サンハイルさんの光の鎧は神々しく輝いていました。
あれがあのブレスレットの真の姿とでも言うのでしょうか。
「ようやくこの姿をお披露目出来たな。こいつはブレスレットの力を完全解放した姿だ」
「こ、れは……。なんて神聖さだ。それでいて淀んだ空気を放っている」
エイリスさんがカサミテーションを構え直しました。
「とんでもねぇ力を感じる。これがあいつの奥の手なんだな」
マルファさんのこめかみに、一筋の汗が流れました。
「サンハイルさん! 私達を手に入れるとはどういうことですか!?」
「この姿を見せたんなら、もう隠すことはねぇな」
サンハイルさんは〈天空階段〉を見上げました。
「太陽の魔神の復活が近い。俺はこの戦いから出るマイナスエネルギーを食らわせ、奴を復活させる」
そして、サンハイルさんは拳をぐっと握りしめました。
「そのうえで奴を喰らう! 奴は俺
「そんなことが……!」
サンハイルさんは私の言葉を遮ります。
「あるねぇ! 俺は俺だけだ。似ている存在なんていない、俺が唯一だ」
光の鎧から光線が放たれます。光線は何度も直角に曲がり、私達に襲いかかってきます。
「カサプロテクト!」
私は光線の前に移動し、カサブレードを防御形態に切り替えました。
カサブレードから防御障壁が展開されます。これでなんとか防ぎきります。
ですが、光線はカサプロテクトを目前に、更に直角に曲がりました。
「まずっ……! エイリスさん、マルファさん防御を!」
折れ曲がった光線が地面に着弾しました。次の瞬間、爆発を起こしました。
閃光と爆風が私達をかき回します。上下の間隔が一瞬失われました。
なんとか体勢を立て直した私は、すぐにカサブレードを構え直します。
「ほう……まだ慣れないからか、狙いがズレちまったようだな。本当は直撃させるつもりだったのにな」
だが、とサンハイルさんは余裕の笑みを崩しません。
「またぶちこめば良いだけだ」
サンハイルさんの鎧に、光の粒子が集束していきます。
同時に私は走り出しました。またあの光線が放たれたら、ひとたまりもありません。
大きな一撃を放たれる前に押さえ込む。これが私の判断です。
「判断が良いねぇ。だが!」
サンハイルさんの右手に光が集まり、剣へと形を変えました。
カサブレードと光の剣がぶつかります。あれは魔力で出来ているのでしょうか? 質量を感じません。
サンハイルさんが手に力を込め、僅かに私のカサブレードを跳ね上げました。
「さっきのようにいくと思うな」
なんと、もう片方の手から光の剣が生み出されたではありませんか。
完全に意表を突かれました。防御が間に合いません。カサブレードの力を引き出し、更に防御力を上げようと試みます。
次の瞬間、サンハイルさんの顔面に光弾が直撃しました。
「ちぃっ!!」
「アメリアに気を取られ過ぎだ!」
攻撃の主はエイリスさんでした。カサバスターのようにカサミテーションを構え、先端部から光弾を撃ったようです。
完全に隙を突けたからか、鎧に集束した光の粒子が霧散します。
チャンスだと感じた私は、エイリスさんの攻撃に便乗することにしました。
サンハイルさんの顔めがけ、カサブレードを振るいます。一度、二度、三度。何度も何度も叩きつけます。
これで倒れてくれたら何も言うことはありません。私はただ、カサブレードを振るい続けるだけです。
最後に一発、顔面へフルスイングしました。
サンハイルさんが吹き飛び、何度も地面をバウンドします。
手応えは十分。ですが、これで終わったとは思いません。
私が油断なくカサブレードを構え直したあたりで、サンハイルさんは立ち上がろうとしていました。
「ぐ……く、くくく。くはははは! まじでやるわ。こいつら、本当にやる……!」
立ち上がり方に余裕が見えません。
どうやら確実にダメージが入っているようです。
でも、あと一歩足りないようにも見えました。
「こうじゃなきゃ……お前らを連れてきた意味がない……!」
サンハイルさんの鎧が再び形を変えます。
今度の姿には鎧感はなく、どちらかというと、ボディースーツのようでした。
「更に姿を変えた!?」
「あまりの怒りによって、この力になれたようだ。さぁ、ここからが本番だ!」
ここからが本番?
いいえ。いいえいいえ。それは大きな間違いです。
だってこっちは、最初から本番なんですから!
「ありがとうな。アメリア、エイリス。おかげで、
マルファさんの頭上高く。そこには巨大な魔力の渦が生み出されていました。
「――螺旋圧壊の魔法。アメリアとエイリスが時間を稼ぐ前提の攻撃魔法だ」
「させるかよ!」
私とエイリスさんは同時にサンハイルさんを押さえにかかります。完全に用意が整うまで、私達は死に物狂いでサンハイルさんを止めます。
「マルファさん! お願いします!」
「マルファ! 気合だよ!」
「へっ、どっちも言われなくても分かってっつーの!」
マルファさんが手を振り下ろすと、巨大な魔力の渦がサンハイルさんへ襲いかかります。
「これがお前らの切り札か! ならば止める! そうでなくては俺は俺でいられない!」
私達が離脱した後、覚悟を決めたサンハイルさんが魔力の渦へ挑戦しました。
なんと、防御行動すら取らず、螺旋圧壊の魔法を受けたではありませんか。