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第66話 里帰り

 時田達はまず道三に味方している明智城へと向かった。

 他の平松商会の面々は、義龍がすぐには動けないように妨害工作を繰り広げていた。

 兵糧の略奪、焼き討ち、街道の破壊や野盗に見せかけての町への襲撃。

 時田の指示により、美濃の各地で暗躍していた。

 それの対処もあり、難なく時田、小次郎、康高、そしてお冬は明智城へとたどり着いた。

 あらかじめ明智城には知らせてあり、城門をくぐるとそこには明智光安がいた。


「おお! 時田! 久しぶりだな! 元気にしておったか! また神隠しにあったと聞いたが……うむ。元気そうだな!」

「光安様。お久しぶりです。話は聞いているようですね。何も便りをよこせず、申し訳ありません」


 時田は頭を下げる。


「よせよせ。仕方の無い事だ。おお、それよりもすぐにでも十兵衛に知らせてやらねば! そうだな……お里の部屋で待っておれ。久々にゆっくりと話すが良い。十兵衛もすぐに呼んでくる」


 光安はそう言うと、すぐさまその場を後にする。


「では行きましょうか」

「おう」


 時田の先導で明智城を進んでいく。

 懐かしさに心躍らせながらお里の部屋を目指す。


(……もう大分歳離れちゃったか……どうなってるかな、お里)


 時田達はお里の部屋の目の前にたどり着く。

 戸は閉じており、時田は深く深呼吸をする。


「……よし」


 時田は勢いよく戸を開ける。


「お里! 久しぶり! ……あれ?」


 しかし、部屋には誰もいなかった。

 キョロキョロとあたりを見渡しても誰もいない。


「……留守、か」

「どうしますか? ご友人なのでしたらお探ししたほうが……」


 お冬の問いに、時田は少し考えてから答える。


「……いや、十兵衛様と入れ違いになっても申し訳無いので待ちましょうか」

「了解しました」


 四人は部屋へと入り、適当な場所に座る。


「そのお方は時田殿と同い年だとか? しかし、神隠しにあわれていた期間を考えると、既にそれなりに歳が離れているのでは?」

「うん。小次郎君の言う通り……というか、思ったけど……小次郎君ももう歳上か……君とは呼べないね」


 時田がそう言うと小次郎は少し笑い、返す。


「いえ、変わらずそうお呼びください」

「そう? じゃあそうさせてもらうね」

「時田殿。俺ももう少し崩した呼び方にしてもらっても良いのだが……」

「康高殿。うるさい。黙って」


 時田の笑顔で康高は黙る。

 すると、外から足音が近付いてくる。

 それは複数で、男の話し声が聞こえてきた。


「お。来たな」

「十兵衛様!?」


 時田はウキウキで部屋の外を確認しようとする。


「……なんか複雑だな」

「ええ。まぁ仕方が無いでしょう数年ぶり……いえ、時田殿からすればそこまででも無いのかもしれませんが」


 すると戸が開けられる。


「十兵衛さ……」


 すると、時田は勢い良く頭を叩かれ、良い音が響く。


「何故何も連絡をよこさなかった! 馬鹿者め! 道三様もお里も心配しておったぞ! このような状況になったのも元はと言えばお主が……」


 久々に会った光秀は、激怒していた。

 その様子を見て、時田は思う。


(やっぱり……正徳寺の記憶は正しかったか……まぁ、反省しないとな)

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