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第51話 九州征伐 開戦

「な、何だ、あれは!」


 九州征伐軍は現在の大分県にある臼杵城を最初の目標とし、攻撃を開始した。

 が、代わりの総大将となった長宗我部盛親の眼には柵、土塁、堀が張り巡らされた沿岸がうつっていた。


「殿!如何致しますか!?」

「……我々がここで引けば薩摩で戦う島津殿に兵が向けられる。さすれば、ひとたまりもないだろう……。小早川殿にも顔向けが出来ん……。」


 長宗我部盛親は刀を抜き、敵へ向ける。


「全軍、上陸せよ!臼杵城を落とし、黒田征伐の第一歩とするぞ!」




「……敵は長宗我部盛親か。」


 小早川秀秋を失った豊臣方は長宗我部盛親を総大将に作戦を継続。

 しかし、如水の策に嵌っていた。


「ご報告申し上げます!」

「うむ。」

「敵勢、海中の槍に突入し、多数の船が沈んでおります!」


 如水は頷く。


「……未来の知恵か。流石だな。」


 小野寺勘助は未来、第二次世界大戦で行われたノルマンディー上陸作戦に着想を得た。

 戦車の侵攻を阻むチェコのハリネズミ等を元に勘助が考案したのが海中の槍である。

 干潮時に穂先が見える程度の高さに槍、もしくは先端を尖らせた木材等を設置する。

 九州征伐軍が進行する時は潮が満ちる時なので穂先は隠れるが、波の影響で穂先が船底に突き刺さり浸水する。


「征伐軍がみるみるうちに沈んでいくわ……。そして……。」


 命からがら船から脱出し、上陸した兵達は……。


「く、くそ!何だこの柵は!この堀は!まるで、城じゃないか!」


 兵達の眼の前には堀と柵が現れる。

 堀の深さは低いが、海から上がって来た兵達からすれば絶望感は計り知れない。

 そして。


「放て!」


 堀を突破しようとした堀に侵入した敵は階段状に二段に積まれた土塁から火縄銃で狙われる。

 二段に積まれた土塁は防衛側が姿を隠し、敵の意表をつくのに充分であった。

 そして、敵は尽く討たれていく。


「しかし、些か時が足らんかったな。柵も全てを覆えていない。海中の槍も全面には敷けなかったが……。」


 如水は城中から敵を見る。


「……勝てるな。」

「殿!」


 すると、伝令が駆け込んてくる。


「島津豊久ら別働隊が大浜に上陸したとのことです!」


 大浜。

 臼杵城から北にある地であり、黒田側もそこまでは防塁の手が回っていなかった。

 目と鼻の先であり、そこに橋頭堡を作られれば防塁が意味をなさなくなるのであった。


「ほう、豊久か。だが、既に手は打ってある。」




「かかれ!敵の後背をつくのだ!」


 豊久ら島津勢が上陸する。

 敵の姿は無く、予め流された情報でも無かった。

 つまり、豊久の独断である。


「流石に、敵もいないか。」

「殿!」


 すると、斥候が戻ってくる。


「て、敵です!」

「何だと!やはり対策していたか!」


 島津豊久の前に無数の旗印が現れる。


「面白い!たったのこれだけならば直ぐに蹴散らしてみせよう!」

「そ、それが、背後にも!」


 すると、背後からも旗印が現れる。

 如水は防塁の兵を減らすことでこちらに兵を回していたのだった。


「……さすがは天下に名のしれた名軍師!相手にとって不足は無い!怯むな!我に続け!」


 島津豊久は大浜に釘付けにされる。

 結果、九州征伐軍は苦戦を強いられる事になる。




「殿!」

「どうした?」


 優勢な戦況の中、伝令が慌てて如水の元に駆け込んでくる。


「な、中津城が!襲われておりまする!」

「何だと!?」


 現在、黒田家の居城である中津城は小野寺勘助が入っている。

 中津城にて次の策を練っていた。


「攻め寄せる敵の旗は、織田、蜂須賀、生駒で御座います!」

「織田!?……そうか、やられたか……。」


 如水は織田にしてやられたことに気付く。

 そして、兵は毛利、島津、征伐軍の対応に当てており、中津城にいる兵は少ない。


「勘助に、任せるしか無い。か。」


 九州の大半を抑えた黒田に暗雲が立ち込み始めていた。

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