「見えてきたぞ」
「ふぇ!あっ、あれですか?」
旅人様の言葉に私は練習を止めて顔をあげると、まだ遠いですが大きな街が見えてきました……
「わぁ、おっきな塔……」
そう、見える範囲には大きな塔が2本、奥にまだあるかな?多分、街を囲む防壁に等間隔に置いてありそうです……
「あれが、ここの魔法王国の王都を守るための装置だって言われてるな」
「装置ですか?」
「あぁ、あの塔は全部で8つあって、それぞれに魔法式が組みこまれてる……それを起動させることで強力な障壁を展開して街を守るらしい」
「へぇ……あれ自体がでっかい魔導具なんですね」
「あぁ、まぁ、その分つかうエネルギー量もすさまじいらしいけどな、燃費は最悪らしい」
「な、なるほど……」
とりあえず、おっきいなぁ……どのぐらいあるんだろう?流石に日本にあった高層ビルとかほどではないけど、それでもでっかいなぁ……それが8つもあるんだぁ……
「あれ?でもあんなに堂々と見えてると狙われたりしないんですか?」
「当然狙われるな、ただ、あの塔自体が特殊な鉱石をつかって作られてるらしい、どういったものかは不明だけどな、並みの魔法じゃびくともしないとか」
「へぇ~やっぱりそういうところは考えてあるんですね」
「そりゃな、まぁ、あとは、わざとあれを的にしてるんだろうな」
「どういうことですか?」
「そうだな、障壁を張る装置はあれではなくて、周りに目を向けさ焦るためのダミーの可能性もあるってことだ」
「あっ、なるほど……しかも8つも壊さなきゃいけないんですもんね」
「あぁ、とんでもなく面倒だからな、よほど自信がないとせめてこないし、数年前に隣国が攻めてきたこともあったらしいけど、障壁を抜けずに敗走したらしい」
「わぁ……すごいですね」
「そうだな……あぁ、そういえば」
「はい?」
「カペラは絶対見られないよにしろ」
「えっと、はい、わかりました?いつも通りですよね」
「何時も以上だな……」
「なんででしょう?」
「カーバンクルは希少種だ……魔法王国の研究者からすれば、とにかく研究したい対象なんだ……しかも人に懐くことのないと言われたカーバンクルが懐いてるとなれば、やつらはより一層研究意欲がますだろうな……無理やりにでもカペラを奪おうとしてくる可能性が高い」
「そ、そんな……」
「きゅぅ~~」
「カペラ、絶対出てきちゃダメだからねっ」
「きゅいっ」
カペラを守らなきゃ……あっ、私自身も気を付けないと……魔力のことでバレると面倒なことになるんだよね……自分の呪のことを調べるために来たのに、その場所が自分にとって危険地域っていうのはどうなんだろう……
それから、2時間ほど移動すると、ようやく入口へたどり着きました……まぁ、一般列なので門を抜けるにしてもしばらく待つことになりますが……
「結構並んでますね」
「まぁ、ここは世界中から魔法使いが集まる場所だからなぁ……それに伴って、ここの情報を手に入れようとする他国のスパイも大量にいるからなぁ」
「えっと、それを全部この門で捌けるんですか?」
「いや、流石に無理だな……」
「あっ、やっぱそうですよね?」
「あぁ、ただ、門だけでもかなりの数の探知術式が組みこまれてる……大筋はそれだけで弾けるな……まぁ、そういったところを対策した連中も多いけどな」
「じゃあ、この街はスパイだらけってことですか?」
「んーまぁ、そうだな……だからこそ注意しなきゃいけない内容も増える」
「え?研究者だけじゃないんですか?」
「あぁ、当然王国のスパイも入り込んでるだろうからな」
「あっ……」
「そういうことだ……十分注意する必要はあるが……まぁ、そこは最悪見つかる覚悟はしておけ」
「わかりました」
「それに、スパイにもし見つかったとしてもだ、なるべく早く逃げ出すだけだしな」
「あ、あはは」
「ん?そろそろ俺らの番だな」
「あっ、ほんとですね」
いつの間にやら、前にならんでいた人の数が減っていました……そして、少しして私達の番がきたのです。
「今回、王都にきた理由は?」
「この街で調べたいことがありまして、出来れば王立図書館へ入場できればと」
「なるほどな……荷物検査をさせてもらうぞ」
「はい、どうぞ」
数人の兵士さんが馬車を調べます……まぁ、普通の物しかないですし、特に怪しまれるものはありません……さて、ここから問題が……
「次に、身体検査を行う」
「彼女は見ての通り若い女性だ、担当を女性兵にしてもらいたい」
「了解した」
よかった……男の人に触られるのは嫌だったし、まぁ女の人でも他人に触られるのはすごく嫌だけど……ここは我慢、我慢……あとは、カペラぁ、がんばって避けてね…
「ふむ、特に怪しいものはないな……武器は剣だけか?」
「えぇ、そうです」
「ふむ、一応剣の確認もさせてもらう」
「わかりました」
「……ふむ、これは、魔剣か?」
「わかるんですね」
「まぁな……まぁ、んー大量破壊系のものではなさそうだな、よし、問題ない」
「ありがとうございます」
「隊長、こちらも確認おわりました。彼女も問題ありません」
「ご苦労。2人とも検査は問題なしだ、入っていいぞ」
「えぇ、ありがとうございます」
「あぁ、魔法神の加護があらんことを」
「えぇ、加護にあやかりたいですね」
さて、どうにか中にはいることに成功しました……カペラががんばって見つからないようにしてくれて助かりました……
「旅人様」
「なんだ?」
「えっと、さっきの魔法神のってなんですか?」
「あぁ、この街は魔法神と呼ばれる存在を信仰しているんだ……王国なんかが信仰してるのとはまた違っててな、多神教を認めない教会連中からは嫌われてるんだがな」
「なるほどぉ……」
この世界の宗教もいろいろ面倒なのかな……まぁ、宗教関係は日本でも非常に面倒だったし……うん、関わらないのが吉かな。