【亜沙美の部屋】

「何となく分かった。ごめんね…」

「いや、良いんだ。俺も焦ってたかもな…」

取り敢えず亜沙美は、太一にズラされた服をイソイソと直した。彼の熱い気持ちを受け顔が暑くなっているのを感じていた

「私ね…太一の事も梨香ちゃんの事もほとんど同じ様に友達だと思ってたの…仲良くなれれば分け隔てなく友達だって…

でも違うんだね。私たちはもう高校生なんだもんね…性別を気にしなくちゃイケナイんだよね…」

「ごめんな。俺のことを仲の良い友達だと思ってくれてるのは凄く嬉しいよ。けどな…亜沙美は…異性として可愛いな。って思っちゃうんだよ…水族館に行った時も、温泉旅行に出掛けた時もな、亜沙美は可愛い女の子なんだって…」

「そっか…そうなんだね…」

お互いの気持ちを素直に言い合った事で、お互いがお互いをどういう風に見ているかを再認識した２人

「で、でもさ！」

「（・-・）…ンッ?なんだよ？」

「仮に私を異性として見ててもさ…太一は私を強引に抱いたり出来ないよね？」

太一の気持ちを聞いたからなのか？服装を直して落ち着いたからなのか？亜沙美はまた太一をからかう様な言い方をした

「お前は…本当に…あんま舐めんなよ！」

「(๑°ㅁ°๑)えっ！？」

「ギュ…」

ここまで恥ずかしい想いをした事が太一の遠慮ギミな性格を破壊したのか？太一は亜沙美に近付くと…ソッと彼女を抱きしめた！

「……………………………………………」

「……………………………………………」

太一の予想外の行動に何も言えなくなった亜沙美。だが、それは太一も同じで自分から見ても大胆な行動をした！と思ったのか？抱きしめてゼロ距離まで近付いた事で感じられた亜沙美の、女の子特有の甘い香りに脳が痺れたのか？２人はしばらく無言で抱き合っていた

「あ、あの…太一…恥ずかしいよぉ…こ、これ以上はしないよねぇ？」

「す、すまない。やり過ぎた…」

零れた亜沙美の声で我に返った太一は、慌てて亜沙美の身体を自分の両腕から解放した

「俺だって男なんだからな！あ、あんまりからかってくると…ムキになって本当に亜沙美を襲うかも知れないんだからな！き、気を付けろよ…」

「うん…分かった…」

ここまでされて、ようやく自分の考え無しの行動が周りに迷惑をかけている事を理解した亜沙美

「でも、コレだけは言っておくけどな…」

「うん、何？」

「無邪気に普通に接してくれるのも、俺は結構好きだからな！あんまりヤラれ過ぎるとムキになるかも知れないけどな…」

「うん、覚えておく…」

そしてまた２人はまた無言になった

しばらくして太一が話を切り出した

「そろそろ帰らないと暗くなるから帰るな。あの…色々言っちまって今更だけど…あんまり難しく考え過ぎるのも良くないからな。じゃ帰る」

「うん、ありがとう…」

言い終わると太一は部屋を出た。何となくで亜沙美は玄関まで付いていき太一を見送った。２人は無言だったが、互いに手を振りあって別れの挨拶にした

「はぁ…気を付けないと…だねぇ」

太一を見送った亜沙美は、手のひらを顔に添えた

(熱くなってる…そりゃ、あんだけドキドキさせられちゃったもんねぇ…)

恋人の関係というものが、単に仲の良い友達の延長ではない事を思い知らされた亜沙美

【２０時】

「ピンピロリーン♪」

配信開始まで１時間を告げる携帯のアラームが鳴った。ふと我に返った亜沙美。今夜の配信は何をするか？まだ決めていなかった

「今夜の配信どうしよう？…今更新しいゲームを準備する時間も無いけど…ソシャゲのカタログで調べて見ようかな？」

【配信初心者ハウツー本】

なる本を買っていた亜沙美は、今の感情では上手く頭が回らないので買ってはみたものの、ろくに活用して居なかったその本を開く

【２人の相性診断アプリ】

というものを見付けた亜沙美は考え込んだ

(このアプリで私と太一の相性を調べたら、どんな結果が出るのかな？ベストカップルだったらどうしよう？…あ、でも…バッドカップルって出ちゃったら怖いなぁ…)

仮にどちらの答えが出たところで、その占いのようなアプリが絶対の正確性を持ち合わせている！という訳でもないのだが…そこは亜沙美も女の子

女子は基本的に占いが大好きな生き物だ。そして割と信じる。仮に信じなくても、かなり気になってしまう。それが女子というものだ

(やる？やらない？…怖いな…)

「ピロ、ピロ、ピロリーン♪」

とか悩んでいる内に【２０：４５】になっていた。もう配信開始まで１５分しかなかった。流石に今から新しい配信をするには時間が足りない。どんな配信をするべきか悩む亜沙美…

続く