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「はい、こっちは今の所、シナリオ通りって感じッスね」
『影』は、電話越しに言った。
「え~、そこまでする必要あります? アリスお嬢様は、ちゃんと役目を全うしたッスよ。愛する妹の弔いのために、最後の最後までしっかりお姉様役を演じ切ってみせました。あーあ、あの人、超美人だったから、ショック~。どうせなら『観音祈願型』じゃなくて、『逆玉の輿型』にしてほしかったッス~……ちょっ、冗談ッスよ。もう、本当に冗談通じないッスから……ええ、分かっているッス。それじゃあ、もうちょっとしたら迎えにいくッスから、またカフェでのんびりしていてくださいね……くれぐれも、またどこか行かないでくださいッスよ……いいですか? 白石サン」
『影』は電話を切ると、物陰から、取調室の様子を伺う。
「さて、こっちの白石さんは、どうするかな? あの人の息子なら、もっとイカれた戦法で挑まないと……一生、パパに勝てないままッスよ?」
*
6月9日、午後3時。
場所は『自白班』の部屋。
ソファに
そして初夏の正面に
「じゃあ、自殺ってこと?」
「ああ」
初夏の問いに、茉莉は短く答えた。
「遅延性の毒だな。未成年の取り調べは、あらかじめ時間を決められる。そこから逆算したんだろう」
「じゃあ、最初から自殺するつもりだったんだ……」
初夏がそう言った後、秋羽は項垂れるように頭を抱えた。
「あっ」
「いい加減に切り替えろ」
自分の失言に気付いた初夏とは逆に、茉莉は秋羽を腕で突っつく。
「アカちゃん、それは流石にヒロイン失格発言だよ。ほら、アキ君~元気出して」
「けっ」
「こら、アカちゃん!」
茉莉が分かりやすく悪態をつくと、咎めるように初夏が言った。
「いえ、大丈夫です。それに、赤西の言う通りだ……切り替えないと、また新しい殺人が起きる」
「え?」
その場にいなかった初夏はキョトンとした顔で首を傾げた。あざとい。
「そういえば、そんな事を言っていたな」
「多分、これは『鮮血ずきんちゃん事件』の逆です」
「逆っていうと……えっと、どゆこと?」
「えっと、『鮮血ずきんちゃん事件』は、被害者による連鎖自殺を連続殺人に見せかけた事件だったじゃないですか」
「まあ、そうだったね。加害者も被害者も、全員が同じグループだったね」
「……だから、今回はその逆。これは、姫崎四季を取り巻くグループと関わりがあるけど、その中には入れなかった奴らが起こす事件……もし連鎖自殺が『鮮血ずきんちゃん事件』なら、こっちは『わらしべ
秋羽の言葉がいまいち分かっていない様子で、初夏はぽかんとした顔のままだった。
――まあ、そうなるよな。
「順をもって説明しますよ。多分、今回の事件は、あと四人、確実に殺されると思いますから」