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第50話

11-6


 翌日。

 今回の事件「保坂絵里ほさかえり殺害事件」の容疑者、鈴木舞すずきまい

 最初に中上若葉なかがみわかばが自殺。そうなるよう仕向けた人物が犯人になるなら、世間を煽って誹謗中傷するよう仕向けた灰崎来栖はいざきくるすが犯人となる。

 そして、その次に保坂絵里が殺害されたのなら、順番でいうと2番目の事件にあたる。


 いや、情報に惑わされるな。


 ――今回は俺一人で全てをこなさないといけない。


 今まで情報を整理し、収集してくれた桃瀬太郎ももせたろうはいない。足で情報を入手してくれた緑区正義みどりくまさよしも、来栖が発砲された時に該当する発砲エリアにいたため、取り調べの最中で接触不可。

 赤西茉莉あかにしまつりも、正義がいないことでやる事が増えて秋羽あきばのサポートには回れない。

 ――それでも、やってみせるさ。

 ――……一人でも、独り、でも……

 ――それが、お母さんの心臓を貰って生き延びて、その母さんを幻想として縛り付けた俺にできる、唯一の償い……


 ――だから、見ていてください……母さん。


 心臓の鼓動がどくんと鳴った。

 しかし、もう鼓動に混じって聞こえた母の声はしなかった。

「……行くか」

 秋羽はひとり、取り調べ室へと向かった。


        *


 容疑者:鈴木舞。

 罪状:殺人。

 時間:無制限(未成年の容疑者からの時間の指定なし)。


 ――無制限? 一体、何を考えているんだ……

 菊乃きくのは時間を稼ぐつもりだったのか、あらかじめ時間を短く設定していた。

 他にも、ボロを出さないために1時間くらいで設定して、決定的な自白をしないようにしてくる子供は多い。

 ――無回答じゃなくて、あえて無制限と回答してくるあたり……こいつ、挑発しているのか?

 前回はそれで自殺している。

 もう同じことは繰り返さない。サポートしてくれる仲間がいない今、自殺も嘘も全部自分で防がないといけないのだから。

「こんにちは~」

 秋羽がそんな事を考えている中、取り調べ相手である舞が到着した。

 ――13時ちょうど……0.1秒のずれなく、到着するとは……

 金髪に、濃いめのメイク。重そうな付け爪。

 見た目はギャルだが、急いで取り繕ったようで、自分の趣味ではないように見える。

 ――赤西から聞いた通りだな。

「ちゃい~ッス! 刑事さん、今日はよろ~」

 ギャル演じるにしてもちょっと世代が古い。

「それでは取り調べを始めるが……」

「あ、それなんだけど~……アタシ、ちゃんと自白したよね? 保坂絵里をコロコロしたのは、アタシだよ~って。なのに、何で取り調べしないといけないの? マジ、意味不~」

「お前の隠し事を全部あばくためだよ、平成偽ギャル」

「偽ギャルとかひどす~」

「お前、それギャル語じゃなくて。オタク語だぞ」

「ぐへへっ、刑事氏、分かっておるでありますな」

 やっぱり古い、色々と。



「それで、鈴木舞さん。君が、保坂絵里を殺害したって話だけど……」

「うん、そう! アタシがやってやったの」

「とりあえず自供はしているから、聞くけど……理由は?」

「……ムカついたから」

 少しの間の後、舞は言った。

 少し低くなった声や、暗くなった瞳から、これは彼女の本心だと伝わってきた。

「小学校でいじめられた時も、まるでクラスメイトや学校が悪いみたいな態度とって、ずっと被害者面していたけど……元はといえば、保坂絵里自身が起こした問題のせい。なのに、いつまでも被害者面して、悲劇のヒロイン気取りで……いつだって、あいつは誰かのせい。だから、嫌いだったんだよ、ずっと」

「ずっとって……」

「アタシは保坂絵里と同じ小学校で、元クラスメイト……あいつに、



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