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「人類/魔族の反応」

ラインハルツ王国―――


 「あ、あれが魔人族…!少年の見た目をしていながらなんだあのプレッシャーは!?肝を冷やされた、ぞ……っ」

 「しっかりしてくれよフミル国王。いちばん偉いあんたが幻のガキを相手に狼狽えていると、民が不安になるだろ」


 王宮の会議部屋にてフミル国王は先程の幻像のことで動揺している。そんな彼をラインハートが諫めている。


 「しかしだなラインハートよ……魔人族が軍を率いて、この国をも支配もしくは滅ぼそうとしているのだろう?国王の身とはいえこれが平気でいられるというのは……」

 「大丈夫だ。あんたは国王として威厳に満ちた姿を民や兵士たちに見せてやれば良い。後は俺たち兵士団に任せれば良い。世界最強の兵士団があんたと国を護ってやるから」


 フミルの肩に手を置いてラインハートは安心させる声音でそう言った。


 「この国を魔人族なんかに蹂躙させてたまるか、そうだろ?」

 「う、うむ!その通りだ!そうだな、私が縮こまっていてはダメだ。今こそ皆を励ます時ではないか!」


 フミルは声を上げて自身を奮い立たせながら部屋を出て行った。


 「やれやれ。まだまだ世話のかかる国王だぜ」


 フミルの背をみながら、ラインハートは苦笑するのだった。


 (そうだ、この国もこの世界も護る。“約束”したからな……)


 ラインハートは強い意志を湛えた目で空を見るのだった。




ハーベスタン王国―――


 「あれが、魔人族というものか……」


 王宮の一室にて、ニッズ国王は額に汗を滲ませて俯く。


 「戦士ではない私にでも分かる……あの強大で邪悪な魔力、あんなものは初めてだ。あのような力を持った奴らが、ここにも来るというのか…」


 同室にいる国の要人たちも同じような気持ちだった。


 「臆されるなニッズ国王。この大陸にはハーベスタン王国だけじゃない、我ら亜人族も味方だ」

 「…………(こくり)」

 「デイゥル国王、アンスリール王子……」


 気落ちしたニッズたちを励ましたのは、二人の亜人。白髪が混じった黒の短髪で大柄の男が国王のディウル、金髪碧眼の美形の男が王子のアンスリールだ。二人はある用事でハーベスタン王国に訪れている。


 「改めて用件を話させてもらおう。今日私たちが訪れた理由は、先ほど現れた魔人族のことだ。我々亜人族とここハーベスタン王国とは同盟関係にあたる。ここは私たちが協力して、三日後に来るであろう魔人族の軍勢を殲滅しましょうぞ」


 ディウルの提案にニッズたちはしばし固まったものの、すぐに顔色を明るくさせた。


 「人族の全大国で編成された連合国軍というものがあると聞いている。もちろん連合国軍の力も使ってもらって構わない。加えて我ら亜人族とも共に戦うという話は、悪くないものだと思わないだろうか?」

 「ああ、その通りだ。あなた方が我々と共闘してくれるのは非常にありがたい。是非共に戦ってほしい!」


 ニッズとディウルは立ち上がって互いに握手を交わした。


 (ガビル国王にこのことを話そう。それによって戦力の配置がまた変わることになるだろう。

 ――――そうだ……!)


 ニッズはあることを思い出しディウルたちと向き直る。


 「ディウル国王、我らからもあなた方に伝えなければ、知らせなければならないことがある」


 そう告げた後、ニッズたちはどこか気まずそうにする。その態度にディウルとアンスリールは訝しそうに見る。


 「では……入ってきてくれ」


 ニッズは後ろの扉に声をかける。その直後扉が開かれて一人の戦士らしき男が入ってくる。


 「―――!?」 

 「お、お前、は……!!」


 二人とも大いに驚愕して思わず立ち上がる。二人の前に現れた男は―――


 「………………」

 「ダンク、なのか……!?」

 「ああ。久しいな、義兄あに殿」


 半年以上前に亜人族の国パルケ王国を去った鬼族の「排斥派」の筆頭。その正体はディウルの妻の弟であり兵士団の元団長でもある、坊主頭でディウルよりも大柄の男――――ダンクだった。




サラマンドラ王国――――


 「カブリアス、ドリュウ。感じたか?あの魔力を」

 「ああ」「はい」


 大きな道場の屋根にて三人の竜人が何も無い空を未だに睨んでいる。

 竜人族の族長、エルザレス(半年前よりも煌びやかさを増した花柄の派手服を着ている)。戦士「序列2位」のカブリアス(赤い鎧を纏っている)。戦士「」のドリュウ(黒の鎧を纏っている)だ。

 この半年間でドリュウは下剋上を果たして戦士の序列を大幅に更新した。今では竜人族戦士の中で3番目に強い者となっている。


 「ただの幻像でありながら途轍もない魔力を感じられた。そしてあの幻を創った奴の戦気も微かだが感じられた。大きな力を持っているのは間違いないだろう」

 「コウガが言っていた通り、今の魔人族は昔とは大いに違っているらしい。やはりそうなのか?」

 「ああ。百数年前の奴らとはまるで別人だ。それこそカイダの奴と同じ次元の強さを手にしてやがる…」

 「あれで幻……本物はどれ程の……」


 エルザレスが眉間に皺を寄せて呟くのを聞いたドリュウはまだ見ぬ魔人族の脅威と強大な力を推測して拳を握りしめる。


 「国中の全戦士を集めろ、緊急集会だ。国外にいる“序列”の戦士たちもすぐにここに戻らせろ。

 魔人族の迎撃に備えるぞ…!」


 エルザレスの号令に二人は強く頷いた。


 (何が服従だ、邪悪な輩が…。竜人族の誇りにかけて、お前ら侵略者どもは全て消し飛ばしてやる…!!)


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