そして一分後、最初の五人…石倉と小川と鈴木(男)と森川と原田を集めて頭上から「極大魔力光線」を放つ。数秒後五人全員は塵一つ残らず消え去りもう蘇ることもなかった。
次の五人は里中と小林と青木と阪本と野口…サッカー部中心のメンバーだ。即座に固めて「極大魔力光線」で消し飛ばそうとしたところに里中が何か尋ねてきた。
「な、なぁ!勇也…堂丸勇也は無事でいるのか!?」
「生きてるよ。今もな。テメーらよりもずっと強い」
それだけ答えてから即発射して五人を消し飛ばした。消える間際に里中と小林がよかった…と安堵した声が微かに聞こえた。
さらに次は山本と片上と山崎、安藤と柴田という野球部連中と女子のカースト上位陣二人だ。
「く、くそ……やっぱり死にたくねーな…!」
「けどよ、このまま生きててもここにずっと閉じ込められるだけだぜ」
「……………」
山本と片上がそんな会話をして、柴田はただ俯いて震えてるだけだ。
「ね、ねぇ甲斐田!私やっぱり死にたくない!甲斐田だって一度死んでるのにそうやって自由に生きてるじゃん?私もあんたと同じように―――」
「無理だな。テメーらの魂はテメーらを召喚したベロニカが支配している。あの女がこの召喚魔術を解いた瞬間にテメーらは消えて無くなる。テメーらに自由なんて存在しねーんだよ」
「そ、そんな……………」
俺の返答を聞いた安藤は涙を流して絶望する。それを冷めた目で見ながら五人の頭上から超巨大な炎の光球を落として、奴らを跡形も残らず消し去った。
「「「「「……………」」」」」
クラスメイトたちが次々に一瞬で消えていく様を、残った五人は青い顔で見つめていた。その最後の五人は須藤と早川と柿本と鈴木(女)、そして大西だ。クラスの中でカーストが上位だったやつらだ。どいつもこいつも一人だと何もできなかった小物どもだったが。
「手短にしか許さねーけど何か言い残したいことあるか?俺に恨みつらみの言葉でも好きに言ってかまわねーけど」
俺がそう聞いても口を開くことはなかった。1年の時から俺を目の敵にして常に悪意をぶつけてきた須藤ですら俯いて黙ってるだけだ。もう終わりか…と思ったところに大西が何か言ってきた。
「俺は……お前のスペックに嫉妬してたんだ。去年同じクラスになった時、お前がみんなと協調しなかったことを突いてお前をさらに孤立させて居場所を無くさせようとしたんだ。そうやって俺がお前より上になれると思ってた……。
でも、それが間違いだってようやく気付いて―――」
「手短につったろ。懺悔はあの世でやってくれ。じゃあな、元クラスメイトども」
「え、ちょ―――」
狼狽する大西の顔が、元クラスメイトを見た最後の光景だった。膨大な魔力を込めた爆弾で闘技場ごと全てを消し飛ばしてやった。後に残ったのは全てが真っ平となった平地だけだった。そこに元クラスメイトどもの姿は一つもない。ドラグニア王国の王族もサント王国の冒険者もハーベスタン王国の貴族もいない。全部消えて無くなった。
「さて……召喚魔術は破ったけど、この幻術空間はまだ破ってないんだったな」
感知したところここは幻術でつくりあげた閉鎖空間となっている。一般的な突破方法は術者本人を叩いて解除させる他無いだろう。その本人…ベロニカとやらはこの近くにはいない……離れた別のエリアでここを見ているのだろう。どうせ今も焦りまくった様子で俺を見てるんだろ?
普通だったら詰みだろうけど、俺の場合は……強引突破で出て行く!
すううぅ……、と深く息を吸って空気と嵐属性の魔力と気合を十二分に腹の中心に溜める。臨界点に達したところで、全てを解き放った――
≪アッ!!!!!≫
言うなれば超絶爆音波。窓ガラスはもちろん、建物の一つ二つも簡単に崩壊させ、虫や小動物、鍛錬を積んでいない人間なら死に至らせるレベルの大振動超音波だ。これを見ているベロニカにも聞こえて効いたはずだ。俺のこの超絶爆音波を…!
『――――!!!』
パリイイィン――!!
ベロニカの小さな悲鳴とこの空間に亀裂が走って割れる音がしたのはほぼ同時だった。数秒後モノクロ世界がなくなり、見覚えある場所へと戻ってこれた。モノクロを見せられる幻術は完全に解けた。俺レベルになれば「幻術」なんて気合で解除できる。
「気配感知」―――見つけた。即座に移動すること一分程度、ベロニカがいる部屋に侵入する。
「―――!!ひ、ひぃ...!」
俺を見ると恐怖に満ちた声を漏らすベロニカ。魔力を熾そうとしてるがちゃんと熾せていない。
「別に怒ってねーよ、礼を言いにきただけさ。ありがとな、自分を見つめ直す機会をつくってくれて。
まぁそれとここから見逃すのとは話は別だけど」
「あ...ああ、あ...!!」
殺気を放つと彼女は戦意喪失したのか、その場にへたり込んだ。「限定進化」で伸びた髪もしおれて見える。
戦意が無いからといって見逃すような、今はそんな甘ちゃん理論は通らない。こいつらは俺の仲間たちも人族も魔族も、この世界全てを滅ぼそうとした悪そのもの。慈悲をかける要素はゼロだ。ひと思いに殺して―――――
「 そこまでだ、カイダコウガ。そいつを殺すな 」
腕を振り上げた刹那、真後ろから殺意が込められた声がして、即座にベロニカから離れる。彼女の傍にはいつの間にか、「あの男」がいた。
そいつは因縁の…リベンジしたいとずっと思っていた最強の敵…ラスボスだ。その声も、忘れるもんか……!!
「 よぉ、久しぶりだな ザイート 」
怒り、トラウマ、緊張、執念……様々な感情が渦巻いたけどその全てを噛み砕いて、俺は