【スポーツジム 更衣室】
室内は驚くほど静まり返っていた。隣りのプール室からは配信用の動画を録画している、亜沙美とロミータの楽しそうな会話が、室内にまで響いてきているのが逆に対照的な感じだった
「あ、あの太一君…迷惑だったかな?」
「(; ꒪ㅿ꒪)えっ!?そ、そんな事はないよ…少しビックリしたけど…なんて言うのかな…」
梨香と太一。2人にとって初(ファースト)Kissだった。一般的には男の方からムードを作り、女にオーケーをもらってするものだろうが…奥手な梨香から大胆に迫られてシタ。その事が太一の頭の中を混乱させていた
「太一君はどうか分からないけど…私にとっては初めてだったんだよ…良かったら、感想とか言って欲しいな…」
太一が知っている梨香らしくない大胆な行動に、彼女に何かあって無理してKissして来たのでは?と疑っていたのだが…
顔を真っ赤にして不安そうにKissの感想を聞いてくる梨香のモジモジした仕草を見た
(どうかしたのか?と思ったけど…この仕草は間違いなくいつもの梨香だ…けど、どうしてイキナリKissを?)
「……君、…イチ君ってば!」
「あぁ!すまない…うん。柔らかかった…凄くドキドキした…それと、俺も初めてだよ…」
「本当?良かった♪…もし他の女の子(梨香の心配したのは亜沙美)と既に経験があって…私がシタ事が迷惑にならないかな?って心配しちゃった…あはは…」
「そんな事はないけど…でも、どうして急にキスを?」
「えっと…それは…」
我ながら大胆過ぎる行動をしたので胸のドキドキが抑えられなかった梨香は、太一と話をする事で高鳴る鼓動を抑えようとしたのだが…それが思わぬ質問をされてしまう引き金になってしまった
(どうしよう…何て言ったら良いのかな?太一君から他の女の子(特に亜沙美ちゃん)の話をされてたら、ドンドン悔しい気持ちが湧いてきて…気が付いたらシテいた。なんて言えませんわ!)
いっぱいいっぱいになっている今の状況で、上手く説明などできるハズもない梨香。取り敢えず太一の事に関しては、亜沙美には負けたくない!それ故の行動だったのだ
(そうだわ!前にロミーから借りた少女漫画に似た様なシーンがありましたわ。その時のヒロインのセリフと同じことを言えば、乗り切れるハズですわ!)
「わ、私だって年頃の女の子なのよ!異性の男の子と触れ合ってみたい興味があるし、Kissもしてみたいもの…どうせなら、ずっと慕ってる太一が良いからに決まってるじゃない!」
「(; ꒪ㅿ꒪)えっ!?えぇー!!」
流石に太一も盛大に驚いた。とても梨香の口から聞くことは無いだろうと思っていたセリフが語られたのだ。それも自分に対して
あと太一は気が付かなかったが、今の言葉使いは梨香の口調ではなく、その漫画のヒロインのセリフが完コピされていた
【プール施設】
太一が驚いて悲鳴を上げる数分前…
「はい、オーケーです!後はプールに2人の雑談トークを録画したら、今回の収録は終わりになりますよ」
今回の収録を仕切ってくれたスタッフから、後1つで終わりなると聞かされ「ホッ」とした亜沙美
(やっと終わりだぁ…ただでさえ私は人見知りで引き籠もり気味なのに、こんな自意識高い系の人が利用するような場所で、知らない人を交えての収録だなんて緊張しちゃったよ…やっと終わるんだぁ。良かったぁ…)
「有難うございます!色々と助かったわ。後はロミーたちで片付けておくから、貴女たちはあがってもらって良いわよ」
「ですけど…撮影器具以外は明日から使用しますので、片付けるのは撮影器具ですが…」
スタッフの女性は段取りよりも早く終わって良いとロミータから言われ、少し困惑しているようだ。契約内容をやりきらないと落ち着かない。真面目なタイプの人なのだろう
「この動画は早くアップしたいから、帰ってここまでの録画を軽く編集しておいて、ここからのと最終調整は亜沙美と打ち合わせしながらするからさ」
「そ、そうでしたか…それではお言葉に甘えて。雑談トークの撮影器具はロミータ様の携帯でなされるのですね?」
「うん。その方がリアルっぽさが出て良いでしょ?編集ナルハヤでお願いしますね」
「分かりました!それではお先に…」
と、撮影のほぼ全てが終了し、ロミータが亜沙美とのコミニュケーションを深めようとした時だった
「えぇー!?」
「更衣室からですね…待たせている2人に何かあったのでしょうか?」
「梨香ちゃん…うぅん。太一の声だったよね?」
良く働いてくれたスタッフを労(ねぎら)って早く返してあげようとした時、更衣室から太一の悲鳴?が聞こえてきた
「ロミーが見てくるから大丈夫よ。…そうだ!亜沙美、喉とか乾いてない?ついでに何か持ってくるわよ?」
「あっ!うん、緊張しちゃって喉カラカラだから…何か欲しいな」
「分かったわ。少し待ってて…」
ロミータは亜沙美を待たせて太一の悲鳴?が聞こえてきた更衣室に向かった。スタッフの女性は亜沙美にも頭を下げ、片付けた撮影器具を担いで社員用エレベーターを使って帰って行った
【更衣室】
「ちょっと、ちょっと何よ、今の音は?まさか太一、アンタ梨香にエッチぃ事とかしてないでしょうね?」
「あっ、ロミー。これは、その…」
「いや、特に何も…」
(突然Kissされたのは俺の方なんだけど…)
突然ロミータが怒った顔で戻って来たから驚く2人。(んっ!?)ロミータの問い掛けに2人ともが、ほぼ同じリアクションをした事に不信感を覚えたロミータ。「これはナニかあった!」と、女の勘が働いたようだ
「怪しいわね…梨香。太一から強引にKissされたりとか、ないわよね?あったら言いなよ。ロミーがコイツに「ガツン」と言ってやるからさ!」
(だから、されたのは俺の方なんだって…)
【被害者が加害者扱いされるとは正にこの事だった】
(何か怪しい…そうだ!この前、梨香を泣かせた事に、いつか仕返ししてやろうと思って持ち歩いてた利尿剤があったハズ!アレを太一に飲ませて…)
「だからしてないって!それよりもロミータちゃんの方が亜沙美に変な事してたりしないのか?」
「はぁ!?ロミーが亜沙美にエッチぃ事を?…する訳ないじゃない!アンタ喧嘩売ってんの!?」
逆に自分が犯人と疑われているかの様な事を言われ「ムカッ」ときたロミータだが…邪(よこしま)な閃(ひらめ)きが彼女の脳裏に稲妻の如く走った!
(そう言えば亜沙美は【アミー水教団】とかいう変なヤツらから、やたらと亜沙美の体液(オシッコ)を要求される様な事を言われて困ってる。って言ってたっけ…アミーの体液(オシッコ)のアミー水か…)
「ま、まぁ良いわ。ロミーは亜沙美が喉が渇いたって言うから、持ってきたスポーツドリンクを取りにきたの…良い?梨香?後は雑談トークの収録…大体30分で終わるから太一に身体を触られない様にね。じゃあね」
「してない。って言ってるだろ!」
「はいはい、分かったわよ」
ロミータは自分の私物を入れているロッカーから何かを取り出すと、ソレを抱えてソソクサとプール施設に戻って行った
「ねぇ、太一君…」
「梨香…変な事はしないから安心してくれ」
「あ、うん。えと…そうじゃなくてね。亜沙美ちゃんが喉が渇いた。って言うのならロッカーに入れてた飲み物より、その冷蔵庫に入ってる飲み物の方が良いと思わない?」
「あー確かに…( ˘-ω-)うーん…俺が梨香に何かしたんじやないか?って疑ってたからソレに気が付かなかったんじゃないか?」
「なるほど?そうかもね…」
梨香の言う通り、冷蔵庫の中で冷えている飲み物を持っていった方が亜沙美は喜ぶだろう。だがロミータはソレに気が付いていたのか?どうか?はさておき、ロミータは別の目的があったので敢えて自分のロッカーを開けたのだ
(良し!気付かれずに持ってこれた。コレを亜沙美に飲ませれば…どんな顔を魅せてくれるのかな?ドキドキ…)
ロミータが【アミー水教団】の事を考えている時に思い付いた亜沙美への悪戯(イタズラ)。ロミータはいったい亜沙美にどんな悪戯をしようとするのか?
続く