目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

「天の龍と地の竜vs悪魔」

 戦いが始まってから二人がすぐに「限定進化」を発動しなかった理由は、それらの力があまりにも強大過ぎるからだ。仲間を巻き込むことはもちろん、二人のうち一人でもその力を行使すると、国を半壊させてしまうとされている。

 故に二人は序盤は人型のままで持てる力を出すことに専念していた。

 しかし今は近くに守るべき者たちはいないことから、こうして自身にかけていた枷を外して、内なる力を全て解放した。


 3人が進化した直後、激しい雷雨が降り始めた。それを引き起こしたのは、白き蛇龍と化したカブリアスだ。進化した彼は天候をも武器とすることができる。水を操って大雨を、雷を操って激しい雷を、風を操って嵐を全て意のままに発生させることが出来る。



 「親父、心配すんな?誤爆なんて間抜けはしないから、あの魔人を殺すことだけ集中してな」

 「ふん。俺のお前への信頼度を舐めるな。言われなくても全く気にしてねーさ」


 空に浮いているカブリアスの言葉に、地に君臨する赤き蛇竜と化したエルザレスは軽口で返す。


 「天の龍と地の竜、か。面白い組み合わせだな...」


 そして三人目の進化を遂げた男の姿は...お伽噺にでも出てきそうな「悪魔」そのものだった。頭には純黒の角、背には闇色の翼、そして赤い瞳を湛えた魔人...ヴェルドは二人の姿を見て興味深そうに呟く。


 「見世物じゃねーぞ悪魔が......“竜の嵐息吹ドラゴブレス”」


 空間が歪んで見える錯覚を見せる程のオーラを放つヴェルドに怯むことなくエルザレスが嵐を凝縮したブレスを放つ。くらえばズタズタになるか破裂して消えるかの威力を誇る必殺のブレスを、


 「ちゃんと見かけ倒しではないようだな。威力がさっきと桁違いだ」


 “魔王刃”


 難無く魔剣で両断してみせた。


 「あっさり防いでおいてよく言うぜ」


 ブレスが破られたことに動揺することなくエルザレスは接近攻撃を仕掛ける。超凝縮されている筋肉質の腕を音速で振るって魔力を纏った爪裂き(クロー)を放つ。


 “天裂あまさき”


 空間を削り取るか如くのクロー攻撃に対しヴェルドは魔法を放って対抗する。


 “雷矛らいほこ


 エルザレスの爪をバリバリと音を立てて青黒い雷の矛が止める。 


 「おおおおおおおおお!!」


 一撃では終わらずエルザレスは何度もクロー攻撃を敢行する。ヴェルドも至近距離系の魔法と錬成した魔剣で応戦する。


 「接近戦は相変わらず得意か」

 「武術の腕は俺がいちばんだ......“九頭龍武撃くずりゅうぶげき”」


 爪を解除したエルザレスはさらに超音速で拳と蹴りを次々に放つ。その一挙手一投足は、まるで龍が飛んでくるよう。


 「お前は武を極めたのかもしれないが、俺は剣術を極めている」


 “悪魔の剣乱舞けんらんぶ


 エルザレスが放つ超音速の武撃に対し、ヴェルドも同じ速さの剣撃で抗戦...否、躱してその際にエルザレスに数太刀を浴びせている。


 「何て......剣速だ...!」

 「身体能力の違いだ......死ね――」


 “白竜の巨雷トールサンダー


 ヴェルドが神速の一太刀を浴びせようとしたその時、青白い巨大な落雷が彼を襲った。カブリアスの魔法だ。



 「粉々になれ。“嵐竜の氾濫獄渦ドラゴ・テンペスト”」

 「おまけだ―――“終焉齎す地変ランド・ディザスター”」



 落雷をくらって硬直したヴェルドにさらにカブリアスが国一つを破壊する規模の魔法攻撃を放つ。激しく吹き荒れる嵐と氾濫している水でできた渦を発生させてヴェルドを閉じ込める。この渦に閉じ込めらた生物は、たとえ災害レベルであろうと全身がバラバラに引き千切ぎられてただの肉片と化すと言われている大災害の渦は、激しくうねりを立てながら獲物を蹂躙していく。

 さらにエルザレスの最強の大地魔法が下から襲い掛かる。大地が剣山のように変形してまるで意思を持ったかのように一斉にヴェルドを襲った。

 二人のこの合わせ技は...恐らく序列下位の魔人族をも滅ぼすとされる威力であろう。



 “無に帰す黒闇ブラック・エンド


 ボシュウウウウウウウ.........ッ


 そんな世界最強規模の二つの魔法は、たった一人の暗黒魔法によって消されてしまった...。


 「...!?」

 「魔人族戦士“序列2位”......これ程までのレベルとは...」


 カブリアスもエルザレスも、こればかりには動揺を隠せずにはいられなかった。同時にやや息も切らせている。お互いに全力で魔力を込めて放ったのだから当然である。


 「お前らの魔法が、それらを遥かに上回る俺の魔法に敵う道理は無い

 ………!?」


 赤い瞳をぎらつかせながら冷たく言い放つヴェルドを二人は冷や汗を流しながら睨む。そんな中、ヴェルドの様子が一変する。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?