のリミッターを550%くらい解除して「硬化」させた腕を振るって迎撃する。

 さっきはこれくらいの力で競り勝ってぶっ飛ばせたのだが、今度は力が拮抗している。このゴリラ鬼、今度はフルパワーで攻撃しにきてるな。

 力比べしているところに、怪獣が赤い「魔力光線」を撃ち、上空からプテラノドン型が嵐魔法による巨大で鋭利な刃を放ち、エーレがどす黒い雷が纏った前足を思い切り振るってくる。

 三方からの隙を突いた攻撃に対し、咄嗟に「魔力障壁」を体にピッタリ展開して防御態勢に入る。直後、俺の体は光線による衝撃と刃の斬撃と魔爪の打撃でもみくちゃにされる。しかし俺の体がバラバラになることはなく、どうにか障壁が俺を守り切ってくれた。


 重力魔法“拒絶”


  敵の包囲から逃れるべく重力魔法を発動する。俺に襲いかかる攻撃を全て弾いて拒絶する為の強力な斥力を四体のモンストールの周囲に発生させて、全てを弾いて吹き飛ばす。

 炎熱の光線は上空へ飛ばされ、それが上空にいるプテラノドンに直撃して墜落する。怪獣とエーレは俺から数十m地面にバウンドしながら吹き飛ばされる。そして真正面から力比べしていたゴリラ鬼が斥力の暴力をいちばんモロにくらう。纏っていた岩石が粉々になり、ついでに腕も半壊した。

 四体もの包囲攻撃からどうにか逃れて距離をとり、奴らの今の行動を分析する。


 (今……連携したよな?モンストールどもが連携攻撃だと?Sランクのレベルになるとそういう意識も芽生えるというのか?知能が上がっている?)


 Gランクモンストールの群れだってそうだ。あいつらに仲間意識はないはずなのに数十の群れを形成してここに侵攻してきた。

 いったいどうなってやがる…化け物が人間みたいに考えて動くとかいよいよ手がつけられなくなるじゃねーか。

 まあそれは、俺以外の人間たちにとってだが…!


 「脳のリミッター700%解除。“全身武装・硬化”」


 モンストールどもの異変については後で調べよう。様子見は終わりにして、一気に殲滅させよう!


 「………!体が」


 リミッターをさらに外した直後、体のあちこちからミシリと音を立てた。筋肉が断裂して骨が軋んでいる。

 脳が普段から勝手にかけているリミッターを無理矢理外すというのが俺の固有技能「制限解除」。50%くらいの解除でも普通の人間には耐えられないレベルの負荷がかかる。それを500%をも超えるとなるとその負荷は想像を絶するものだろう。ゾンビじゃなかったら俺は廃人化あるいは体が自壊して死んでいたかもしれない。ゾッとするね。

 ゾンビの体とはいえ、これ以上リミッターを外すと体が崩壊して戦いどころじゃなくなる。今の解除率がギリギリの許容範囲だな。それにリスクを冒してる以上、ここからは短期決戦で行くのが最善だ。目の前にいる四体の敵を睨み、全身凶器と化した体を武器にして、今度は俺が攻勢に出る。

  まずは…腕が半壊状態のゴリラ鬼から落とす。肘に推進機を武装させてから勢いよく走り出す。

 今なら100mを1~2秒で走れそうだ。5歩でゴリラ鬼のところに着いて、「連繋稼働」を素早く発生させる。簡易なパスなので威力は落ちるが、肘から生やしている推進機の加速で補正させるから気にならない。渾身の左拳の「絶拳」をゴリラ鬼の脳天にぶち当てる。

 パンと音を立てて、頭の中身をぶちまかして、ゴリラ鬼を破壊した。

 さっきのTレックスのことがあったから、倒れたところに魔力をたくさん込めた光属性の「魔力光線」撃って塵にして消してやった。まずは一体目。

 次は………斥力で弾かれた怪獣の「魔力光線」をくらって墜落したプテラノドンを消しに行く。一瞬で奴のところへ跳んで、狙い先をまた脳天に定めて、簡単な「連繋稼働」で力をパスさせた状態の左脚を大きく上に上げたまま急降下して、渾身の踵落としをおみまいしてやった。

 もの凄い爆発音が辺りに鳴り響き、同時にプテラノドンの血と脳みそも飛び散った。

 そして魔力光線を撃って骨も残さず消し去った。これで二体目。

 その時エーレがまた隙をついて攻撃を仕掛けてきた。全身にどす黒い炎や雷を纏わせて突進しにきている。

 ただ単に突進しているわけじゃない。自分の進路と標的…俺の周囲に重力魔法の拘束をかけて動きを封じている。これによって標的を確実に轢き殺すって作戦か。知能高い生物だな。

 蒸気機関車みたいに鼻息を荒げさせながらまっすぐこっちに突っ込んでくるエーレを真正面から迎え撃つ。「硬化」した手に魔力でつくった小さく強大なバリアーを張ってから、エーレの突進を受け止める。バリアーで奴の炎と雷による手へのダメージを防ぐ。


 「せいっ!」


 突進を受け止め切ったところでエーレをひっくり返すように投げ落とす。


 “全属性武装鉤爪マルチ・ガロン


 両手にいくつもの属性を纏わせた鉤爪を武装する。

 これは……地底で遭遇した人型モンストールの武器を真似したものだ。打撃と斬撃を兼ね備えた物理攻撃。さらに炎熱や水、嵐といった属性攻撃も付与させているから威力は絶大だ。

 七色のオーラを纏った黒い鉤爪を、倒れているエーレ目がけて振り下ろし、その五体をズタズタに引き裂く。

 前脚も後脚も尾も角も、鉤爪でバラバラに解体する。両腕を超高速で振るってさらに切り刻む。攻撃が終わった頃には、エーレの全身は真っ赤なバラバラ死体となっていた。そしてダメ押しに炎熱魔法を放って後処理する。


 “炎の渦”


 ごうごうと巨大な炎の渦巻きが発生して、エーレを燃やしながら飲み込んでいく。

 これで三体目。あとは火を吹く怪獣のみだ。瞬間移動の如く移動して怪獣の真後ろに回り込む。

 危険を察知したのか、怪獣は背中の甲羅から鋭利な棘を生やして咄嗟に防御態勢に入った。よく見ると亀の甲羅を持ったゴジラみたいなやつだ。ガキだった頃に特撮で見たことあるな。名前はガメr………おっとこの辺にしておこう。

 棘だらけの甲羅に構うことなく、鉤爪で攻撃する。ガキッと音が鳴って火花が散るだけで、甲羅を切り裂くには至らない。頑丈だな。どうやらこの怪獣は他の四体と比べてかなりタフネスさが売りのようだ。 

 「斬撃は捨てよう。打撃面に特化。受けてみろ、俺の全力を」


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