時田達はまず道三に味方している明智城へと向かった。
他の平松商会の面々は、義龍がすぐには動けないように妨害工作を繰り広げていた。
兵糧の略奪、焼き討ち、街道の破壊や野盗に見せかけての町への襲撃。
時田の指示により、美濃の各地で暗躍していた。
それの対処もあり、難なく時田、小次郎、康高、そしてお冬は明智城へとたどり着いた。
あらかじめ明智城には知らせてあり、城門をくぐるとそこには明智光安がいた。
「おお! 時田! 久しぶりだな! 元気にしておったか! また神隠しにあったと聞いたが……うむ。元気そうだな!」
「光安様。お久しぶりです。話は聞いているようですね。何も便りをよこせず、申し訳ありません」
時田は頭を下げる。
「よせよせ。仕方の無い事だ。おお、それよりもすぐにでも十兵衛に知らせてやらねば! そうだな……お里の部屋で待っておれ。久々にゆっくりと話すが良い。十兵衛もすぐに呼んでくる」
光安はそう言うと、すぐさまその場を後にする。
「では行きましょうか」
「おう」
時田の先導で明智城を進んでいく。
懐かしさに心躍らせながらお里の部屋を目指す。
(……もう大分歳離れちゃったか……どうなってるかな、お里)
時田達はお里の部屋の目の前にたどり着く。
戸は閉じており、時田は深く深呼吸をする。
「……よし」
時田は勢いよく戸を開ける。
「お里! 久しぶり! ……あれ?」
しかし、部屋には誰もいなかった。
キョロキョロとあたりを見渡しても誰もいない。
「……留守、か」
「どうしますか? ご友人なのでしたらお探ししたほうが……」
お冬の問いに、時田は少し考えてから答える。
「……いや、十兵衛様と入れ違いになっても申し訳無いので待ちましょうか」
「了解しました」
四人は部屋へと入り、適当な場所に座る。
「そのお方は時田殿と同い年だとか? しかし、神隠しにあわれていた期間を考えると、既にそれなりに歳が離れているのでは?」
「うん。小次郎君の言う通り……というか、思ったけど……小次郎君ももう歳上か……君とは呼べないね」
時田がそう言うと小次郎は少し笑い、返す。
「いえ、変わらずそうお呼びください」
「そう? じゃあそうさせてもらうね」
「時田殿。俺ももう少し崩した呼び方にしてもらっても良いのだが……」
「康高殿。うるさい。黙って」
時田の笑顔で康高は黙る。
すると、外から足音が近付いてくる。
それは複数で、男の話し声が聞こえてきた。
「お。来たな」
「十兵衛様!?」
時田はウキウキで部屋の外を確認しようとする。
「……なんか複雑だな」
「ええ。まぁ仕方が無いでしょう数年ぶり……いえ、時田殿からすればそこまででも無いのかもしれませんが」
すると戸が開けられる。
「十兵衛さ……」
すると、時田は勢い良く頭を叩かれ、良い音が響く。
「何故何も連絡をよこさなかった! 馬鹿者め! 道三様もお里も心配しておったぞ! このような状況になったのも元はと言えばお主が……」
久々に会った光秀は、激怒していた。
その様子を見て、時田は思う。
(やっぱり……正徳寺の記憶は正しかったか……まぁ、反省しないとな)