さて、どうやら旅人様と騎士団長の戦いに気がそらされてた私は障壁にあたった矢がぶつかって驚いたのですが……
「よ、よかったぁ……障壁はったままで……」
視線をむけると驚きと苛立ちをした騎士の姿が見えます……まぁ、確かに星読みの魔女さんの言っていたことを考えれば私の魔力量はとんでもないらしいですし……気が散ってても魔法を維持出来たからよかったですが……危ないところでした……
「というか、どうしましょう……今は弓での攻撃ですけど……近づかれたら……」
私の障壁は物理攻撃に強いですし、弓や剣での攻撃にも耐えれますが、あの人数に攻撃されたら流石に無理かもしれません……
「た、旅人様は……」
「うぉらぁああああああああっ!」
「ぐっ、くぅ!?」
わわ、押してる、旅人様が間違いなく押してますっ!あれなら勝てそう……なら、私も全力で防御に専念しないと……
「おい、団長押されてるぞっ、やばくねぇか?」
「くっ、これは予想外だ……俺たちは急いであの姫の首をとれっ!」
「突撃ぃいいいいいいい!」
わわわ、騎士たちがこっちに迫ってきます……ど、どうしましょう……
「鬱陶しいっ!《水渦》」
「「「「「「ぎゃぁああああああああ!!」」」」」」
「ひゃわっ!?」
旅人様が魔法をつかったみたいです……いきなりあらわれた水が渦を巻いて騎士たちのを飲み込んでしまいました……
「なっ!くそっ!」
「ここまでだっ!アンナっ!」
「ふぇっ?」
旅人様は魔法に驚いた騎士団長を再び蹴り飛ばすと、こちらに走ってきました……
「キャッ!」
そして、私を抱えると馬車に伸び乗り急いで発進させたのです……
「よく耐えた……とにかく逃げるぞ」
「えっ、は、はいっ、だ、大丈夫なんでしょうか?」
「あぁ、さすがに時間をかけて魔力を練ったわけでもないからな……あれで死人はまぁ、でても数人だろう……とりあえず、あいつらがパニックになってる間に逃げるぞ」
「わ、わかりましたっ」
―――グランツ・ドルメールside―――
「逃げられたか……」
「ゴホッゴホッ……団長、申し訳ありません」
「仕方ない、まさか魔法を使えるとは思ってなかったからな……負傷者は?」
「はっ、魔法の影響で2名が死亡、10名が負傷しています……」
「死者が出たか……」
「はい……」
「残念だが、仕方ないだろう……相手が悪かった……まさかああも押されるとは思わなかったからね」
「はい、団長と互角以上に渡り合う人間なんて初めてみましたよ……」
「ははは、私より強い人間は王国にもいるがね……とにかく、予想以上に強い護衛がついているのが分かっただけでも収穫だ……しかも魔法まで使うとなると……」
「いかがいたしましょう?直ぐに追いますか?」
「そうだな……死者はここに埋葬する……家族へは見舞金と形見を」
「かしこまりましたっ」
「我々はこれより追撃を行うっ!相手は魔法も使う傭兵だっ!十分注意せよっ!」
「団長、ひとつ気になることがあるのですが」
「なんだ」
「はい、あの、呪の姫は天啓を持たぬのではなかったのでしょうか?あの時間違いなく魔法をつかっておりましたが」
「確かにそうだな……それは私も気になっている……可能性としては、後天的に身に着けたということだろうが……現状はわからぬ、魔法王国にいたことを考えればなんらかの魔道具を貸与されている可能性もある……とにかく第一目標は姫の首だ!つぎは包囲殲滅を行うっ!第2第3小隊はこのまま追撃をしろっ!ただし、必要以上に攻撃は仕掛けないように、とにかく体力を減らすことを優先しろ」
「はっ!」
「第4、第5小隊は私とともに迂回して前面から挟みこむぞっ!」
「了解っ!」
「では、急ぎ準備をして出発するぞっ!」
私の言葉に部下達は急ぎ準備を始める……先ほどの一撃馬が数頭ダメになってしまったのも問題だが……このままおめおめと逃がしたとなれば国王陛下に合わせる顔がない……
それから、準備が整った我らは、姫を討伐するための追撃戦にうつることとなる……
「行くぞっ!全軍進軍っ!」
―――アンネレーゼside―――
「どうにか、見えなくなりましたね……」
「そうだな……ただ、そうしないうちに追いかけてくるだろうな」
「やっぱり、そうですよね……」
「あぁ、アンナ、魔力に余裕はあるな?」
「はい、全然問題ありませんっ」
「ならいい、追いかけてきたら引き続き障壁を頼む、もし魔法を使ってくるようなら反射を使ってくれ」
「わかりましたっ」
さて、それから2時間ほど移動したころ、こちらに向かってくる影が見えました……
「旅人様ッ、きましたっ」
「わかった……」
「魔法発動しますっ《障壁:物理》」
これで、よし……見た感じ10人近い騎士が追ってきてるみたいです……でも、さっきまでいた団長の姿はありません?
「旅人様、騎士団長の姿がありません、それに数も少ないです」
「そうか……距離も一定を保ってるな……弓は持ってるか?」
「えっと、持ってます……でも構えてはいません」
「そうか……」
「どうしましょうか?」
「とりあえず今は逃げるしかないが……正直馬がだいぶ疲労してる……逃げるのはかなりしんどいかもしれない」
「それは……確かに……」
どうしよう……確かにこのままじゃ追いつかれちゃいます……どうしよう、止まったら襲われるでしょうし……
「そういえば、なんで接近してこないんでしょう?」
「たぶん、俺を警戒してるのと、アンナの魔法の正体が掴めないからだろうな……接近するのを止めて多分、こちらの体力を奪うのを優先してるんだと思う」
「そんな……」
確かに、お馬さんにはだいぶ負担をかけてるし、このままだと疲れて動けなくなっちゃう……それどころか、怪我をしたら大変だし……怪我はまぁ、私が治してあげられるけど……どうしよう、なにか、なにか方法があれば……
「治癒魔法でなんとかならないかな……元気になって元気になって……」
怪我してるわけじゃないからダメかな………そんなことを思うと身体から魔力が抜けるのを感じました…
「え?」
その瞬間、馬さんが元気に鳴くと速度をあげて走り出したのです……