双子月が輝く
『ノーチェ、首尾はどうなっているのかしら? 鉱山の件は?』
「どうもこうも、ご
『失敗って訳ね。全く使えない事……』
リンクベル越しに盛大なため息が聞こえてくる。
少女はローブに隠された髪を、指先でくるくると
「あれもこれもと無茶ぶりされたら、そりゃー結果を出せるわけないじゃない。
ただでさえいまは、あの方に任されたお使いで忙しいんです」
『誰彼構わず尻尾を振る様は、犬の様ね。みっともない。
……まあいいわ。あの方に幻滅されないよう、しっかりとおやりなさい』
プツリと通話が途切れ、一方的に終わった会話に少女は不満を
その犬のような役割を命じたのは、貴女でしょうに、と。
「はあ、やんなっちゃう。
わざわざ言われなくとも自分の役目はしっかり認識している。
そのためにいらぬ苦労を強いられ、身を粉にして働いているのだから「少しは
「ともかく
まずはお使い——宝石の回収をしないと」
少女は小声で『風よ』と詠唱を口にする。
すると、小さな竜巻が足元に発生して絡みつき、風を
ふわり、と羽根の様に建物の屋根へと降り立てば、街を一望とはいかないが、辺りの見通しが良くなった。
背の高い時計塔や監視塔であれば更に良いのだが、そう言ったところは
「さてと」
少女は左手を
「宝石は花の中で輝き、
【星】の導きに
少しばかり面倒な事になっていた。
宝石は別の宝石箱へと、大事に大事にしまい込まれていたのだ。
「んー。どうしようかなぁ。
手がないわけじゃないけど、
少女は己の行動をほんのちょぴっとだけ後悔していた。
「あんまり派手にやると怒られちゃうかなぁ。でも出し惜しみも出来ないわよね」
くすりと笑い、少女は街並みを見下ろした。
仕掛けるのであれば下調べは重要だ。
そうしてじっくりと眺め、大体のを
視線を落とすと、慌ただしくる騎士の姿が複数ある。
彼らの視線はこちらへ向けられていた。
指差しまでしている。
どうやら、こちらを見つけたらしい。
「あは! この街の騎士は優秀ね」
少女が指を擦り合わせると「パチン」と弾けるような音がして、その後どこからともなく集まった暗霧が少女を包み込んでゆき——。
少女の姿は闇夜の中へ溶けてしまった。