目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

「屍人vs魔神」2

 “絶脚”

 “魔剣撃”

 ――キィィィィィィン!!


 “天旋”(嵐魔法付与)

 “獄焔斬ごくえんざん

 ゴヒュウウウウウウウウ...!


 “爆絶拳ばくぜつけん

 “鋼剛槍突アイアンランス

 ――ガドウウウウウウウウウウ!!!


 “双絶拳”(雷電魔法付与)

 “獄雷魔連閃ごくらいまれんせん

ガガガガガガガガガギギギギギギギギギギギギギギン!!


 “大槌爆絶拳おおづちばくぜつけん

 “尽滅槍撃ディザスターランス

――ゴッッッッッッッッッッ......!!!



 互いの大技による激突がひたすら続く。数日前ザイートとのカウンター合戦と同じ、空気が震えて、辺りが更地となり、大陸に皹が入っていく。

 今や俺たちの戦いは、世界を滅ぼし得る天災と化そうとしていた。



 《フッッッハハハハハハ!!ファ――――――ハハハハハハハハハハハァ!!

 これだ!これこそ俺が求めて続け焦がれ続けていた次元だ!!百数年ぶりのこんな闘争に対するこの昂り!!興奮せずにはいられない!!

 最高!愉悦!快楽!!礼を言うぞぉ!!こんな気分にさせてくれたことを!!

 カイダコウガアアアアアアアア!!!》

 「ちっ、戦いの最中にうるせぇ...。その幸せな気持ちのままとっとと地獄へ逝けクソ野郎」


 “聖嵐竜水瀑布プロメスドラグーン


 「聖水」を纏わせた、竜の形態をした嵐と水の災害を模した複合魔法を遠慮なくぶつける。が、バルガが放った闇の「極大魔力光線」に相殺され、一瞬で消滅した。奴の魔力の残滓を躱しながら縁佳たちのことを少し気にかける。さっきの大技の激突の余波をくらってなければ良いけど。

 しかし、その僅かな不注意が命取りとなった――


 《――そうだ、ここまで愉しませてくれた礼に、特別なプレゼントをやろう》


 「っ!?テメー一瞬で...」


 《ハァッッ!!!》


 ト.........ン―「―――!?」


 「危機感知」で緊急回避する間もなく俺に接近したバルガが、奴特有の色をした魔力が灯った人差し指で俺の額を突いた。

 その瞬間、俺の全身が強く光り、俺の中にあった何かが出て行く感覚がした...!

 それは数秒のことか、あるいは数分、数時間にも感じられた。気が付けば俺は膝を着いていた。



 「......何を、した!?」


 脂汗を大量に流しながら問うのが精一杯の俺に、バルガは魔剣の切っ先をこっちに向けながら、

 全く予想できなかった内容を、告げる――



 ≪特殊技能 “性質変換”で、。お前がいた世界にの言葉で表すなら、“人間”と呼べば良いか?≫



 ≪ つまりたった今お前は―――生きた“人間”へと本当の意味で蘇生したのだ ≫



 ............。

 マ......ジ......で??


 《よく見てみろ、自分の顔を、体を。生前の肌の色は灰色などではなかっただろ?》


 鎧に挟まっている割れた水晶玉の破片を鏡にして自分の姿を見てみる。体中に走っていた線が消えている。目は二重瞼の黒い瞳に白い眼窩。肌はアジア人特有の黄色人種のそれ……。

 マジだ。大マジだ...。



 俺は―――生きた人間に戻っていた...!



 《さて、人間に戻ったことで、お前に良いことと悪いことが今から降りかかることになる》


 あまりの衝撃に呆然としている俺にバルガは面白そうに話を続ける。


 ≪まずは、良いことについて...俺や不死の存在にとって聖属性は毒みたいなもの。だが人間になった今なら、回復魔法を使わずとも手足が爛れて溶けることはあるまい。よかったな。お前の場合それは“聖水”と呼ぶのだったな≫


 言われてみれば、「聖水」を試しに素手でつくっても、溶けない…。生きたこの体には無害だから。


 ≪でだ、悪いことについてだが…。不死の性質が消えた今、お前の体力・魔力は共に有限となった。それにより明確な死も存在するようになった。屍人では無くなったことで、いくつか固有技能が消えたはずだ。五感の意図的な制御、傷の自動修復、相手の固有技能を奪う能力…消えたのはそんなところではないのか?≫


 奴の言う通り、「五感遮断」「自動高速再生」「感染」「過剰略奪」「早食い」が消えていた。俺にゾンビとしての力はもう使えない……。


 ≪そういえばお前は、己の脳のリミッターを解除して肉体の限界以上の力を発揮できるそうだな。痛みを感じない、これ以上死ぬことも無いから可能となっていたその荒技。いやはや恐ろしく脅威だ。あの力でこの俺にここまで食い下がったのだからな。



 ここで問題だ。今のお前がそんな荒技を発動したままでいると、いったいどうなると思う?≫



 「―――――――!!!」


 ブシャアアアアアアアアアアアアア!!!



 咄嗟に自分の体に手を当てるのと、全身...特に頭から夥しい血が噴き出したのは同時だった。


 「……!がは、ぁあ……っ」


 口から血の塊を吐いた俺は、力無く地面に倒れて、意識が遠くなって―――


 ―――

 ――――

 ―――――

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?