俺が気付いた様子を見てバルガが愉快そうに笑う。そうだ…さっき金縛りに遭ってた時、口から出てきた「黒い何か」。あれがバルガの霊体、その一部だったんだ。
いつから中にいた…?ゾンビになってから気付かないうちに?違う、俺の前にあいつは現れなかった。気配もしなかった。何も感じなかった。
なら答えは、決まってる――
「半年以上前…地底で一度死んだあの時に、死んだ俺の体に入ったということか!?
じゃあ……そのせいで俺は―――」
思わず狼狽が混じった問いに、バルガは変わらず愉快そうに笑いながら答えるのだった――
≪ このバルガが、お前を
『………っ!』
水晶玉からミーシャが声を詰まらせたのが聞こえる。俺も彼女と同じ心境だ。
たった今告げられた俺のゾンビとしての謎について。理解はしたけど落ち着かない。結局俺もモンストールどもと同じ、魔人族によって改造されたようなものじゃねーか……。
「俺を…ただの片手剣士に過ぎなかった俺なんかに、とっくに死んでいた俺に何で憑依した?ザイートやヴェルド、どの魔人族よりも、ましてや普通の人族戦士よりも弱かった俺が、何で選ばれたんだ?俺にいったいなんの価値が…」
≪俺に適合する器の条件は、負の感情…強い憎悪と殺意、復讐心、そして邪悪の心に満ちたを抱いている者であること。
その点ではカイダコウガ…邪悪の心は不適格だったが死に瀕していた時のお前が抱いていた憎悪と殺意、復讐心!あれ程のどす黒いものを宿した者はなかった!俺が蘇生させてでもお前を乗っ取ろうと思ったのだ!!≫
しかし……とバルガは嘆息する。
≪蘇生には失敗してしまい、お前は人族でも魔人族でも屍族でもない、全く別の存在...
さらに不死の存在として蘇ったお前は、お前を殺した屍族どもを見事殺し返したが、どういうわけか俺が惹かれていた強い憎悪や殺意、復讐心が薄まってしまった≫
「……………」
≪聞かせてほしいのだが、何故お前からあんな上質な負の感情が消えてしまったのだ?お前にどういう心の変化があった?そのせいでお前は結局俺の器に不適格となってしまった≫
クソみたいな質問を……それにさっきから聞いてりゃ俺を物扱いしやがって……!俺があいつの入れ物だと?ふざけてやがる…!!
「俺が誰を憎もうが殺したいと思おうが、それらの感情が消えようが、テメーには関係ねーだろうが!」
≪フム、まぁいい。それよか不死者となったお陰でほとんど苦労することなくそのレベルまで辿り着けただろう?≫
「………気になっていることがある。どうしてテメーの霊体はこの時までずっと俺の中にいたんだ?それにザイートの中にもテメーの霊体は存在していた。どういうことなんだ?」
≪そこはザイートの奴に感謝しなければな。奴の固有技能“分裂”は霊体をも対象にしてくれた。そのお陰でお前の方にもザイートの方にも憑依出来たというわけだ≫
「……そういうこと」
≪しかしまぁ……お前を器にするのを諦めたわけだが、せっかく復活させたんだ、お前がこの世界でどう動くのか興味が湧き、一部をお前の中に残した。
そのお陰で俺は愉しめたぞカイダコウガ!お前と魔人族・屍族との戦いは実に面白かった!百数年前…俺を殺しに来た異世界人どもとの血湧き肉躍る闘争のようだった!あのザイートとも互角に戦い退けた。お前程俺を愉しませてくれた人族はいまい。
礼を言うぞカイダコウガ!今度は俺が、表立ってこの世界で暴れられる。ククク...ハハハハハハハハハハハハハハハハハァ!!!≫
俺の行く末が気になったんで、ずっと俺の中に居続けた。俺が必死にモンストールや魔人族と戦っていた様を、中で霊体としてニヤニヤしながら鑑賞していたってわけか...。
......とりあえず、俺が抱き続けていた謎・疑問は解けた。
ゾンビ化した原因。バルガの行動原理。全部解けた。
で...ここから俺がやることは、まぁ今までと同じだ――
「色々教えてくれてありがとう。知らずうちにテメーを愉しませていたみたいだな。ご満悦していただき光栄だよ。だから、もう満足だろ?
あとは俺に殺されて地獄へ落ちろ!!!」
《ここから始まるのだよ、俺の本当の悦楽は!手始めにお前との闘争を愉しもうぞ!!》
やることは変わらない。このクソ魔人王は俺の邪魔をする障害だ。
だから殺す、ぶち殺す!
この世から跡形も無く消す...!!
バルガ 年齢不詳 魔人族 レベル?99(限定進化 発動中)
職業 ―
体力 ?99999999
攻撃 ?99999999
防御 ?99999999
魔力 ?99999999
魔防 ?99999999
速さ ?99999999
固有技能 怪力 瞬神速 絶牢 夜目 気配感知 存在遮断 武芸百般
魔力防障壁 見切り 魔法全属性レベルⅩ 滅魔法レベルⅩ 魔力光線全属性使用可 霊体化 憑依 陰滅 性質変換 限定進化 瘴気耐性 瘴気強化 超生命体力
超高速再生 武装硬化 魔法弱体化鎧 分裂 剣聖 武器錬成
魔人族武術・剣術・槍術皆伝