「おーおー、派手にやってるねぇ」
激しい銃撃の音が響く中、潜入班の三人は小次郎の下へと急ぐ二人を追跡していた。
「くそ! 急がねぇと……」
「で、でも、もし断られたら……」
二人は走りながら策を練っていた。
策と呼べるものかすら怪しかったが、二人は唯ひたすらに自分達が生き残る道を模索していたのだ。
「馬鹿野郎! 殺して首だけ差し出して織田に降れば俺たちの命は助かるだろ!」
「そ、そうだな! 別に説得する必要なんか無いな!」
二人の敵の会話を聞き、時田は怒りを覚える。
それを察知した康高は時田をなだめる。
「……好き勝手に言ってくれて……もう殺そうかな」
「おいおい。頼むから落ち着いてくれよ? 時田殿に殺すとかって言葉は似合わないぞ?」
そこで、時田は自分の発した言葉に気が付く。
(私……今さらっと殺すって言った……あれだけ人殺しを嫌ってたのに……時代に順応して来てる……それとも……)
等と考え事をしていると、二人の敵は足を止めた。
それに気づかず、時田は先頭を歩く康高にぶつかる。
「むっ」
「どうした? しっかりしてくれよ?」
「……すいません。少し考え事をしてました」
すると、二人の敵は戸を開ける。
「小次郎様! 敵襲です!」
「奇襲によって我が方は壊滅状態……どうか指示を!」
二人はそう言いつつも、ゆっくりと刀に手をかけ始めていた。
潜入班の三人は目的地に着いたことを理解する。
三人は頷きあい、部屋に突入する。
「おら! 武器を捨てろ!」
「抵抗は無駄だ!」
康高は刀を構え、孫次郎は二丁の単筒をそれぞれ敵へ向ける。
フリントロック式ピストルは忠広だけではなく、他にも数名所持している。
「な……」
「つけられていた……のか?」
二人はその場に膝をつき、武器を手放す。
時田はその二人の間にいる、痩せこけた男の元へ近寄る。
「久しぶりですね。小次郎殿」
「と……時田殿……ですか?」
フラフラと立ち上がり、時田の顔をまじまじと見る。
身体中を怪我しているのか、足を引きずりながら時田にちかづいていく。
良く見れば、腕や足には痣があった
「っ……」
その弱々しい動きから、虐待を受けていたと三人は悟り、康高は怒りをあらわにした。
「こいつら……やっぱ殺すか……」
「いえ、そうしたいのは山々ですが、貴重な情報源です。縛っておきましょう」
すると、時田の目の前まで来た小次郎はその場に膝をつき、頭を深く下げた。
「ここに来たということは……事情もすべて掌握しているのでしょう……何も申し開きは致しません。最後に時田殿の顔を見れただけでも幸せです。どうか、首をはねてください」
「っ……そんな事……」
「裏切り者への制裁を示さなければ……組織として成り立たなくなります……ここはどうか……この愚か者の首を……」
頭を下げ続ける小次郎に、時田は。
キレた。
「……ふん!」
思いっきり小四郎の顔面を蹴り飛ばす。
「はぁ!?」
「と、時田殿!?」
これにはさすがの康高と孫次郎も慌てる。
かなりの距離を蹴り飛ばされた小次郎は鼻血を垂らしつつ、時田の顔を見る。
「こ、これは……」
「今のは、あなたに対して『怒り』ました! そしてこれで『怒る』のはもう終わりです! これからは『説教』をします! 正座して、話を聞きなさい!」
時田は小次郎を指さし、そう言い放った。
周りの者は、未だに状況がつかめていなかった。