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第46話

―――旅人side―――


「グォオオオオオオオオオオオオオン」


「うざいっ」


 突っ込んでくる巨大なフレイムワイバーンの攻撃を回避しつつ、隙を見て攻撃をいれるが、中々に硬くてダメージがうまくはいらない……こちらとしても、あいつのヘイトを稼ぎつつ、回避と時折攻撃を混ぜての盾役……さすがに面倒くさい……


「ギャァアアアアアアア」


 奴の攻撃は大振りだから避けやすいが、問題はここでブレスなんて吐かれたら終わる……俺は、多分問題なく逃げれる……だけど後ろにいる、未だに逃げれていない馬車はまとめて燃やされるだろう……


「おいっ!手伝うぞっ!」


「逃げるのは無理そうか?」


 声をかけてきた冒険者……確かマグナスとかいう男だ……


「あぁ、馬が怯えちまって無理そうだ……ここで迎え撃つことになった」


「わかった……盾持ちが来たら俺も攻撃にまわる」


「あぁ、頼む!とにかく足の速いやつは攻撃開始しろー!」


 マグナスの言葉でこちらに向かってきた冒険者たちが攻撃を始める……


「と、いっても……大したダメージになってないなぁ……」


「すまん遅くなったっ!」


「あぁ、悪いがあいつの相手を頼む」


「任せろっ!盾隊!全力でフレイムワイバーンを止めるぞっ!」


「「「「「おぉおおおお!!!」」」」」


 さて、盾職達がフレイムワイバーンの前に立ち攻撃を防ぐ……といっても、どれだけ防ぎ続けるか……


「魔法隊!攻撃開始っ!」


「弓隊も続けっ!」


「前衛っ!全力で攻撃しろ!空に飛ばせるなっ!!」


「「「「「うぉおおおおおおお!!!!」」」」」


「グォオオオオオオオオオオオオオン」


「大人しくしろっ!」


 俺は空に飛ぼうとするフレイムワイバーンの攻撃を思いっきり魔剣で頭を切りつける……


「ギャァアアアアアアアア!」


「翼を狙えっ!!」


「全員、右翼を狙えっ!とにかく飛行能力を奪うんだっ!」


 巨体を相手に、全員が一丸となって攻撃をする……と、いってもあのサイズ……奴が起き上がっただけで近接職は翼に届かない……


「魔法隊、弓隊は翼をっ!近接隊は足を狙えっ!!」


 さて、ワイバーンを見ればかなりイラついている……俺はとにかく遊撃にまわって、あいつの気を散らす……


「感謝するっ!《挑発》!」


 盾職が俺に気を取られたフレイムワイバーンの攻撃を引き受ける……馬車は……まだダメか、逃げれればいいが、このまま討伐に……だけど、やはりこの場所は狭い……冒険者達もあの巨体相手に狭い場所での戦闘はしんどいだろう……


「尻尾が来るぞっ!退避っ!退避っ!!」


 冒険者達が急いでその場から逃げる……足の遅い盾職はその場で防御の姿勢……大きく振りかぶった尻尾が振るわれる……あたりの木々をなぎ倒しながらの攻撃……


「大丈夫かっ」


「あ、あぁ……ぎりぎりだ、すまん、いまので盾が壊れた」


「防げただけ上出来だ……盾隊は下がれ、俺がひきつける」


「すまん、頼む」


 逃げる盾職を見送り、俺はフレイムワイバーンに向き直る、あっちは完全にキレてる……流石に顔を覚えられたか?トカゲ程度が覚えれるとは思わないけど、流石に何度も殴られてたら敵認定ぐらいはするか?


「ギュアァアアアアアアアアア!!」


「うるさいっ!」


 全力で疾走し、跳躍……フレイムワイバーンの身体を足場に駆け上がる……かなり無茶だが、出来なきゃ攻撃くらって死ぬ……


「グォオオオオオオオオオオオオ!」


 フレイムワイバーンが大きな口を開いて俺を喰おうとしてくる……


「魔法隊攻撃っ!」


「ギャッ!」


 放たれた魔法がフレイムワイバーンの眼にあたり、やつは怯む、さすがに眼は痛かったらしい……その場で暴れるフレイムワイバーンの頭にどうにか登ると、魔法を受けた方と逆の眼に、魔剣を突き立てる……


「ギャァアアアアアアアアアアアアア」


「うぉっ!?あばれる、なぁっ!」


 まぁ、目玉刺されて暴れるなっていう方が無理だろうけど……俺は剣をしっかりつかみ、吹き飛ばされないように耐えつつ、魔剣の力で、フレイムワイバーンの生命力を吸い取る……


「ぐぅっ!」


「弓隊、魔法隊!足を狙えっ!」


「近接組は巻き込まれるなよっ!」


 さて、冒険者からの追撃……さらに苛立っているフレイムワイバーン……


「さすがに無理だっ」


 俺は、無理やり勢いをつけてフレイムワイバーンの顔を蹴り飛ばし剣を引き抜く……まぁ、当然そうなれば俺の身体は空中に放り出されるわけで……


「うぉおおおおおおおおお!!!」


「うぉっ?」


「せ、セーフ……大丈夫か?」


「あぁ、マグナス、すまん助かった」


「驚いたぞ、流石にあの状態で落ちたら無事じゃすまねぇって」


「あのまましがみつててもどうしようもなかったしなぁ……」


「怪我は?」


「流石にところどころ打ち身やらはしてるがな……大きな傷はどうにかない」


「そうか……こっちは俺たちが対応する、あんたは後方に下がって回復してもらってこい」


「そうだな……頼む」


「おぅ!」


 さて、マグナスたちに任せて俺は一度、馬車の方向に戻る……



「旅人様!」


「アンナ」


 馬車に戻ると、アンナが慌てた様子で俺のもとに駆けてきた……


「大丈夫ですかっ?お怪我は?すぐ治しますっ」


「あぁ、すまん頼む」


「あの……た、倒せそうですか?」


「そうだなぁ……出来れば使いたくなかったけど、切り札をひとつ切るかぁ……」


「切り札ですか?」


「あぁ、あまり人に見せたくなかったけど、まぁ、仕方ないか」


「えっと、よくわからないですけど、がんばってくださいっ」


「あぁ、ありがとう……さて、ちょっくら行ってくるか……治療ありがとうな」


「はい、お気をつけて……あ、危なそうならすぐ戻ってきてくださいねっ」


「あぁ、じゃ、ちょっくら行ってくる」


 俺はアンナに見送られ再びフレイムワイバーンに向けて駆けだす……



「おー暴れてるなぁ」


「戻ったかっ」


「あぁ、もう少し時間を稼いでくれ……ちょっとでかいのぶち込む」


 俺は冒険者に頼み、詠唱を開始する……


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