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第181話 食事と露天風呂

【鳳凰の間】

「この配信をご覧になっている皆さん初めまして。音声のみですが、私がこの温泉旅館の看板娘をしています【服部 茜】と言います。宜しくお願いしますね」


昼食が並べられると、彼女の両親は「ゆっくり楽しんでくださいね」と言い残し部屋を去って行った


茜から昼メシも配信に乗せても構わないと言われたが、変わった料理が幾つかあるので「解説するのが難しそうだね」という話をしていると「でしたら私も参加して解説しましょうか?」と茜が申し出てくれたので、急遽彼女も加わってくれているのだ



【伊勢うどん】

「さて、まずは伊勢うどんから説明させていただきますね。茜にお任せください♪」


先程まで、基本大人しそうな態度(時々違う一面も見えたが)を魅せていた茜だが…録音し始めると急に元気にハキハキと話し始めた


「太い麺だよねぇ」

「本当、喉に詰まりそう…」

「でも、伝統のメニューですよね?」


「はい。イーグルさんの仰られる通りです。伊勢うどんは、かけうどんのようにのツユに浸ったものではありません。たまり醤油に鰹節やいりこ、昆布等の出汁を加えた、黒く濃厚なつゆを少量だけ使って、太い麺に絡めて食べるものが主流なんですよ

この太い麺は長時間かけて柔らかくゆで上げられていますので、少しのつゆと刻みネギだけで食べることが多いんです。どうですか亜沙美さん。美味しいですか?」


打ち合わせした通り、まずは亜沙美から食べ始める。なんと言っても、この温泉旅行はコンプリに所属した事とチャンネル登録2万人祝いであり、服部(兄)が亜沙美の為に手配してくれたモノという意味合いもあるからだ


「ズルズルズル…ん〜んっ…美味しいよぉ♪麺が少ぉし太いけど、柔らかいから喉に引っかからずに飲み込めるのぉ♫それに、この黒い出汁も見た目だけで、そんなに味濃くないから食べやすいよぉ!」


「そうなんですよ!伊勢うどんは長い時間ゆで続けているので、お湯を使わずすぐに提供できますので保存食としても重宝されてきたんですよ」


「聞いたことがあるわ。東海道五十三次ってお参りコースを通る時、電車や車が無かった時の昔の人がよく持ち歩いていたのよね」


「ほぉ、ロミーは本当に日本文化が好きだよな。このイーグル様よりも詳しく知ってることを誇っても構わんぞ♪ 」


以前、亜沙美とのデートコースに椿大社を選んでいたロミータは本当に日本文化全般が好きなようで、伊勢うどんに関しても知識を有しているようだ


ちなみにミネアも配信の為の録音となった途端、さっきまでの大人しい本性は引っ込んで、配信時のエルフ軍人大佐殿の表情とトークになっていた


「はいはい。大佐殿に褒められて光栄でありますわよ。ちなみに、この伊勢海老も同じく有名な三重県の食材よね。本当に高級だから、三重に住んでるのに1回しか食べたことがないわ」


「そうだよねぇ、アミもそれくらいしか食べたことないよぉ…」


(にしてもイーグルさんも茜ちゃんも、オンオフの切り替えスゴすぎだよぉ。2人とも凄いなぁ…)


2人とは逆に、配信中でもプライベートでも大差のない亜沙美は、2人はプロ意識が高い人のように見えていた


……………………………………………


「以上でお昼ご飯の説明を終わります。皆さんご視聴いただき有難うございました!伊賀市にある温泉旅館【隠れ里】よろしかったら1度訪れてくださいねぇ♪」


パチパチパチ


「ありがとうねぇ♪茜ちゃん」


とても中学生とは思えないほどスラスラ説明し終えた茜は、両親と一緒に食事をしてきます。と言い部屋を出ていった



「それじゃロミー達は、ゆっくり食べながら雑談を続けましょうか?」


「そうですね…先輩としてアミからの質問コーナーをするっていうのはどうだ?」


後で配信に使う為に録音し続けているので、イーグルは軍人口調のまま話していた


「ロミーが何回かアミの家に泊まらせてもらっていてね、その度にアミから質問されていたから…もう聞くことも無いかもね?」


「うん、確かにねぇ……そうだ!この前の凸待ち配信で感じたんですけどぉ、コンサート・プリンセスって純粋な日本人って私だけしか居ないんですか?」


「……そう言えば、アミ以外はみんなハーフだったよね?」


「そうだロミー。詳しく説明すると長くなるから割愛して説明するとだな…最初にコンプリを作ろうとしたのは、社長ではなくショーツ先輩なんだ」


「えぇ!?そうなんですかぁ?」


「ショーツ先輩が日本に来た頃はだな、外国人は日本人より安く使える!って理由で雇用されるケースが多くてだな、苦労している外国人労働者が本当に多かったんだ…ソレを何とかしたいと思った彼女がブイチューバーに目を付けてだな、ハーフ系ブイチューバー事務所を立ち上げようとしたんだ

最初のスポンサーが社長でな、忙しいショーツ先輩をサポートしてくれている内に、彼が社長に就任してくれた訳なんだぞ」


「ほえぇ…そうだったんですねぇ…」


「そしてショーツ先輩が、学生時代の友達のスノウ先輩を連れて来た。ってロミーは聞いているわ」


時間は今まであったのに、亜沙美がソレをロミータに聞かなかったのは、実際に凸待ちで話をして初めてソコに気が付けたからだろう


「えっとぉ、あの日にロミーちゃんを入れて5人の先輩と話したよね?コンプリはちょうど10人居るって聞いたから…後5人会ってないんだよねぇ?」


「バカね〜。アミを入れ忘れてるわよ」


「あ!そっか、じゃあ後4人会ってないんだねぇ…」


「1人は休止中で1人はその日、外部のブイチューバーとコラボしていたな。後は双子姉妹が旅行に行ってて留守にしていたな」


会わなかった残りの4人が、決して亜沙美を嫌がって来てくれなかった訳ではないと知り、ホッと一安心した亜沙美


「それじゃ一旦収録は止めるわ。まだまだ続くから楽しみにしときなさいよっ♪」


昼食の様子の録音は、ロミーの言葉で終わりを迎えた


「あの…美味しかったよね?」


「そ、そうですねぇ…」


録音を止めた途端、またもや素に戻ったイーグル。その温度差にまだまだ慣れない亜沙美


「チン!」

「はい。食べ終わられましたね?食後にデザートが有りますが、食べられますか?伊賀牛のミルクを使ったソフトクリームですが…」


またもや呼び鈴を押すが早いか?襖が開くのが早いのか?のタイミングで旅館のスタッフが現れ、彼女たちが使った皿などをまとめ始めた


「美味しそう。食べたぁい♪」

「ロミーも頂くわ」

「そうですね、私も欲しいです」


「かしこまりました…おい…」


「はい。伊賀牛ソフトクリーム3つ、お持ちしました」


亜沙美たちの返事を聞いたスタッフが通路の奥へと目線を送ると、既に別のスタッフがソフトクリームを3つ手に持った状態で待機していた


「あ、有難うございますぅ…」

「速い。とかのレベルじゃないわねw」

「本当に、どういう事なの?」


常軌を逸したこの旅館の用意周到さに、ただただ驚く亜沙美たち。3人がソフトクリームを受け取ると、渡してくれた女性スタッフから…


「露天風呂の準備が間もなく終わります。本日は竹取様御一行の貸し切りになっておりますので、露天風呂に居る時も収録していただいて問題ありません。では…」


「露天風呂でも録音オーケーなんて、あまりにも協力的過ぎてビックリなんだけど…その理由も聞かない方が良いのよね?」


「そうねミネア。服部先輩の素性は知らない方が良いと思うわよ…」


高校2年生ながら、日本の暗部で活躍している現代の忍者集団の頭領の服部(兄)…しかし、亜沙美の配信には【エロコメダイスキ】というハンネで、亜沙美にセクハラコメントを送り続ける紳士でもあった


……………………………………………


「ロミータちゃん。私そろそろ露天風呂に入りたいなぁ…」


「そうね。じゃあ亜沙美、ミネア、露天風呂に行きましょうか?」


「えっ!?もしかして…一緒に入るの?…まぁ、私は別に構わないけど…ね…」


などと言ってはいるイーグルだが、ロミータに3人で入ろうと言われた彼女は、顔を赤くし明らかに恥ずかしがっている


「3人で入れるの?嬉しいなぁ♪」


「あ、亜沙美ちゃんは恥ずかしかったりしないの?」


VTuberは1人生活している者が多い。買い物や食事までほとんど1人でする。という者も珍しくないらしい。なのでミネアは、東京に出てきてからは誰かと一緒に風呂に入った経験などはない


「もしかしてミネアって、家族以外に裸を見られたことが無いって感じ?」


「あ、あるわよ〜。その、修学旅行の時とか…まぁ、ソレくらいしかないけど…」


「女の子同士だもん。恥ずかしがらずに一緒に入って録音しようよぉ♪」


亜沙美としては、貸し切り状態の露天風呂にロミータと2人で入れば、またエッチぃスキンシップをされるに違いないと思ったからだが…


「亜沙美って度胸あるのね。普通はブイチューバーになったばかりで、お風呂配信をするのは抵抗感が生まれると思うんだけどね…」


「Σ(゜□゜)あっ!」


ロミータの魔の手から逃れられる方法だ。としか考えられなかった亜沙美は、入浴中の声を全世界に配信することになってしまう。という事にまでは頭が回っていなかったようだ




【露天風呂】

「貴様ら喜べ!露天風呂配信の時間だぁ!しかも、俺様以外にも同期のロミーと、新人のアミの声まで楽しめてしまうんだぞ!」


快活に話しているイーグルだが、録音を始めるまでの彼女は…脱衣所で素肌を2人に見られる事に抵抗を感じてしまい、ものすごく時間を掛けて服を脱いでいたのだ


「ロミフレのみんなも楽しんでる?こんな配信ハッキリ言って有料級よ。シッカリ楽しみなさいなっ♪」


「あ、アミーゴのみんなも聞いててくれてるかなぁ?アミも居るよぉ…」


恥ずかしがり屋の亜沙美はタオルで身体を隠してモジモジしながら、何とか録音が拾える声で挨拶をした


「アミ!貴様、声が小さいぞ!腹の底から声を出さんかっ!!」


「で、でも…温泉旅館の露天風呂だから、大きな声を出すのは他のお客さんに迷惑が…」


「何言ってるのよアミ。今回の旅行は貸し切りにしてくれてる。って、スタッフの人も言ってたでしょ?本当に山奥にある隠れ里な旅館なんだから、気にすることなんてないのよ♪」


普通の旅館を利用している場合なら、他のお客さんへの配慮を怠らないロミータだが、この旅館は服部の両親が経営しているうえに他の客は1人も居ないから、全く遠慮していないようだ


「アミ。そんなタオルでコソコソ身体を隠して、縮こまっているから声も小さいんだ。そんなタオルは没収だぁー!!」


「ちょっとイーグルさん!?何するのよぉ…ふぇーん、そんなにジロジロ見られたら恥ずかしいよぉ…」


配信中のイーグルは強気で豪快だ。1人だけ小声過ぎる亜沙美の身体を隠していたハンドタオルを、豪快に剥ぎ取ってしまった


「ほほう…思ってた以上に色白で綺麗な肌をしているな…確かに、ロミーでなくても好かれやすいのには同意だな♪」


「こらこらイーグル。ロミーのアミの裸をジロジロ見るのは止めなさいっ!」


この交流が亜沙美をより高みへと導くキッカケになればと、イーグルのする事を見守っていたロミーだが、アミを丸裸にしてジロジロ見ているは許せないようだ


「まぁまて戦友ロミーよ」


「何よ?」


「俺様もアミを味わってみたくなったぞ。そんな機会はなかなか訪れんしな…少し味見させてもらおうかな?ニヤ♪」


「Σ( ˙꒳˙ )えっ!?ええっ!?」


ロミータの暴走を止める抑止力としてミネアを誘ったハズなのに、その彼女からも迫られてしまう亜沙美だった


果たして露天風呂での録音は、どのような結末を迎えるのだろうか?




続く

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