「さてそれでは話を聞こう」
外の丸太のテーブルと椅子に驚きながら、ライド・エイデンはおずおずと座り、話し出した。
「自分は殿下の遊び相手として、四歳くらいの頃から、親に連れられ、よく通っておりました」
「君一人だけか?」
「全部で五人。今日周囲に居たのが皆そうです。七歳の頃から五年間、一緒にデターム先生の講義を受けることになりました」
「君から見たデターム氏の印象は?」
「楽しい先生でした。陽気で、しかも自分達子供がなかなか理解できないことに対しても辛抱強かったです。夏には林の方で木々につく虫や、狩りに出た時に有益な植物や毒キノコの話もしたことがあります。狩りにはまだまだ出ることのできない歳だったので、早くその歳になりたいな、と思ったことを覚えています」
「一つ聞きたいが、その時、王子の母君はどうしていた?」
「セレジュ様はあまりご一緒ではありませんでした。国王陛下のお呼びだ、ということが多いらしく。クイデ様もまだお小さい頃でしたから、セイン様は自分達とデターム先生と居る時間が一番多かったと思います」
「信頼していたのだな」
「はい!」
ライド・エイデンは即座に答えた。
「だが十二歳からは、セイン王子一人だけの授業になった。それからも遊びには来ていたんだろう?」
「はい。そろそろやはり、興味を持つ部分が異なってくるということと、王族の学問と貴族のそれとは違うということで、離されたのだと思うのですが。それでも会えば乗馬やチェスやそういう遊びをしていました。あと、ダンスの練習とかは一緒にすることがありましたが」
「デターム氏とその頃会うことは?」
「大概一緒に居ました。ずっと王都に居るものだと思っていましたが、郷里に戻ると聞いて、皆別れを惜しんだものです」
「郷里のことは聞いたことはあるか?」
「トアレグ国境に近いところだとは」
「で、君としては何がおかしいと思う?」
「令嬢に対する態度が」
ずばり答えた。
「君は、君が王子だったら、私に対しどういう態度を取るのが良いと思う? このチェリ王国のためには」
「無論、内心がどうあろうと、少なくとも人前ではそれを包み隠すべきだと思います。さもないと、貴女が帝都にどう伝えるのか、判らないですから」
「他の友人達と、そういう話はしているか?」
「……セイン様があまりにも堂々とそうなさっているので、言えない、というのが現状です。でも、正直令嬢がこちらにいらっしゃるまで奇妙さに気付かなかったのです。自分等は、去年からセイン様が急にどうしたんだ、と思ってはいるんですが…… もしかして、それ以前からおかしかったんでしょうか」
「さあそれは判らない。ところで君は王子のことは大事な友と思っているか?」
「はい。奇妙ではあると思ってはいますが、それ以外の点では、自分等には昔と変わらず良い友です。この先王位に就いても就かずとも、友で居たいと思っております」
「他の取り巻き達は?」
「どうでしょう」
「君がもし、セイン王子に悪い結果になって欲しくない、と思うなら、これからこちらに情報を流してくれないか?」
「本当に、最悪の結果にはなりませんか?」
「状況如何だが、それでも可能性は高い。とりあえず学友だった彼等の名等を詳しく」