「十兵衛様! いつの間に合流していたんですか!?」
時田達は明智軍の存在を確認すると、すぐさま平松商会らの下へと向かい、軍に合流した。
そして、明智光秀に声を掛けるのであった。
「いや、平松商会の人間から戦の話を聞いたのでな。我等もすぐに動けるようにしておったのだ。そして、足の速いものを厳選し、駆けつけたというわけよ」
「うむ。勿論儂も許可している。十兵衛にだけ良い顔をさせるわけには行かぬからな」
光安が大きな声で笑う。
「大桑城へと参ろうとしていた所、この軍に出くわしてな。事情を聞き、それならばとこちらの軍に合流したのよ。いやぁ、久々に疲れたわい」
「まさか、光安様自らがお働きになられたのですか!? そのような事をなさらずとも良かったのに……」
「あぁ。儂もそう言ったのだがな。叔父上がどうしてもと言って聞かなかったのだ。全く……」
ガハハと笑う光安。
それを少し呆れながらに見る光秀。
そんな二人の存在は、時田にとっては想定外であったが、非常に頼もしい存在であった。
「さて、時田殿。久々に明智殿らと話せるが楽しいのは分かるが、状況の報告をしても良いか?」
「平松殿。そうでしたね。お願いします」
時田の返事を聞き、平松は頷く。
「現在、進軍経路の整備は完了。道三様の軍勢もすぐそこまで来ている、後は我々の陽動が開始されれば道三様も一気に動き始める筈だ。稲葉山城の動きが分かる場所で待機している」
「分かりました。なら、さっさと動き出しましょう」
平松は頷く。
「よし! 皆、疲れているのは分かるが急ぐぞ!」
数時間後。
時田達は稲葉山城南側に布陣を完了する。
ここまで来ると、流石に義龍にも気付かれ、敵もある程度出陣してくる。
城外にて、両軍は対峙する。
「流石に全軍は出て来ないか……義龍も警戒しているようだな」
「とはいえ、兵力的には確実に我々が劣っておりますが……叔父上。如何なさいますか?」
「ふ……そこは、儂の出る幕では無い」
光安は時田のいる陣を見る。
「この戦、駆けつけることが出来た我等の手勢は二百五十のみ。やはり、戦の中心となるのはあやつの手勢よ」
現在、義龍は千五百の兵を出してきていた。
城にはまだ三千近い兵が残されており、時田達としては出来るだけ敵を引きずり出したいところであった。
つまり、倍の敵に対して優勢を維持しなければならないのである。
「さて、時田はどのような差配を見せてくれるのか……しかと見極めさせてもらうとしよう」
「ええ。叔父上も、あまり無理はなさらないように」
明智時田連合軍、七百五十。
対する義龍軍は千五百。
史実には無い稲葉山城の戦いが今始まる。