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「『暴露チャンネル~匿名探偵』の配信の件といえば、分かるか?」
「ええ、まあ」
秋羽の言葉に、絵里は視線を逸らしながら頷いた。
「なら話が早い。あの配信で、一番最初に暴露された女子生徒、
それがつい先日に起きた事件だ。
「そして彼女の次のターゲットが保坂絵里さん、君だったわけだが……」
『匿名探偵』こと
最初に彼がチャンネル内で暴露した中上若葉は自宅マンションから飛び降り、今は意識不明の重体。
そして次に暴露した保坂絵里が、彼が言うには自殺するらしい。
来栖が言うには初日に予告程度の軽めの情報を流し、視聴者の興味を引き、そして昼間のうちに拡散させて、その日の夜に大本命のネタを暴露する。
そして保坂絵里は予告動画内の暴露と、本命のネタの暴露の被害を受け、今は自宅に引きこもっている。
――あいつの言葉を、本当に信じていいのか?
秋羽はふと灰崎来栖の言葉を思い出しては、顔をしかめた。
彼の話では、次に保坂絵里が自殺するらしいが――観察眼の鋭い秋羽の目から見ても、彼女はそういうタイプには見えない。
精神的に追い詰められてはいるが、自殺するまではいかない。
何故断言できるかというと、彼女は自分が悪いとは思っていないからだ。
そういうタイプは死んで逃れるような事はしない。
あるとしたら、「意味のある自殺」をする事で世の中に訴える場合だが、彼女の性格上、死んで冤罪を晴らすよりも、生きているうちに助かりたいタイプに思える。
ゆえに、ネットの誹謗中傷や、世間からの評判を苦にして自殺はない。
あるとしたら――
「保坂絵里。お前に訊きたい事がある」
秋羽よりも早く、茉莉が彼女に問うた。
「怪しい大人の二人組がお前を尋ねに来ていないか?」
「え?」
「片方は男、もうひとりは不明だが……」
「それなら……」
絵里がゆっくり秋羽と茉莉を指差した。
「今、目の前に」
「そうか。帰るぞ、白石」
「ご、ごめんなさい! ちょっと言ってみたかっただけです」
立ち上がりかけた茉莉に、縋るように絵里が叫んだ。
――全然元気じゃねえか。