「ベロニカと残りの“序列”持ちの同胞たちはこのホームの留守を任せる。万が一にもこの魔人族のホームが敵に見つかった場合、お前たちがここを守れ。戦争が終わるまではこの拠点は潰されないようにしておきたい。俺の貴重なサンプルや研究データがあるからな。
それに...“奴”がここに攻めてくる可能性もある。丁重にもてなしてやれ」
最後の一言で声のトーンを低くしたことにヴェルドやベロニカが反応する。ザイートが警戒している人物に気が付いたのだ。
「屍族に近い性質を持った人族のガキか。そういえば奴は今どこを拠点としているんだ?」
「恐らくですが、奴は鬼族の残党と共存している可能性が高いです。鬼族の数人と共に旅をしていたという情報もあります」
ヴェルドの質問にクロックが答える。その内容にネルギガルドが反応したが、何か言う前にザイートが指示を出す。
「まあいい。大勢の同胞を相手にすればさすがの奴も手こずるだろう。この中の誰かが奴……カイダコウガを見つけたらすぐに俺に知らせろ。
奴は俺が殺す…!」
ザイートが強い意思を見せたことに全員が怯む。彼がここまで激情を出すのは珍しいからだ。
「さて……あとは“こいつら”だが………」
ザイートは建物から出て下を見下ろす。そこには、百、千、万…それ以上の数もの魔物とモンストールが待機していた。
「この半年間で多くの同胞たちによって世界中の魔物と屍族をこれだけ集めることが出来た。戦争を始める際はこいつらを先にけしかけるとするか。
俺たちの戦力は質だけじゃなく量もあるぞ。最強の軍がここに誕生した…!」
ザイートは面白そうにくつくつと笑って上を見る。
「準備は全て整った!三日後、この世界を俺たちのものにする!魔人族以外の種族など全てゴミクズだ!全て根絶やしにしろ!奪え、犯せ、殺せ、滅ぼせ!!
俺たち魔人族がこの世界の頂点だ!!」
ザイートの叫びに全ての魔人たちが再び沸き上がった。
(来てみろカイダコウガ。それとも俺がお前を殺しにいこうか?いずれにしろお前との決着を無しに、この世界の征服はない。
どっちが勝者に相応しいか、決着をつけるぞ!!)
心の中で宿敵に対する闘志と殺意もみなぎらせるのだった―――
*
ここに、各勢力の戦力を記す。
人族大国から成る連合国軍
サント王国の主戦力:高園縁佳 堂丸勇也 中西晴美 米田小夜 曽根美紀(異世界召喚された者たち、元救世団) ガビル・ローガン(連合国軍総大将) 他、有志で募った冒険者たち
旧ドラグニア領地の主戦力:藤原美羽(異世界召喚された者、元救世団) クィン・ローガン(サント王国兵士団の副団長)
ハーベスタン王国の主戦力:トッポ(兵士団長) ダンク(亜人族元兵士団長) 他、有志で募った冒険者たち 同盟を結んだ亜人族とも共闘
ラインハルツ王国の主戦力:ラインハート(兵士団長)、マリス(副兵士団長)
イード王国の主戦力:ハンス(兵士団長) コザ・イアイアン(サント王国兵士団長) 他、有志で募った冒険者たち(最も多い)
連合国軍参謀:ミーシャ・ドラグニア
しめて、連合国軍の戦力、兵士・異世界の戦士・冒険者全て合わせて―――約10万
魔人族勢力
魔人族戦士:ザイート(序列1位) ヴェルド(序列2位) ベロニカ(序列3位) ネルギガルド(序列5位) クロック(序列4位) ジース(序列6位)
リュドル(序列7位) 他、「序列」持ち含めた魔人族戦士50名
モンストール(屍族):Sランク個体150体、Gランク個体200体、上位レベル個体10000体、その他下位レベル個体数万
使役魔物:総勢約20000体
しめて、魔人族勢力の戦力の数、推定5万
他、小規模の勢力がいくつか
サラマンドラ王国の竜人族
パルケ王国の亜人族(ハーベスタン王国と共闘)
そして―――
「来いよ魔人族、ザイート。元の世界に帰る邪魔をするテメーらは……俺と俺の仲間たちを殺そうとするテメーらは、俺の敵だ。全員ぶっ殺してやる!」
黒髪、灰色の肌の少年。その正体は一度死んで人族と屍族の間……ゾンビとして復活した、異世界召喚された高校生、
「魔人族……ネルギガルド。両親の仇、里を滅ぼした仇……!必ず、殺す!!」
赤い髪、金色の角を持った鬼族…金角鬼の少女、アレン・リース。
二人を中心とする鬼族の生き残りと皇雅。彼らもまた、来る大戦に向けて十分な準備を完了させていた。
そして三日後、全大陸を巻き込む世界の命運をかけた世界大戦が始まる―――