さてさて、その日はゆっくりと休み、次の日……私は朝早くに目を覚ました……この世界に転生してからと言うもの、勉強もしてませんし、漫画とかの娯楽もありませんし……まぁ、元の世界でも貧乏だったので娯楽品はほとんどありませんでしたが……あとは、特にやはり電気がないので、夜更かしすることがないこともあって、すっかりと早寝早起きが身についてしましました。
「ふぁ~……いつもより早いかな?あっ……」
旅人様が寝てるっ!何時もなら私より早く起きてるから毎回毎回寝顔を見られることになってましたが…ここに来てついに彼の寝顔を拝むことができました……
(ふぁ~~♪ 普段はキリっとした印象のある旅人様ですが、やはり寝顔はどこかあどけない……はぁ~幸せです♡)
さて、これ以上見ていて気づかれると怒られてしまします……私は後ろ髪を引かれる思いでどうにか、その場を離れました……
「さて、どうしようかな?何時もより早い時間だし……なにか……」
そんな事を思っていたら、なにやら耳に聞こえる音……ちょっと外に出るのは怖いですが、一定のリズムで聞こえてくるカーンカーンカーンって音が気になり私は1人外に出てみることにしました……もし、村人さんにあったら全力で逃げましょう!(失礼)
それから音のする方向に近づいていくと、どんどん音が大きくなってきます……そこにいたのは朝のまだ薄暗く冷える中、1人の少年が、手に斧を持ち、木をきっているようでした……
カーンカーンと、何度も何度も木を斧で叩きます……ただ、それを振るう少年はまだ12,3歳ぐらいでしょうか?まだ、幼い男の子がボロボロの服を着て、一心不乱に木をきっている……私はついその光景に見入ってしまいました……理由はわかりません、ただなんとなく目を離せなかったのです。
ガンッ!
「うぁっ……っー……」
少年の振るった斧は狙っていたところを外してしまったらしく、強く叩いたことで手を痛めてしまったようでした……
「え、えっと、大丈夫?」
「わっ!?な、なんだ?あんただれ?」
「えっと、ごめんね……その、私は、えっと……あ、アンナっていうの……き、昨日からこの村に滞在してるの」
「あぁ、よそ者か……そういえば、村のやつがそんなこと言ってたな」
「えっと、君はなんでこんなに朝早くから木をきってるの?」
相手が小さな子供だからでしょうか、どうにかお話ができます……まぁ、それでも緊張しちゃいますが。
「俺は仕事だよ」
「え?君まだ子供だよね?」
「あん?村で子供だからって関係ないよ……それに俺は天啓も低いから朝早くから仕事しないと終わらないんだよ」
「そうなんだ?」
「よっし、続き続きっ」
「ま、まって」
「なんだよ?俺は忙しいんだ」
「あっ、えっと……お父さんとお母さんは?」
「父ちゃんは前に死んじまった、母ちゃんは病気なんだ……だから俺が仕事するしかないんだ」
「あっ……ご、ごめん」
「別にいいよ、とにかく俺は仕事があるんだから邪魔しないでくれ」
「う、うん、ごめんね……」
さすがにこれ以上は悪いし、私は少年のもとを後にした……
「はぁ……」
「おかえり、どこいってたんだ?」
「あっ、お、おはようございます……えっと、その、ちょっと外にいってたんですが……」
「そうか、それで、なにかあったか?」
「あっ、えっと……いえ、あ、朝早くから木こりをしてる子供がいて、気になったんです……」
「そうか……まぁ、こんな小さな村なら子供でも仕事をするのは普通だ」
「そう、ですね……あの……」
「なんだ?」
「あっ、い、いえ……なんでもないです、あはは」
「そうか?」
そのあとは旅人様は森の様子を見てくると出ていきました……私はどうしても気になって、再び少年がいた場所にいったんですが……まぁ、あれから数時間経ってますし、もういないとは思いますが……
「え?」
聞こえてくるのはカーンカーンという音……その音のもとに急いで向かうと、少年はまだ木を斧で叩き続けていました……
「ね、ねぇ……」
「ん?あぁ、さっきの姉ちゃんか、何の用だ?」
「あっ、えっと、まだやってたんだね?」
「当たり前だろっ!」
「あっ、ご、ごめん……あ、あの……その斧、その、直したほうがいいんじゃないかな?」
彼の持つ斧は明らかにボロボロで刃こぼれもしている……その状態で大き目の木を斬り倒そうなんて無理をしてる……道具も悪いし、とても1人でやる仕事じゃない……
「直せるなら直してるよっ!うちには金がねぇんだっ」
「あっ、ご、ごめんねっ……あ、あのね……お、お母さんの病気って、その、治らないの? あっ、ごめんねっ!その……あっ、えっと」
「はぁ……変な姉ちゃんだな……母ちゃんの病気はなんびょうっていうやつらしい……治せるらしいけど、薬はとんでもなく高いんだ……だから、俺が頑張って金を稼がないと」
「そ、そう、なんだ……え、えっと、聖職者の人は?」
「こんな村までこないよ……それに、母ちゃんの病気を治せる人はもっと上のほうの司祭様だって聞いたから……お布施だけですごい額とられるんだ」
「そう、なんだ……えっと……お薬ってどのぐらいするの?」
「なんで、そんなこと気にするんだよ?」
「あっ、ご、ごめん……き、気になっちゃって……そ、それにね、もしかしたら役にたれればって」
「はぁ?薬は、えっと500万はするってきいた」
「500万……そ、そんなに高いんだ……」
「そうだよ、だからとにかく頑張らなきゃいけないんだっ!俺はまだ忙しんだから邪魔しないでくれ」
「あっ、うん、ごめんね」
私は、再びそそくさとその場を離れ、借りてる家に戻ったのだった……
「はぁ……」
戻った家で、座り込んで私は天井を見つめる……
「私、なんで……気になって、聞いて、私にはなにもできないのに……でも、何か、何かできないかな……」
正直、私に出来ることはないけど……あっ、でも薬ってことは材料があれば作ってもらえる費用とかだいぶ安くなるんじゃないかな?
「あっ、でもなんの病気なんだろう……それもわからないんだよね……聞きに行く?いや、流石にまたいったら怒られるよね……」
それから私は旅人様がくるまで悩み続けるのだった……
◇
「なにしてるんだお前は?」
「ひゃっ!? あっ、お、おかえりなさいっ」
旅人様が帰ってきたことに気づかなくて声をかけられ初めて気づいて驚いてしまった……外を見ればすでに夕方になっている……
「とりあえず、食事を用意するか」
「あっ、はい……」
手伝いたいけど、私が手伝うとただ邪魔にしかならない現実……それから、今日もまた旅人様が用意してくれた食事に舌鼓をうちつつ、ただ、少年の事をずっと気になってしまった……
「聞いてるか?」
「え?あっ、ご、ごめんなさいっ、考え事してました」
「ふむ、まぁ、いい……とりあえず、もう数日は森の様子を確認してくる。その間は待機だ」
「わ、わかりました……えっと、私は少しでも外にでて……え、えっと、人になれるのをがんばります」
「そうか、ただ、気づかれないようにだけは気をつけろよ?」
「わ、わかりました」
とりあえず、まだ数日時間があるみたいだし、明日からも少年の……そういえば、名前しらないなぁ…どうしても気になるし、少年と交流をはかってみようかな……
そんなことを思いながら、私は村での生活を考えて見るのだった…旅人様の不安そうな顔には気づかず