「ここからだと後どのぐらいかかるんでしょう?」
「まぁ、ペースを考えれば問題なければ国境までは20日と言ったところだろうな……」
「結構かかりますね……」
「あぁ、魔法王国は土地が広いからな、どうしても距離がある……その分、時間はかかるんだが……ただ、定期的に魔物を間引いたりもしてるから、安定して進むことは出来るとおもう」
「なるほど……」
「まぁ、それは追ってきてる王国騎士にも言えることだけどな……」
「確かに……あの、追ってきてるのは第3騎士団っていってましたよね?」
「あぁ、そうだな……知ってるのか?」
「い、いえ……私は結局軟禁されてたのでわからないです……ただ、第3騎士団は有能だって話しをメイド達がしてるのを聞いたことがあります」
「有能か……実際有能なら面倒だな……有能だと思わせてる無能なら楽なんだが」
「そんな人いるんですか?」
「あぁ、いるいる……部下の手柄を横取りするアホとかな」
「そう、なんですか?」
「きゅっ!きゅぅうう!」
「カペラ?どうしたの??」
カペラは頻繁に耳を動かしています……なにかあるのかな?
「カペラは聴力がいいからな……どうやら追ってに気付いたみたいだ」
「え?それって……」
「矢が来るっ!頭を下げろ」
「は、はいっ」
急いで頭を下げると、視界の端に矢が飛んでくるのが視えました……あんなの当たったら死んじゃいます……
「鬱陶しいな……」
「ど、どうしましょう……あんなに撃ってくるなんて……」
「仕方ない……アンナ、結界魔法をお願いできるか?」
「えっと、ど、どうすれば……」
「障壁を頼む」
「わ、わかりましたっ!お願いしますっ!《障壁:物理》」
薄く煌く膜が馬車を包みこみ、飛んでくる矢が膜にぶつかり落ちていきます……しっかり防御は成功してる……これなら矢はもう怖くない。
「これで大丈夫でしょうか?」
「矢はとりあえず問題ないだろう……ただ、そろそろ……来たな」
「え?」
旅人様が見た方向に視線を向けると、一頭のなんか豪華そうな装具をつけた馬とそれにのった明らかに強そうな人が騎士たちから抜けてこちらに向かってきます。
「アンナ、全力で一撃を防げ」
「は、はいっ!」
私は魔力を流して障壁の強度をあげます……すると、馬で近づいてきた男性が背負っていた大剣を抜くと、思いっきり叩きつけてきました…
「くぅぅ……」
物凄く重い一撃……で、でもどうにか耐えることができました……
「よくやったっ!御者を頼むっ!俺はあいつの相手をするから」
「え?は、はいっ!わかりましたっ!あっ、でも魔法が……」
「いい、この距離なら騎士たちも攻撃してこれないっ!」
「わかりましたっ」
私は御者台に行くと、お馬さんにお願いします……旅人様は私と変わるように馬車後方に向かうと……追ってきた騎士に飛び蹴りをしたのです……
「ふぇぇっ!? お、お馬さんっ!少し離れたところで止まってっ!」
私のお願いを聞いてくれて、少し離れたところで止まってくれました……私があわてて後方を確認すると、旅人様の蹴りで馬車から落ちた男性騎士、旅人様が睨み合っています……
「旅人様っ!」
「そこにいろっ!障壁は展開したままにしておけっ!」
「は、はいっ」
旅人様に言われて私は再び障壁を展開します……これで、こっちは大丈夫だろうけど……旅人様は大丈夫でしょうか……
「我はアルクレイン王国第3騎士団団長っ!グランツ・ドルメールっ!だっ!我は我が国から逃亡した邪悪なる魔女を追ってきたっ!そこにいる女を差し出せっ!さすれば貴殿の行為は不問にしようっ」
「悪いが断るっ!成人したとはいえ、まだ15の小娘を殺そうとするのが騎士のやることかっ!?そして元来なら守るべき王族であるにもかかわらずだっ!お前らの好きにさせるつもりはないっ!」
「愚かな……いいだろうっ!では、貴様を殺してあの娘の首をとるまでっ!」
「相手してやるよ」
そして、2人は同時に動くと、ぶつかり合います……あの騎士は大剣を振り回し、旅人様はそれを回避し、もってる魔剣で攻撃をしかけていきます……
「うぅ……2人とも強い……全然動きが見えない……」
2人とも達人というやつでしょう……虚弱娘の私にとってはあれを見るのは無理です……というか必死に見ようとすると酔いそうですし……
「グッ!」
「チッ」
「マジかよ……隊長と互角……?」
「嘘だろ、団長相手できるやつなんてそんなにいないはずだろ……」
「全然動きが見えねぇ、どうなってんだよ」
「呪の姫を討つだけの簡単な仕事じゃなかったのかよ……」
あちら側で見ている騎士たちも呆然とした様子で2人の戦いを見ています……私よりは見えてるみたいですね、当然ですけど……
「らぁっ!」
「ぐっ!?」
おおっ、旅人様の攻撃が騎士の腹部を捉えたみたいです……ザザザと音をたてて騎士団長が押されるのが見えました……
「強い……なぜ、貴殿のような実力者がその呪の姫を護るっ!そやつが生きてるだけで世界は危険に晒されるのだぞっ」
「は?呪の検証もしなかったし、対応策も探さなかった癖になにをいってる」
「なに……」
「せっかくだから教えておいやてる、呪の効果範囲はそれほど広くない、王都にいたら一生呪は発動しなかっただろうな……それに、呪を封じる方法も存在している……お前たちは勝手に見限って殺そうとして失敗して、こんなところまで押しかけてきて……迷惑でしかない」
「ぐっ……か、関係ないっ!その娘の首をとるのが我らが仕事っ!呪の子には死をっ!」
「そうか……じゃあ、俺はあいつを護るためにお前の首を取る」
「いくぞっ」
「はぁっ!」
2人が再び動いてぶつかりあう……私でもわかる範囲だと、大剣をあんな速度で振るう騎士団長もすさまじいですが、片手剣であの大剣を軽々と防ぐ旅人様もすごすぎます……あっ、また動きが見えなくなりました……速すぎです……そうやって見ていると……障壁に何かがぶつかりました……
「はれ?あっ……狙われてる?」