「じゃ、また行ってくる」

「はいっ、気を付けてくださいね」

　旅人様を見送った私は、部屋でカペラと一緒に時間を潰したあと、昨日とおなじぐらいの時間に酒場に降りてみました……

「おっ、アンナちゃんじゃねぇか」

「ボルダンさん、また、来てたんですね？お仕事、しなくていいんですか？」

「あっはっはっ！仕事仲間にも毎日怒られてるよっ！」

「だ、ダメじゃないですかっ」

「はっはっはっ」

「アンナちゃん、今日はなにを飲むんだい？」

「あっ、女将さん……えっと、レモン水お願いします」

「はいよっ」

　女将さんから飲み物をもらうと、ボルダンさんが注文したおつまみもだされました。

「今日も奢りだから！好きなだけ飲み食いしてくれやっ」

「あぅ、あんまり食べるとお夕食が食べれないので……」

「おっ、そりゃそうかっ、わっはっはっ」

「なんだか、ボルダンさん上機嫌？ですか？」

「おぅ、こんな昼間っから酒飲みしてる、サボり魔のおっちゃんに付き合ってくれるアンナちゃんなんていう美少女がいるからねぇ、おっちゃんも上機嫌になるもんだわぁ」

「そ、そうなんですか？」

「おうよっ、ついつい仕事場の連中に自慢しちまったぜ」

「怒られなかったですか？」

「めっちゃ怒られた、娼館行ってるんじゃないかって疑われたよっ」

「そ、それは……どうなんですか？」

「おっ、もちろん安心してくれや、おっちゃんしっかり否定したからなぁっ！それにアンナちゃんはツレがいるしなっ」

「はぅっ///」

「はっはっはっ！いやぁ、アンナちゃんのツレにも会ってみたいな、良ければ明日連れてきてくれよ」

「ふぇっ！え、えっと……聴いてみます」

「おぅ！楽しみにしてるぜっ」

「そういえば、ボルダンさんって、なんのお仕事してるんですか？」

「ん～そうだなぁ、お役所仕事ってやつかねぇ」

「ならさぼってちゃダメじゃないですかっ」

　まぁ、他のお仕事でもさぼるのはダメだと思いますが……

「いやぁ、ついつい……酒が切れると手が震えてくるんだよ」

「アル中じゃないですかっ！」

「わっはっはっ」

「笑いごとじゃないと思います……」

「まぁ、やることはやってるから大丈夫さ」

「そう、なんですか？でも怒られるんですよね？」

「あぁ、うるさいのがいてねぇ」

「そう、なんですか……あっ、えっと、星読みの魔女さんって人はすごく会うのが大変だって、聴いたんですけど」

「おおっ、安心してくれ、昨日のうちに連絡はしておいた、今は返答待ちだな」

「ほ、ほんとにしてくれたんですね」

「おぅ、嘘はつかねぇからなっ」

「ありがとう、ございます」

「なに、ただ、あいつは変わり者だからねぇ……会わせてはやれるが気に入られるかはアンナちゃん次第だ、がんばれよ？」

「はっ、はいっ！えっと、彼も変わり者だって言ってました、どういう人、なんですか？」

「んーそうだなぁ……魔法の実力は間違いなく天才と呼ばれる人種だ……ただなぁ、あいつは占いが得意でなぁ、それを中心に物事を決めるところがあってなぁ……」

「占い、ですか？」

「あぁ、星読みの魔女っていうのも、占いから来てるからなぁ……」

「はぁ、そういえば、その人の名前って」

「いやぁ、おっちゃんも知らないんだよっ」

「ふぇっ？」

「いやなぁ、魔法使いどもは多かれ少なかれ秘密主義なとこはあるが、あいつは名前すら秘密にしてるし、実年齢も誰もしりゃしねぇ……秘密が多すぎるんだよなぁ……そのうえ考えてることもわかりづらいから変人扱いされてるわけだ」

「え、えっと……呼ぶとき不便じゃ」

「あぁ、だから基本星読みって呼ばれてるな」

「そう、なんですね……」

「まぁ、気にするほどでもないさ、あいつ自身がそれでいいって言ってるからな」

「は、はぁ……」

「まぁ、あいつには直接あってみないとわからんもんさ、人からの話だけだと余計に混乱するから気にしすぎないほうがいいぜ」

「わ、わかりました」

　そのあとも、おつまみをちょっと食べながらお話をしてると、扉が相手誰かが入ってきました。

「やっぱりここにいましたねっ！」

「うぉっ！なんで、ここにぃっ」

「いい加減書類が溜まっていますっ！戻ってくださいっ」

「いやぁ、俺はまだアンナちゃんと大事な話しがあああああああ」

「ふぇっ！？」

　入ってきたのは綺麗な女性でした、なんというか出来る女って感じの人ですっ！女性はボルダンさんに近づくと、彼の腕をとって関節を決めてました……

「うぉおおおおっ！おまっ、上司にその態度はどうなっ、んぉおおおおおおっ！」

「仕事に戻ってください、折りますよ？」

「わかったっ、わかったからやめろっ！」

「最初からそういえばいいのです」

「はぁはぁ……くそぉ、マジいてぇ……嬢ちゃん、すまねぇな、今日のところは帰るわ」

「は、はひっ……お、お気をつけて？」

「うちの上司がご迷惑をおかけしました」

「い、いえ……その、私も毎日奢ってもらって、そのごめんなさい」

「お気になさらず、一応この人のポケットマネーなので問題ありません」

「そ、そうですか」

「では、失礼します」

「じゃ、またなアンナちゃんっ」

「は、はいっ」

　そうして、ボルダンさんは美人さんに引きずられるように帰っていったのでした……

「アンナちゃん」

「ふぁっ！？」

「残り食べちゃえるかい？」

「あっ……はい、がんばりましゅ」

　結構残ってたおつまみを私は食べるのでした……もちろんお夕食は食べられませんでした（泣