目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第177話 コンプリの先輩たち

【亜沙美の部屋】

「良い亜沙美?もしかしたらオリビアさんやメルル以外にも、コンプリのメンバーが来てくれるかも知れないからコレを見ておきなさい。なんの予備知識も無いんでしょ?」


「う、うん。聞いている人以外の人が来てくれたら、私ちょっと分かんないよぉ…」


時間は20:20

今夜から亜沙美は【コンサート・プリンセス】の一員として、新たに活動を始める事になるのだが…既に個人勢として半年間の活動実績が有り、チャンネル登録者も12000人を超えている亜沙美は特例として、初配信から先輩たちと凸待ちコラボをする事になったのだ


「ほら、ここを見なさい。コンサート・プリンセス所属のライバーを纏(まと)めた公式の一覧が出てるでしょ?オリビアさん以外が来たらソコを見て、キチンと対処するのよ?オーケー?」


「う、うん。その人のコンセプトとかが書いてあるんだね…はぁはぁ…が、頑張るね…」


ロミータから助け舟を出された亜沙美だが…奥手な性格で半年前まで引き籠もりをしていた弊害が、久しぶりに発症していた


「そうそう。この前会ったオリビアさんだけど、ハンネ(ハンドルネーム)は【ショーツ・アメリカン】だからショーツ先輩って呼ぶのよ?間違っても配信中に【オリビアさん】て呼ぶんじゃないわよ」


「あ、そ、そうだねぇ…私を【亜沙美】って呼んだりされたらマズイ事になっちゃうもんねぇ…そういう事だよね。うん、分かった…」


「( ̄▽ ̄;)本当に大丈夫なの〜?一応スマホで亜沙美の配信チラ見しながら配信してるから最悪、配信ほっぽり出して助けに来てあげるけど…ソレは本当に最悪の場合だからね?そうならないように頑張んなさいよ!」


「ふぅー、わかりましたァ!!」


ロミータに発破をかけられた亜沙美は、緊張を吹き飛ばす意味も込めて大きな声で返事をした


「それじゃロミーは自分の配信をしに部屋に戻るわね…キバるのよ亜沙美……愛してるわ♪」


「も、もう。ロミータちゃんはスグにそういうこと言うんだから…でも、ありがとうねぇ♪」


「愛してるわ」ソレが緊張を解す言葉である事を理解できた亜沙美は、普段の表情に戻ることが出来たようだ



【21:00】

「こ、こ、こ、こんばにちわ…あう!?」


✱「新人さん大丈夫か?」

✱「めっちゃ緊張してるやん」

✱「でも可愛くね?」

✱「アミちゃん頑張って」

✱「アミー!負けんなよ」


あれから約30分後、落ち着きを取り戻した亜沙美だったが…配信が始まるまでに再び込み上げてきた緊張感で、ガチガチになっていた


「あ、あの…今日からコンサート・プリンセスに所属させてもらいましたAA(ダブルエー)VTuberの浅宮アミ16歳です…その、よろしくお願いします…」


✱「声可愛いやん」

✱「高校1年ってマ?」

✱「設定やろ?」

✱「初々しいな」

✱「コンプリこれで10人目か」

✱「アミ落ち着いて」

✱「おっ!?もうファン居るん?」

✱「転職組みか」


コメント欄には【浅宮アミ】の事を初見の者と、個人勢からのファンとが入り乱れて独特な空気を生み出していた



「えっと…個人勢として昨日まで半年間、頑張らせてもらってたんですけど…コンプリさんに拾ってもらって今日から、アタタに頑張りましゅ…あ!?」


✱「アタタって北斗かよ」

✱「噛んでるやん」

✱「本当に高校生っぽいな」

✱「アミ完全にビギナーに戻ってるw」

✱「慌てないで」


「スーハースーハー……アミは甘いものが好きです!家事は少し苦手ですけど、一生懸命頑張ります!えっと…あと、先輩のロミーちゃんと同居生活しています!」


✱「ロミーって…ロミー・イングランドちゃん?」

✱「大先輩やん」

✱「百合ってんな」

✱「ロミーちゃんからの口利きかな?」


「そ、そ、そ、そうなんです。ロミーちゃんには毎日のようにお世話になって、何とか頑張れていますぅ!今夜はデビュー配信になりますけど、先輩たちからの凸待ち配信をしようと思いましゅ!」


✱「おいおい大丈夫か?」

✱「気絶すんじゃね」

✱「アミw」

✱「ド緊張してら」


全く緊張が抜けない亜沙美。それもそのはずで、同接人数が彼女の最高記録を上回る15000人に達しているからだ。この人数はアミのチャンネル登録者をも上回っている。何しろ企業からデビューする新人は、注目の的になりやすいからだ


「トゥルルル(無音)…」


その時、会社ラインから亜沙美のスマホを鳴らすコールが無音で来た


「あっ!早速1人目の凸が来ました。お呼びしますね。オ…んっ、ん〜…ショーツ・アメリカン先輩です!」


「ハイ、アミ。お邪魔させてもらうわね」


✱「ショーツさん、こんばんわ」

✱「こんばんわ」

✱「大先輩来たー」


「はぁはぁ…ショーツ先輩こんばんわ。よ、ようこそおいでませた…」


「( ̄▽ ̄;)あはは、ガチガチに緊張しちゃってるわね。みんな!アミは話にあったロミーから紹介されて、私が面接をして彼女と契約する事を決めたのよ」


✱「ショーツさんがか」

✱「アミ認められたんやな」

✱「へー、見どころアリって訳か」

✱「期待するか」


「その時は有難うございました!今日からよろしくお願いします!」


「まぁ、マズはその緊張感を何とかしましょうね。そんなんで90分も配信してたら呼吸止まっちゃわない?心配だわ…」


コンサート・プリンセス1番目のライバーである彼女は、何度も新人の配信を見てきたのだが…ここまで緊張している新人は初めてのようだw


「わ、分かってはいるんですけど…どうにも治まらなくて…すみません…」


まだまだ人付き合いが不慣れな亜沙美に、これだけの人数に配信を見られながらで、(ほぼ)初対面の先輩方と話をするのだから、彼女の心臓は既にはち切れそうな程になっている


「慣れれば何とかなるハズだからファイトよ!初配信が寂しくならないように、私から1人声を掛けて連れてきたから、この後はその人とお話するのよ。頑張ってね♪」


「Σ( ˙꒳˙ ;)エ"ッ!?…ソレは聞いてないんですけどぉ…あの、ショーツさ〜ん」


「……………………………………………」

✱「行ったな」

✱「サジ投げたな」

✱「アミ〜頑張れ〜」

✱「最後までもつのか?」

✱「頑張んなさいよっ!」


亜沙美のド緊張ぶりを見兼ねたロミータが、気合いを入れようとコメントをしてくれたのだが…如何(いかん)せんコメントが多過ぎて埋もれてしまった


「プルルルル…おーい、聞こえてっかぁ?」


「えっ!?あの、どちら様でしょうかぁ?」


オリビアが手短に消えたと思ったら間もなく、亜沙美が全く知らない声が聞こえてきた


「何だぁ?声がちっせーな。もっと腹から声を出して元気良くせんかい!」


「えっ?…はい!アミです!…それで誰なのでしょうかぁ?」


「何だ貴様、自分が所属することになった先輩の声も分からねーのかよ?…俺はエルフ軍人のデザート・イーグルだ。イーグル様って呼べよな新人!」


次に現れたのは、亜沙美が全く目にして来なかったライバー【デザート・イーグル】(本名ミネア・イーグルス)だった


「は、はい。イーグルさん…」


「舐めてんのか、テメェ!イーグル様って呼べって言っただろうがよ!俺はお前の上官(せんぱい)だぞ!分かってんのかよ?」


「はい〜!すみませんでしたぁ!以後気を付けるでありますっ!!」


✱「イーグル様、今夜も元気だ」

✱「サー!イーグル様!」

✱「サーっ!」


ファンタジー系な軍服に身を包み、女ながらも一人称が「俺」であり、後輩に「様付け」を要求し、エルフな軍人だと主張する美人な先輩が凸待ちに現れた


「何だよ、ちゃんとやりゃ大きい声出せんじゃねーかよ。初配信なんだろ?気合いを入れろや、そんなんじゃ周りから取り残さされっちまうぞ!気合いだ、気合い!」


「はい!ご教授有難うございます!」


熱血的な喋り方に押されていて気が付いていない亜沙美だが、イーグル先輩はかなり萌え声をしていて、声の人気なら亜沙美よりも上かも知れないほどだ


「貴様はロミーの知り合いらしいな?」


「は、はい!ロミーちゃんには公私共にお世話になっているであります!」


イーグル先輩の気迫に完全に飲み込まれた亜沙美は、完全に口調まで彼女に合わせていた


「なぁアミよ。ロミーはスケベだろう?アイツ、リアルで会うとスグ俺のケツを触ろうとしてくんだよなぁ…さっき同居生活してる。って言ってたよなぁ?だったら貴様もアイツに散々身体を触られてんじゃねーのか?…本当にアイツはスケベだよなぁ…」


「ちょっと、イーグル!誰がスケベですって?ロミーは今アミ一筋なのよっ!誤解されるような事を吹き込まないでくれる?」


✱「やり合ってんな」

✱「2人は相変わずっすね」

✱「イーグル様カワヨ」

✱「ロミーちゃん好き」

✱「アミの配信だぞ?頑張れ」


突然ライン会話にロミーが割り込んで来た!亜沙美がイーグルに飲まれまくっている姿に、見守っている事に我慢できなくなったのか?自分もアミの凸待ちに参加したくなったのか?とにかく凄い勢いでやって来た


「ロミーちゃん!ふぇぇ…心細かったよぉ…」


「こぉらアミ!貴様、百合ってんじゃねーぞ!ロミーも甘やかし過ぎだろうがよ、コイツが駄目になった時に責任取れんのか?」


「はぁ責任?取ってやるわよっ!ロミーが責任取ってアミと結婚してやるわよっ!」


「お前なぁ!先輩の俺に向かって態度がデケーんだよ!ちゃんと敬意を払いやがれってんだ!」


「先輩ったって、ロミーより2-3日早かっただけでしょーが!そんなんで偉そうにすんじゃないわよッ!」


「( ̄▽ ̄;)あ、あのう2人とも…今日はアミのチャンネルで配信してるので…も少し穏やかにしてもらえないかなぁ?」


✱「やっぱりこの2人が揃うとこうなるな」

✱「相変わらずやね」

✱「アミ取り残されとるがな」

✱「アミ以外は元気な」


どうやら、ロミーとイーグルは同期のようだ。いわゆる「喧嘩するほど仲が良い」と言われる関係のようだ



「ちっ!小うるさいのが来やがったから俺は退散すっけどよ…ロミーはマジでスケベだからな。気を付けろよアミ!」


「は、はい。そりゃもー、たっぷりと味合わされちゃってます…」


「やっぱりか!…ロミーも程々にしとけよ、んじゃな。アミ、ちゃんと俺ともタイマンコラボしやがれよ!アデュー♪」


「全く好き勝手、言ってくれちゃってさ…」


かなり自分ペースで話して行ったイーグルだが、彼女は彼女なりに後輩のアミを元気付けようと気を使ってくれての態度だったようだ。その事に亜沙美は気が付く余裕は無かったのだが…


「ロミーちゃん。嬉しいんだけど、もう少し仲良くしてね?でも、イーグルさんと親しいんだね?」


「「さん」じゃなくて「様」だって言ったろうが!」


「うわっ!ビックリした!」


「アンタまだ居たの?ここからはロミーの時間なんだから、サッサと出ていきなさいよっ!」


帰ったフリをして亜沙美の配信の続きを見守ってくれていたイーグル。もちろん亜沙美は理解してはいないのだが…



「ねぇアミ、大丈夫だった?凄く疲れちゃったでしょ?残りの時間はロミーとイチャイチャして過ごして良いんだからね?」


イーグルが完全にラインから退出したのを見届けたロミーは、完全にアミを甘やかすモードに入っていた


「あ、ありがとうロミーちゃん。嬉しいんだけど、今日はアミのデビュー配信だから仲良く配信するのは…また今度の機会にね?」


「え〜!?ロミーの時間もう終わりなの?なんかロミーだけ短くない?」


「えっと、その…メルルさんがラインに来たみたいだから、初対面だし待たせるのも申し訳ないからさ…ね?」


「もう!今回だけよ?次のオフコラボではロミーと甘々クッキング配信しましょうね?アミを美味しくいただいてあげるからね♪」


「いやいやいや、クッキングでアミを食べないで欲しいなぁ…じゃあねロミーちゃん。またね」


「約束よアミ。明日にでもオフコラボしましょうね…ん〜(*´³`*) ㄘゅ♪」


やはりロミーが来るとエッチぃ方向に話が持って行かれそうになる亜沙美


✱「ロミーちゃん元気やな」

✱「相変わらず百合百合だ」

✱「メルルちゃんも来るんか」

✱「最近人気だよな」

✱「センシティブ方向になったよな?」

✱「アミと合うのかな」


相変わらず底抜けに元気なロミーのトークに、視聴者たちまでも飲まれかけていたが…次にメルルが来ると聞かされザワついている


「どうぞメルル先輩。お入りください…」


「やぁ初めましてだね。僕の名前はメルルだよ。イーグルやロミーより、もう少しだけ先輩なんだ。ヨロシクね♪」


「あっ!初めましてメルル先輩。新人のアミです、よろしくお願いします!」


✱「メルルちゃんだ」

✱「こんメル」

✱「こんばんは」

✱「アミに新たなセンシティブな刺客が…」

✱「アミに手解きを」


「ふむふむ、なるほどね。これはまた可愛らしい後輩が入って来たみたいだね。僕はイーグルやロミーよりも少し先輩なんだけどさ、変に気を使わなくても良いから仲良くしましょうね♪むふふ…」


「はい。有難うございますメルル先輩!」


最近、少しセンシティブな要素を含んで人気が再燃していると噂のメルルが、4人目の凸者として現れた

果たして彼女との出会いは亜沙美に何をもたらすのか?今度こそ緊張せずに、亜沙美は初対面の先輩と上手く話せるのだろうか?




続く

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?