さーて、気を取り直して、と。
やってきました
実は私ってばお母様の実家
うーん、でもなーんか大事なこと忘れてる気もするのよねぇ。まっいっか。思い出せないなら大した事ではないんでしょ。
それよりも今は目の前の事よね。
まるっと京都。さあ楽しむわよ!
「麗ちゃん!」
「ローちゃん!」
ローちゃん、おひさー。
リムジンで迎えに来てくれたんだ。
「遠路はるばるよぉ来たのぉ」
「来てあげましたとも」
久条のご老公と抱き合って高笑い。わーはっはっは。
「れ、麗子様、その方はもしかして!?」
「久条家ご当主のご老公様では!?」
「ええ、そうですわ」
「(椿さん、ご老公はとても気難しい方だって噂よね?)」
「(気を付けて楓さん、ご老公に睨まれたら家ごと潰されかねませんわ)」
「(ひぃぃぃ!)」
なんか楓ちゃんと椿ちゃんが真っ青になってるけど。どうしたん?
二人とも具合でも悪いんか。せっかくの修学旅行なのに心配だわ。
「さあ、楓さん、椿さん、参りますわよ」
「「は、はい!」」
自由時間になり足がいるなと呼び出したら、二つ返事で駆けつけてくれた。どこでも好きな所に連れてってくれるって。良い人だ。
まずはローちゃんが予約してくれた茶室で一服よ。
「まさか久条のご老公を使いっ走りにするなんて」
「やっぱり清涼院はおかしい」
滝川と早見が顔を引き攣らせているけど。顔面神経麻痺なんじゃね?
いい耳鼻咽喉科を紹介すっぞ。
「良かったぁ、僕ら清涼院さんの班じゃなくて」
「粗相でもしたらと思うとゾッとするよ」
「ああ、ご老公と一緒なんて寿命が縮まるよな」
なんです? 迂闊君と粗忽君も私と一緒に行きたいんか?
ローちゃんが余裕あるから連れてってもいいってよ。
なんで二人とも首を必死に横に振るの。もげるわよ。
仕方ないので班の女の子達と五人で京都巡り。ぜーんぶローちゃんに予約してもらって悠々自適な観光だったわ。色んなお店も教えてもらって有意義だったし。楽しい楽しい一日でした。
ん? みんな死んだ魚の目をしてるけど大丈夫?
修学旅行二日目――今日は数グループ合同で鴨川へゴー。
「ごめんなさい。今日はご老公も用事があって車を出せないらしいの」
残念無念。今日はアッシーがいない。だけど、さすがに二日連続でご老公を引っ張り出せないものね。
「よ、良かった」
「今日は普通に観光できる」
なのに同じ班の子達がホッとした顔してる。
「せっかくの京都ですからお昼は納涼床で涼みながらお昼を頂きましょう」
京都の夏の風物詩と言えばやっぱこれよねぇ。ホントは貴船の
「賛成ですわ」
「私、
「私もですわ」
私もやでぇ、椿ちゃんと楓ちゃん。
ふふっ、二人とも本心から楽しみといった感じの笑顔ね。良かった。昨日より顔色が良い。体調も戻ったみたいね。
「それじゃあ清涼院さん、今日は一日よろしくね」
にっこり腹黒笑いを浮かべる早見。一緒の数グループの中に滝川と早見が混ざってやがった。
えー、やだなー。
聞いた話だと滝川のヤツ、昨日一日中くっらーい顔で街中を徘徊してたらしい。慌てて追いかけてた早見の姿も目撃されている。
早見のこのドス黒い笑顔。どうせ私に滝川の面倒を押し付ける算段なんやろ。
「滝川様と早見様とご一緒できるなんて夢みたい」
「お二人とも女子の班からのお誘いは全て断られているそうですわよ」
「やっぱり麗子様の班だからよね」
「さすが麗子様です」
でも、同じ班の女の子達がキャーキャー喜んでるし今さら断れんか。この子達にもたまには美味しい目を見せてあげないと反乱を起こされるかもしれないしね。
「ほら滝川様、お立ちくださいませ」
「……清涼院か」
「さっさと行きますわよ」
「ああ……」
のそのそっと立ち上がって滝川がマイクロバスに乗り込む。まったく手のかかるヤローだ。
「やっぱり清涼院さんはなんだかんだ言いながら面倒見が良いよね」
「人を良いように使わないでくださいまし」
「いや、本当に助かってるんだ」
早見がどこか疲れた顔をしている。こいつも夏休みからずっと滝川に振り回されているみたいやからな。
「僕一人じゃ和也を完全にはフォローできなくって」
「ですが、滝川様はあまり私の言葉には耳を貸してくださいませんわよ?」
むしろ私の言うことには耳を貸さないもんな。
「今は素直に従っていたでしょ?」
「まあ、そうですわね」
「だいぶん落ち込んでいるからね。自分と対等の立場にある異性の意見には反発が少ないんだと思う」
まったく難儀なやっちゃ。
「だから、できれば今日は一緒に行動して欲しいんだ」
「……貸し一つですわよ」
ホントは側にいたくないけど、早見にでっかい貸しが作れるしな。ふっふーん、今日一日くらいは相手してやろうじゃないか。
どうせ川床でお昼食べるだけだし、滝川もそんな問題は起こさんやろ。