私達は少し話し合うことにしました。
「うん、まぁ……太陽の化身がいるんなら、ぶっ飛ばすのは良いとしてよー」
「マルファさん、納得出来ていなそうですね?」
「なんつーか。肩の力が抜けたというかなんというか」
「マルファの言うことも分かるかな。倒そうと思っていた相手が実は被害者で、本当の敵が別にいたんだからね」
私達は浄化マスクを脱いでいました。ヴェノムスネークは確かに毒霧を出さないようにしてくれたみたいで、空気がとても美味しいです。
それだけに、ヴェノムスネークのあの台詞が頭に残ります。
――ワイは穏やかに過ごしたいだけなんや。同じ魔物とも、そして人間ともまぁまぁやっていければ、それでええんや。
私は改めて、太陽の化身と戦うための覚悟を決めます。
「じゃあ、礼拝堂ごとぶっ放すか」
「駄目だよ。礼拝堂が壊れてしまう」
「じゃあ私が行きますね」
カサブレードを出現させた私はそのまま礼拝堂の扉を開きます。
「太陽の化身、いらっしゃいますか!?」
「アメリア……まるでマルファのような脳筋ぶりじゃないか」
「誰が脳筋だ、誰が」
外観から想像がついていましたが、礼拝堂は広く。長椅子がたくさんありました。
奥にはまるで女神様を思わせる女人像がありました。そして、私達は発見してしまいます。
そこにまとわりつく
「日輪に照らされ、降臨せし。ワシの名はファイアール。この女神像の破壊を命じられた太陽の化身なり」
ユリを思わせるような頭部、そして蛇のような体躯。
四体目の太陽の化身でした。
「……んん? 何か妙だな」
マルファさんが違和感を感じ取ったようです。
「なぁエイリス。今、あの蛇野郎なんて言った?」
「何って、女神像の破壊を命じられたって……あっ、そういうことか」
「カサブレードの破壊じゃないですね」
今までの太陽の化身は口を揃えて、カサブレードの破壊を目的としていました。
ですが、このファイアールは違います。カサブレードの破壊を口にはしなかったのです。
私はファイアールへ呼びかけました。
「私はカサブレードのアメリアです! 貴方を倒しに来ました!」
「カサブレード、そうか。ワシの目的はこの女神像の破壊だ。ちょっかいをかけぬのなら、見逃してやる」
ファイアールはただ女神像の絡みついているわけではありませんでした。女神像を粉砕しようとしているのでしょう。
しかし女神像に変化はありません。流石にあの巨体で締め付けられてしまえば、砕けてしまいそうなものなのに……。
「みんな、あれを見てくれ」
女神像とファイアールの間に何か力場のようなものが発生していました。
きっとあれが壁のようなものになって、ファイアールの破壊を許していないのでしょう。
とはいえ、それが分かったところで、この妙な状況の全てが分かったわけではありません。
今度はマルファさんが呼びかけます。
「うーん? なぁ、お前はカサブレードを破壊しないのかよ!」
「ワシが作られた理由に入っていない。だからワシはお前たちを滅しない。邪魔をするのなら別だがな」
「外のヴェノムスネークが精神操作を受けてたみたいだけど、あれはお前がやったのか!?」
「然り。人間が寄り付くと目障りだ。故に、あのエルダーを壁とした。ついでに人間を殲滅してくれると都合がいい」
なんて身勝手な理由でしょう。自分だけの都合で、色んな人に迷惑をかけるだなんて!
私はカサブレードを握りしめ、ファイアールへ駆け出します。
走った勢いをカサブレードに乗せ、ファイアールの体を叩きました。しかし、ダメージを受けた様子はありません。
「愚かな。カサブレードは確かにワシにも有効だ。だが、それだけだ」
ファイアールの体から球体が飛び出します。咄嗟にカサブレードで防ぎます。私は一度離れてカサブレードを構え直します。
「次はボクがやってみよう」
エイリスさんがファイアールへ手のひらを向けます。
「雷撃魔法!」
手のひらから電撃が放たれました。ファイアールは避ける様子もなく、雷が直撃します。少しだけダメージが入っているようにも見受けられます。しかし、これが決定打にはならないことは感じました。
再びファイアールの体から球体が飛び出します。今度はエイリスさん目掛けて飛んでいきます。
「おっと」
エイリスは軽々と避けました。ですが、それで終わりではありません。
「エイリスさん、後ろ!」
「なっ!」
何と球体は軌道を変え、エイリスさんの背中にぶつかったではありませんか。
「くっ、油断した……!」
背中を押さえて、立ち上がるには少し時間がかかりそうです。
そこで私は疑問を持ちました。
さっきの球体、確かにそこそこ威力は強かったのですが、そこまでの威力だったでしょうか?
エイリスさんは体力もあるため、あれくらいで動けなくなるというは少し、考えづらかったです。
「……まさかな」
マルファさんが小さく呟くと、ファイアールの体へ魔力弾を放ちました。
ファイアールの体に当たると、すぐに消滅してしまいました。再び球体がファイアールの体から飛び出し、マルファさんへ襲いかかります。
マルファさんは動きません。そのままマルファさんの体へ球体が直撃します。
「なるほどな。やっぱりか」
「マルファさん、大丈夫ですか!?」
「あぁ、心配ねーよ。大丈夫なように威力を抑えたからな」
「何か分かったのかいマルファ?」
「あぁ、どうしてあいつの攻撃の威力に違いがあるのか分かったよ」
マルファさんの見解としてはこうです。
ファイアールは受けた攻撃をそのまま、もしくは威力を少し上乗せして
だから私やエイリスさん、マルファさんへの攻撃にバラつきがあったのですね。流石はマルファさん、見るところが違いますね。
「そういうことか。確かにそれなら色々と納得できるよ」
「た、叩くだけで良かったです……」
「みんな、初手で強い攻撃をしなくて良かったな。下手すりゃ全滅していたぞ」
「だからといって、このままで良いわけでもない」
「そういうことだ。だから策を練るか、エイリスが」
「ボクがかい?」
マルファさんは思いつきで言っているわけではないようで、真剣な表情でした。
「あぁ、お前ならわたしとアメリアを上手く使えるだろ? だから良い策を頼むな」
マルファさんはニッと笑い、エイリスさんへ丸投げをしました。
ですが、エイリスさんの口から拒否の言葉は出ませんでした。
「任せてくれ」
代わりに、力強い承諾が出ました。