9-2
所変わって、「自白班」の部屋。
刑事課である茉莉は被害者と会ったこともあり、早々に呼び出され、部屋を去った。
逆に、同じく会って話したが、刑事課ではない
――『ひとまず、状況を確認したい』
――『
――『白石、お前はここで待機していろ』
――『犯人の特定がまだ済んでいない以上、現段階でお前にできることは何もない』
そう言って、茉莉は重い空気だけを残して現場に直行した。
――どうする、どうする、どうする!?
秋羽はソファに座ったまま、頭を抱えていた。
――保坂絵里が殺されるには、早すぎる……だって、あの子は……
――いや、そもそも俺の読みが間違っていた?
――なら、今回の殺人の理由は別にあるのか?
「ねえ、アキくん」
その時、
いつもなら、秋羽の心臓の鼓動に混じった母の優しい声色が秋羽を優しく包み込むが、今回はそれより早く初夏が動いたからだ。
しかしその声色は母のものとは違い、どこか冷めていた。
「なんか色々、意味もなく考え込んでいるみたいだけどさ~……結局、何だったの?」
「何って……」
「だから、アキくんの推理だよ。なんかアカちゃんが呼び出されて、有耶無耶になっちゃったけど……元々はアキくんの推理を聞くために集まっていたんじゃん」
「そうですけど……でも、俺の読みだと、保坂絵里が殺されるのはもっと後でした」
そもそも、つい数時間前に
――まさか同じ日にやるとは思わなかったし……
いや、待てよ。
――何で、俺は事件を被害が起きた瞬間で考えたんだ?
――もし、この事件が被害者ではなく、加害者が中心に動いているのなら、加害者のアクションとしては、時間通りになるんじゃ……
「アキくん? ねえ、聞いてる?」
「そうか、やっぱり……」
秋羽は顔を上げて立ち上がる。
「ちょっと!」
初夏が秋羽の肩を強引に掴む。
「初夏さん……」
「初夏さん、じゃないよ! だから、自己完結しないで、初夏たちにも分かるように言ってってば。アキくんがそんなんだから、
初夏に言われて、茶園のいる席を見ると、濡れたタオルを頭にのせたまま、疲れきった顔で座っていた。
昼間から立て続けに叫んで疲れたのだろう。もう今日はそっとしておこう。
「……白石」
その時、枯れた声で茶園が言った。
「好きにやれ」
「!」
「『自白班』の存在意義を思い出せ……お前なら、できる」
「そう、でしたね」
秋羽がすっきりした顔で初夏を振り返る。
「じゃあ、推理という想像を始めましょうか」
「え? なに、急に……こわ」