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6-8 「復讐者」

「「「——うおぉぉぉぉぉ!!」」」


 カルメリア中の各所から、歓喜の鬨の声が響き渡る

 ソフィアがベラリオを断頭し、目撃していたアルムによって伝えられた結末に誰もが喝采を挙げ、逆に帝国軍は打ちひしがれていた。

 そんな中、一つの金属が擦れる足音がソフィアの前に現れた。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!!」

「おーマスター、随分とお疲れのようだな」

「ア、アイリス……?」


 力を使い果たし、倒れそうになるソフィアを帝国軍服を着たアイリスが支える。

 顔を向けるだけで精一杯。満身創痍なその姿にアイリスは思わず笑っていた。


「にしても、マスターはいつもズタボロだな。人間なんだから無茶してたらすぐに死ぬぞ」

「無茶……するくらいで……明日を手に入れられるなら……いくらでも私は無茶するわ……。それよりも……アイリスの方は……」

「オレは問題ないよ。力は使い切ったけど、アルゴスは殺したし伯爵もちゃんと連れてきたぞ」


 アイリスが襟だけになったサルードをソフィアの前に投げ捨てる。


「生きて……いるの……?」

「当然。機獣ならまだしも、コイツをオレの手で壊すわけにはいかないだろ」

「どうして……?」


 横たわるサルードを見て、ソフィアが小さく首を傾げた。


「復讐ってのは自分の手で成し遂げてこそだからな。オレの復讐はオレだけのモンみたいに、マスターとついでにアイツアステリアの復讐はお前たちだけのモンだ。同じ復讐者として無粋なマネはしねぇよ」

「アイリス……」


 苦笑したソフィアが、力を抜いてその身体をアイリスに預ける。


「ほんと……変なところで律儀なんだから……」


 重みが増したソフィアの体をしっかりとソフィアは支えた。


「んなことより、喜びなマスター。この戦いはお前たちの勝利だ。良かったな、これでマスターの復讐が一つ達成だ」

「アナタのおかげよアイリス……。でも、これで終わりじゃないわ……私の最期まで、付き合ってもらうんだから」

「あぁ分かってるよ。あの日から、マスターはオレのモンだからな。誰にもその役目は譲らないよ」

「そっか……それなら良かった、かな——」

「おっと」


 ほっと安心して気が途切れたのか、ソフィアが意識を失う。

 アイリスは右腕でそっと体を支え、ほんの一瞬だけソフィアの唇にキスを落とす。そして僅かながらに力を補充すると左腕を形成。

 ソフィアを横に抱き抱え、勝鬨を上げるアステリアたちの方へと歩いていくのだった。


「——にしても、レストアーデの言ってたお姫様抱っこ……だったか? 実際にやったのはマスターが初めてだが、これで合ってるのか?」


 『レストアーデ』と『アイリス』を繋ぐ象徴太陽の光が、歩む二人の姿をずっと照らしていた——



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