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第178話 メルルとスノウ

【凸待ちオフコラボ】

コンサート・プリンセスの新人としてデビュー配信を始めてから50分が経過した頃、最近人気再燃中の蒼空メルルがやって来ていた


「蒼空先輩、新人のアミです!よろしくお願いします!」


(えーっと、真面目さと優しさがウリの清楚系で、天界の魔法学院生か…)


「天界から降臨した天才魔法使いのメルルよ。アミは一体何者なのかしら?」


「えーっと、その…現役女子高生のアミです。仲良くしてください」


「は?それだけ?…うっすいわね…そんなんで大丈夫なの?…ん〜、でも可愛い声と顔だからイケるのかな?…そうだ!僕が手取り腰取り導いてあげようかな?アミちゃんは良い声で鳴いてくれそうだね…ニヤ♪」


「あはは…助かります」


(あっれ〜?この一覧には「真面目で清楚系」って書いてあるんだけど…あれぇ?)


ホームページに記載されているライバーのプロフィールと、配信中のライバーの雰囲気に誤差があるのはよくある話なのだが…この蒼空メルルの場合、プロフィールと今アミが話している彼女は、まるで別人のようだ


✱「メルルちゃんとアミの百合展開か?」

✱「さっそく口説くのか?」

✱「メルルちゃんイケてる!」

✱「ロミーちゃん、アミ取られるぞ」

✱「新しいてぇてぇ助かる」


早速、先輩ライバーのメルルに可愛い後輩として目を付けられた亜沙美だが…どうも怪しい雰囲気がしていた




【ロミーの部屋】

「このこのこの!…あぁ!?やられちゃった」


(ちょっとメルル、何ロミーの亜沙美を口説いてんのよ!アミはロミーのアミなのよ!)


✱「あ!ソッチ行ったら…」

✱「その武器取るのは無理やろ」

✱「どうした?」

✱「らしくないな」


ロミータはいわゆるCM系ゲームの【ロストウォー】をプレイしていた。兵士が仲間を増やしたり武器を強化したりして、戦場に溢れかえったゾンビ達を撃破して自分の領地を拡大していくゲームなのだが…


「えっ!?あーっ!囲まれたっ!?」


「うあぁぁぁ……ゲームオーバー」


✱「今夜は不調やん」

✱「らしくないな」

✱「集中してへんな」

✱「アミちゃんの配信気にしてる?」

✱「ドンマイ」

✱「やっぱりか」


「あはは…みんなにはバレてたか…んー、やっぱりね。アミの家に居候させてもらってる身としては、彼女の初配信だからどうしても気になっちゃうわね〜」


✱「せやな」

✱「ロミーちゃん優しい」

✱「頑張って」

✱「本当に同棲してんのね」

✱「妹を心配する姉の気持ちか」

✱「実際のとこアミちゃんは可愛いの?」


「あったり前よ!最高よっ♪」


縦スクロール型のゲームなので、少し先の展開を読んでちゃんとルート選択して行けば、そこまで難しいゲームではないのだが…先程からアミに色仕掛けしているようなメルルの口調のせいで、ゲームに集中しきれないロミータ




【亜沙美の部屋】

「ね〜今度オフコラボ配信で、僕と料理配信してみない?手軽で美味しい料理とか、デザートとか教えてあげるよ?」


「あ、有難うございます。私も何かお返し出来たらいいんですけど…」


どうやらメルルもアミの少し幼い声や、オドオドした可愛い態度を気に入ったようだ。かなり強く絡める配信をアピールしてくる


「そんな、お礼なんて良いんだよ…そうだね…アミちゃん自身がデザートになってくれるなら、ソレも有りだよねぇ♪」


「(꒪ꇴ꒪ ;)ええっ!?メルルさんもソッチ系の方なんですか?」


ロミータのアピールの仕方を、大人しく静かに踏み込んでくるタイプにしたのがメルルだ。と亜沙美は感じていた


「くすっ♪ロミーちゃんじゃ与えられない気持ち良さを、お姉さんの僕なら与えてあげられるんだよ?…今ならまだ…僕に鞍替えしても良いんじゃないかな?」


「えっ…その、あはは…」


(お淑やかで清楚系な配信者のメルルさんは何処に居るの?ロミーちゃんと良い勝負なんだけどぉ!)


公式に乗っているメンバー説明と、あまりに掛け離れた態度でアピールしてくるメルルに引いてしまう亜沙美


✱「おいおい、メルルちゃんマジやぞ」

✱「アミちゃんを巡って三角関係か?」

✱「メルルちゃん本気やん」

✱「百合パラダイスか」

✱「新たなアミー水信者になるか?」

✱「積極的だねぇ」


「んっ?ねぇアミちゃんのファンのみんな、その【アミー水】って何なのかな?」


「えっ!?あっ!そ、ソレは…」


✱「アミの体液だよ」

✱「汗とか汁とかだね」

✱「アミー水は至高」

✱「1度は飲みたいぜ」

✱「アミーゴの宝」


「へ〜、ほ〜、ふーん…なるほどね〜」


「な、な、な、何でもないんですぅ!気にしないでください(焦)」


イキナリ初日から所属事務所の先輩ライバーにまで【アミー水】の存在が知れ渡ってしまい、とんでもなく焦る亜沙美


「それ、僕も興味あるな〜…今度オフコラボした時にでも1杯もらえないかな?できたら濃いのをお願いしたいな♪」


配信では伝わらないが、よほど亜沙美を気に入ったようで、亜沙美との濃厚な絡み展開まで妄想しているメルルは、ジットリ汗をかき着ている服がその汗で透ける程だった


✱「俺も欲しいっス」

✱「流石メルルさん、分かってる」

✱「以前【アミー水】を賭けた配信があったんですよ」

✱「神棚に飾りたいぜ」

✱「きっと美味しいハズ」


「そうなの?…じゃあ僕にも【アミー水】がもらえるチャンスを与えて欲しいな〜。貰えたら毎日少しずつ味わって、大切に飲むからさ〜♪」


「ヒィィィ!!Σ(๑꒪ꑣ꒪๑ノ)ノ メルルさんもソッチ系の人だぁぁぁ!!」


迫る態度がロミータよりも大人しいのが、逆に亜沙美に恐怖を与えていた


「アミちゃんが欲しいなら僕の体液…【メルー水】と交換でも良いんだよ♪僕なら躊躇なく提供してあげるよ?」


「い、良いです!配信者なんですから、そういう行為は控えた方が…」


「どうして、そんなことを言うの?視聴者が喜ぶことを魅せてあげるのが配信者だよ?更に僕たちも喜べることなら、一石二鳥…いや一石三鳥だよ?さぁアミちゃん、僕と新しい世界の扉を開けようよ〜♬」


「嫌ぁぁぁぁ!!」


亜沙美の意見などお構い無しにグイグイグイグイ押し寄せて来るメルルの迫力に、思わず叫び声をあげたその時だった!

「バタンッ!!」


「ヽ(`Д´#)ノ くおらぁ!アミはロミーだけのモノだって言ってるでしょーがっ!!それ以上圧掛けるんじゃないわよっ!!」


「あら?ロミーちゃんこんばんわ。同棲してるって話は本当なんだね…羨ましいな〜…ねぇその席、僕と交換してくれないかな?」


「はあ!?ふっざけないでよねっ!いくら積まれたってこの場所は誰にも譲らないわよっ!!」


「まぁまぁ、そう言わずにさ。僕にもアミちゃんと仲良くなれるチャンスを頂戴よ。こんな可愛い子を独り占めするのは僕、良くないと思うんだよね?」


「だーまらっしゃいっ!アミはロミーの大切な女の子なのっ!初対面でソコまで迫るなんて、図々しいにも程があるわよっ!!」


まるでロミータは、自分の縄張りを死守せんとする怒れる猫のように、アミを誘惑しようとしているメルルを威嚇していた。しかし、ロミータの強い威嚇にメルルはまるで怯んでいない



「あ、あのう…アミはアミのモノで、誰かのモノではないんですけどぉ…」


2人の勢いに飲まれながらも、引き籠もり体質が発症しつつも、控え目に自分の意見を言った亜沙美だが…


「ロミーこそがアミを幸せにデキルのよっ!ポッと出の女がシャシャリ出ないで欲しいわねっ!」


「僕はもう社会人なんだ。ロミーちゃんよりもお姉さんなんだよ?アミちゃんに幸せを与えられるのは僕の方なんだよ…分からないかな〜?」


「そんなこと知るかぁ!!」


✱「アミ、届いてないぞ」

✱「全然聞こえてないな」

✱「果たしてアミはドチラのモノに?」

✱「罪な女やで」

✱「モテモテやん」

✱「すげぇモテよう」


「ねぇ、2人ともアミの話も聞いてってばぁ…」


「ロミーのなのっ!」

「いやいや僕こそが…」


アミが2人の話の中心になってはいるが…アミの声は2人に全く届いていなかったw




【ロミーの配信】

✱「行っちまったな…」

✱「帰ってこねーな」

✱「アミちゃんの配信見るか」

✱「本気なんやな」

✱「アミちゃん、そんな可愛いのか」


自分の配信をしながら亜沙美の方の配信をスマホでチラチラ見ていたロミータが、メルルのあまりのしつこさに我を忘れて亜沙美の部屋へ突撃して行ったので、ロミーの視聴者(ロミフレ)は完全に放置されていた




【亜沙美の配信】

「奥手なアミはロミーこそがっ!」

「いやいや、お姉さんの僕こそが…」

「アミの話を聞いてよォ……」


まるで恋愛漫画のように主人公(ヒロイン)である亜沙美を取り合うロミータとメルル。激しい言い争いが続くその様子は、もはや配信の体を成していなかった。その時!


「ちょっとちょっと、アンタら良い加減にしときんさいよ。今は配信中やと分かっとるの?」


「えっ?誰ですか?」


「スノウ先輩?」

「スノウさん、お久しぶりです…」


アミを中心に揉めている会話に割り込んできた京都風に話す女性。その声にロミータもメルルも一瞬で落ち着きを取り戻した


「メルルちゃんもロミーちゃんも先輩ですやろ?せやったら、アミちゃんの大切な初配信を邪魔したらあきまへんえ。そのくらいは2人もよう分かってますよな?」


「は、はい。僕も少し熱くなりすぎました…アミちゃん、ごめんなさいね。これに懲りず今度コラボしてくださいね。それじゃ僕は今日はこの辺で失礼するね、じゃね♪」


「あ!待てっ!」


「ロミーはんはまだ聞き分けてくれまへんのやろか?……」


「あっ!いえ、はい…分かりました」


2人が【スノウ】と呼ぶ女性が静かな圧を掛けると、メルルはそそくさと退散し、ロミータも借りてきた猫のように静かになった


「さ、ロミーはん。ここからはウチがアミはんとお話しますさかい、2人キリにしてくれまへんか?それに、自分の配信枠まだ開けたままになってますえ?」


「あ!そうでした、分かりました。お任せします…それじゃアミ、また後でね…」


「ふぅ…ようやく静かになりましたな。すんまへんなアミはん。2人とも悪い子やあらへんのや、ツイツイ熱くなってしもただけやと思います。今回は勘弁しといてあげてくんなはれ」


「は、はい。そんなに気にしてませんから、大丈夫です!」


(スノウ・ホワイト。雪の国で民宿を営む女将さん(設定)コンサート・プリンセスの1番目のライバーであるショーツと共にデビューし、その箱を支え続けるベテランライバー…か)


スノウに挨拶をしつつ、スマホに表示されているコンプリのライバー一覧表を見て、彼女に関するデータを読む亜沙美



「ウチのこと知っててくれるやろか?ショーツはんとは同期の【スノウ・ホワイト】言います。活動年数が長いだけの先輩やけど、困った事があったら何でも遠慮せんと言うておくれやす」


「は、はい。有難うございます!」

(スノウ・ホワイトさんかぁ…良い人だなぁ♪何だかコンプリで1番落ち着いた感じのお姉さんだァ♬)


✱「流石スノウさんです」

✱「コンプリの良心だ」

✱「スノウお姉様❤︎」

✱「相変わらず美しい」

✱「貫禄が違う」

✱「器がデケーよ」


視聴者からの評価も段違いに高いスノウ。ようやく頼れる先輩に出会えた亜沙美は、今夜の配信で安堵する事ができた


「何でもショーツがアミはんの面接をされたようですな?」


「は、はい。優しく良くしてもらいましたぁ!」


(あれ?スノウさんはオリビアさんだけ呼び捨てなんだ…それだけ2人は仲が良い。って事なんだろうなぁ…)


「ふふふ、そないかしこまった物言いせんでもええんどすえ♪若い子は元気が1番やさかいな…ちょっとロミーちゃんは、元気が良過ぎる気がしますけどな(笑)クスクス…」


「そうですね…でも、アミは控え目なのでロミーちゃんの明るさに毎日元気をもらってるんです♪」


「それは良かったですなぁ♪」


やっと亜沙美は気負わずに話ができる相手と巡り会えたようだ。それから30分ほどスノウと会話し、企業勢ライバーの立ち回りや身のこなし等を丁寧に教えてもらっていた

一人っ子の亜沙美は、生まれて初めて信頼できるお姉さんを持てた気持ちになっていた




続く

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