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第28話

「はぁぁ~~~疲れたぁ……」


 ここ、スライゼンの街について3日目……今日も今日とて治療です……日増しに話しを聞きつけた人が教会に押しかけてきて大変なことになっています……旅人様やシスターたちがどうにか押さえててくれますが、このままだとどうなるか……下手すると怪我人が出そうで怖いです……


「アンナさん、お疲れ様です」


「あっ、クレサさん……」


「どうぞ、お水です」


「ありがとうございます……ンクンク……はぁ……着実に治って来た人は増えたはずなのに、減った感じがしません……」


「それは……そうですね、街中から人が集まっています……ごめんなさい……私が安易なことを言ったばかりに」


「いえ、気にしないでください……旅人様に怒られたんですよね?」


「えぇ、私の行動の結果がどうなるかを淡々と告げられました……」


「あはは……はぁ……私も予想外だったので……こんなことになるなんて」


 そんなことを話しているとなにやら荒そう声が聞こえてきました……


「なんでしょう?」


「わかりません、とにかく見に行きましょう」


 ◇


「いいから聖女を出せっ!それで治療をしろって言ってるんだっ!」


「だから、重傷者から順に治療をしてるから順番をまてと言ってるだろ」


「うるせぇっ!!!いいからさっさと治療しやがれっ!」


「旅人様っ!?」


「旅人さん……彼は?」


「あん?お前が聖女かっ!?」


「ち、違いますっ」


 とっさに言ったけど聖女ではないから間違いじゃないよね?


「うるせぇっ!俺の治療をしろっ!今すぐだっ!!」


「え?で、でも……」


「他の患者さんもいるんですっ、それだけ元気なら後にしてくださいっ!」


「うるせぇっ!シスターがしゃしゃり出てくるんじゃえぇっ!!」


 怒ってる男性は拳を振り上げクレサさんを殴ろうとしてきました……


「キャッ!」


 でも、その拳はクレサさんに届くことはなく……旅人様によって簡単に止められていました。


「ぐっ、てめぇ」


「あんたは出禁だ……今後お前の治療はされないとおもえ」


「なっ!ふざけるなっ!そんなこと許されるわけないだろ!」


「こっちはボランティアでやってやってるんだよ!金を貰ってるわけでもないっ!お前みたいなわがままを言う人間を治療する義務はないんだっ!なんなら直ぐにでもこの街を発ってもいいんだぞ」


「でてけ」


「そうだよ、でてけよっ!」


「治療の邪魔だっ!」


「聖女様の治療の邪魔をするなっ!!」


「聖女様のおかげで助かるのにお前のせいでこの街が滅びたらどうするんだっ!」


 次々と教会にいた人たちが男の人に文句をいいはじめました……彼もたくさんの人たちから怒気を向けられてひるんだようです……


「ぐっ、く、くそっ!覚えてろよっ!!」


「わ、わぁ……ほんとにあんな台詞言う人いるんだ……」


 彼は急いで教会から逃げ出していきました……それに他の人たちは喜んでいます……でも、彼も病気になって不安でしょうがなかった、だからああいった行動にでたんじゃないか……そう思うと少し、心が痛くなりました……


「アンナ」


「あっ、はいっ」


「大丈夫か?」


「はい、大丈夫です……えっと、治療開始しますね」


「あぁ、頼む」



 途中トラブルはあったものの、それからは順調に治療が進んでいきました……まぁ、私がやることはひたすら魔法をかけて治すだけ……重傷の人にも問題なく治療が行えるので、シスターたちからもかなり感謝されています……


「えっと、次の人をお願いします」


「わかりました」


「おぉ……聖女様にこうして治療していただけるとは……長生きするものじゃ」


「あはは、おじいちゃん、直ぐに治しますからね《高位浄化》」


「おぉ……温かい……」


「どうですか?」


「ほほ……だるいのが取れましたじゃ……それに他の悪かったところも治ったような」


「それならよかった……お大事にしてください」


「聖女様、ありがとうございますじゃ」


 お爺さんは嬉しそうに笑顔を浮かべるとシスターに連れられて出ていきました……


「はぁ……」


「疲れましたか?」


「あっ、いえ……こうやってお礼言われることってなかったので、えへへ、嬉しいものですね」


「あなたの行動には皆さん感謝しています……確かに先ほどの用な勝手な人もいますが……それでも、この街を救ってくれる、あなたは私達からすれば間違いなく聖女なのです」


「でも、私は聖女じゃ……」


「わかっています……聖国におられる本当の聖女様のことも……でも、今動いてくれてるのはあなた、聖国の聖女様ではないのです」


「それは……」


「ふふ、気にしないでください……でも、今、あなたがこの街にいる間だけ、彼らの街の人たちの希望の聖女としていてくれませんか?」


「……わ、わかりました……どこまでできるかわかりませんけど」


「えぇ、ありがとうございます」


「さて、では続きをしましょうか」


「わかりました……まだまだ患者さんがいますからね」


 まぁ、私達が話してる間にもどんどん患者さんがくるわけで……そのあとも私はひたすら治療をつづけました……ただ、だいぶ手慣れてきたこともありペースが早くなってきたので治せる人も増えてきました……


「次の人お願いします」


「大丈夫ですか?」


「はい、まだ余裕あります」


「その、本当にすごい魔力量ですね……普通の治癒魔法の使い手ならすぐに魔力枯渇して倒れてますよ」


「そうなんですか?私はその、あまりくわしくなくて……」


「そうなんですね……でも、少しでも体調に変化があったら止めてくださいね?」


「わかってます、私が倒れたら元も子もないですもんね」


「えぇ、そういうことです……それに、旅人さんに怒らてしましますからね」


「あはは……旅人様にもいっぱい心配かけちゃってるので……そればかりは、その、心が痛いです」


「ふふ……じゃあ、次の患者さんを連れてきますね」


「はいっ」


 この後も、時間いっぱいまで私はひたすら治療をするのでした……流石に疲れたぁ……


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