「行ってらっしゃいコウガ。そしてこの里は全部私たちに任せて!コウガの帰るところは絶対に守るから!」
「ああ。頼りにしてる。防衛もお前たちの復讐も全部成せるって信じてる!」
軽いハグを交わして終わり……かと思いきや、アレンが俺の頬にキスをしてきた…!
「………!」
「今はこれだけ、だから」
アレンは照れた顔で小さくそう言った。センとガーデルとソーンがきゃあと色めき立ち、ギルスもやや照れた様子で俺たちを見ていた。
「コウガ………」
すると今度はアレンの反対側にルマンドが近づいてきて……アレンがキスした逆の頬にキスしてきた……!?
「え、ルマンド……?」
俺はもちろん、アレンも呆気にとられてしまう。ルマンド本人は紅潮した頬・潤んだ瞳をした顔で俺に笑みを向ける。
「私も……コウガのこと好きだよ。恋愛的な意味で。気付かなかったでしょ?」
「あ、ああ……気付かなかった。マジで?」
「うん。はじめはアレンの応援だったけど旅や里の暮らしが続くうちにコウガのこと好きになっちゃった。
だからアレン、魔人族との戦いが終わった後はコウガの正妻をかけての勝負だからね!」
しばらく呆けていたアレンだったが勝負と聞いて不敵な笑みを浮かべた。
「ん!絶対に負けない!」
笑い合う二人を見て俺も乾いた笑みを漏らす。センたちも知らなかったーと騒いでいる。まぁ、ありがたいことだな、かわいい異性に好かれるというのは。ルマンドって美人だし。
「じゃあ、連れてくるよ」
気を取り直して、ワープアイテムを起動してサント王国へ瞬間移動する。王宮前に着くようにしておいた、そこに里へ連れて行く戦力を集合させておいたから。案の定そこには鬼族の助っ人となる戦力が集結していた。全員一か所に集めるとまとめてワープさせる。里に一瞬で大勢の助っ人が現れたことに鬼たちは大いに驚いていた。
「よし、主戦力は全員移動させた。軍の兵士たちは今もここへ行軍中だったな。俺のここでの役目はこれで終わりだ。
じゃあ、行ってくる」
「ん!生きてまた会おうね!」
アレンと短いやりとりを交わすと、助っ人たちにも声をかける。
「アレンたちのこと頼んだ」
「うん!任せてちょうだい!」
「は、はい……!」
「引き受けた」
返事を聞いて頷くとまたワープする―――俺が戦う場所、サント王国に。再び王宮前に着くとそこに今度は新生連合国軍の本隊が既に集結していた。その中にいる軍の主戦力となる奴らに声をかける。
「お待たせ。じゃあ行こうか、戦場に」
全員頷いて決戦の地へと歩を進めた。
戦場に着いてから1時間後、遠くから邪悪な気配がいくつも感知できた。大きな魔力・瘴気のにおい・殺気、そして純粋な悪の気配……。それら全てが混ざったカオスな気配を感じた。
感知してから数分後……
「前衛にいる奴らが敵軍の主戦力かと…ヴェルド様」
「ああ…全て滅ぼせ。カイダコウガは俺が殺す…!!」
新生魔人族軍が目で見える位置まで進軍してきた。その中心にいるのは魔人族「序列」級の二人。俺と同じ少年の見た目をしてるのがヴェルド、灰色のショートヘアの女がジースだったな。
そしてもう一人―――
≪お仲間を揃えてのお出迎え、礼を言うぞ。そして、この姿では初めましてだったな……カイダコウガ!≫
心胆を震わせるような不気味な声で俺に話しかけてきた魔人。その見た目は頭部…長い銀色の髪、黒色の肌、赤い瞳に黄色い眼窩。体…太い棘のようなものが両肩・腕・腿のあちこちに生えており、その背丈は2m近い。そして紫色の長いマントを羽織っている。
ひと目見て「コイツだ」と分かった。それだけあの中で異様な存在感を放っているからな……。
魔人族の現族長、「魔神」バルガ。あの軍の新たな総大将でもある。俺が倒すべき最後の敵だ……!
バルガの挨拶に応えることなく、後ろを軽く振り返って「彼女たち」に声をかける。
「じゃあ戦うかクィン……
咄嗟の指示を頼むぜ、カミラ……
「はい、コウガさん!」
「うん、皇雅君!」
『精一杯サポートします!』
『あなた方を必勝へ導いてみせます!』
今では世界最強格の兵士と言われているクィン。同じく世界最強クラスの狙撃手、縁佳。バックには二人の軍略家…カミラとミーシャ。他にも、曽根・堂丸といった同じ異世界召喚された戦士たち、ラインハルツ王国兵士団副団長・海棲族の兵士…マリス。
この軍でバルガ率いる新生魔人族軍をここで殲滅してやる!!