里に帰って仲間たちに全てを説明し終えた後、自分が使っている家に向かうその道中のことだった。
「………っ!?」
頭の中にあの不気味な声が響いた。それは今日も聞いた新生魔人族軍の総大将の……
「何の用だ、バルガ」
≪お前にいい事を教えてやろうと思ってな。それだけだ≫
バルガは何がそんなに面白いのか不気味に笑いながら予想もしてなかったことを告げる―――
≪次の大戦で新生魔人族軍が侵攻するのは――サント王国、そしてお前が今いるであろう鬼族の里だ。どれもベーサ大陸に位置しているところだ。まずはこの二箇所を最初に攻め滅ぼすとする≫
まさかの攻め入るところの予告に俺は一瞬だけ呆けてしまう。
「何言ってやがるんだ?嘘で俺たちの裏をかく魂胆か?」
≪嘘などつかぬよ。それはお前もよく分かるはずだろ?≫
「……………」
≪サント王国と鬼族の里、数少ない同胞たちをそれぞれどちらに向かわせるかは伏せるからな?誰がどこに侵攻するのかは当日のお楽しみだ、用心することだ。
それと、俺たち魔人族軍はその二箇所しか攻めに行かない。他の人族の大国にも魔族の国にも攻めに行かせない。それらを滅ぼすのはサント王国と鬼族の里を滅ぼした後だ。ただ、俺たちの管轄外の魔物のことは知らないからな?あいつらがどこに攻め入ろうと俺には無関係だ≫
「………テメーはホントに何なんだ?自分から手の内を明かしやがって。戦争する気があるのか?」
≪ククククク…!まだ分からないのか?俺がしたいのは“闘争”だ。面倒な軍略を練りながらの戦争など興味無い。
じゃあな。戦場で逢おう―――≫
それを最後にバルガとの念話が途切れる。道に立ち尽くしていた俺は溜息をつくと家にさっさと帰る。
(明日の軍議に早速このこと話さねーとな…)
心の中で呟くと睡眠が必要ないこの体に睡眠休暇を与える。心の回復にもなるからな。
*
翌日。皇雅はサント王国にまた訪れて、新生連合国軍にバルガが漏らした情報を伝えて軍議にも加わった。彼を交えた軍議は明るい雰囲気になっていた。皇雅という存在を誰もが頼もしく思っており、その彼が皆を頼ると言ったことで自分たちにも出来ることがあるのだと活力が湧いたからだ。皇雅と世界最高峰の軍略家カミラ、二人の加入は大きな希望と活力をもたらした。
兵士・戦士・有志の冒険者の全員に粉末状の魔石が配られ、倭の指示の下でその強化コントロールをする。一方の軍の司令陣は夜通しで大戦の軍略を練り続けていた。そこに皇雅も加わり一緒に必勝の策を練ったのだった。
その時間は長いようで短く、あっという間に二日が経った。
そして……新生連合国軍と新生魔人族軍による世界大戦が始まる日をついに迎える。
この戦い結果次第でこの世界が平和に守られるのか、魔人族に滅ぼされて支配されるのかが決まることになる―――