「はぁぁっ！」

「ぐあぁっ！？」

「よし……」

「旅人様っ！」

「あぁ……出してくれっ」

「はいっ」

　あれから、どうやったのか私達より先回りしていた王国騎士の襲撃を受けることになりました……ただ、旅人様は毎回それを危なげもなく倒してくれるので、私もカペラも怪我なく進むことが出来ます。

「すんなりいかない、ですね……」

「あぁ、そうだな……しつこい連中だ……」

「そうですね……」

　ずっと逃走を続けてるわけですが……ちょっと気になることがあります……疲れるのは当然だと思いますが、ずっと気になってることがあります……それは、どんどん旅人様の反応が鈍いというか……なにか考えてることが多くなってきたのです……

「あの、旅人様？」

「ん？なんだ？」

「いえ、なにか悩み事でしょうか？そ、その最近はずっと悩んでるような気がして……」

「ん、あぁ……いや、なんでもない」

「そ、そうですか？」

　そうい言われちゃうと私にはなにもできません……でも、旅人様が悩んでるのはわかりますし……どうしましょう……どうにか彼の悩みを解決してあげたい……でも、私になにが出来るだろう……

　それから、しばらくして、私達はまた休憩をとることになりました……

「騎士たちはだいぶ減ったでしょうか？」

「あぁ、まぁ、そこそこの人数は斬ったからな……あちらもいい加減、諦めてくれればいいけどな」

「そう、ですね……考えたらこの短期間で結構な人数が犠牲に……」

「別に仕方ないし、かまわないだろう……お前の命を狙う連中だ、いちいち気にしてたら仕方ない」

「そう、ですね……あ、あのっ！」

「なんだ？」

「やっぱり、旅人様、なにか悩んでいますよねっ！？わ、私でよければ、は、話してくれませんかっ、わ、私、あんまりお役に立ててないですし、せ、せめて、せめて旅人様の悩み事、で、できるかわからないですけど、か、解決、できればってっ」

「そうか……そうだな……」

　それから旅人様はしばらく並んだあと……私に視線を向けました。

「はぁ……今後、聖国に行けば嫌でも関わることになるだろうしな、説明しておく」

「え？は、はいっ」

「そうだな、なにから話すか……まぁ、俺の出身だが……聖国の地方の田舎町でな」

「じゃ、じゃあ、聖国には久しぶりの帰郷ということですか？」

「あぁ、まぁ、故郷の町に戻るわけではないから帰郷とはちょっと違うかもしれないけどな……ただ、町から出てからはしばらく聖都にいたこともある……俺はそこで……あー、まぁ、ちょっとした、まぁ、貴族みたいな人間と関わりがあってな」

「貴族ではないんですか？」

「いや、まぁ、貴族と言ってもいいんだが……あの国は貴族制度とはまたちょっと違っててな、説明が面倒なんだが……まぁ、気にするほどでもないからスルーしてくれ」

「は、はい」

「それで、俺の能力がまぁ、認められて、その家に一時期雇われてたりしたんだ……」

「わぁ…でもでも、旅人様の実力を考えたら、当然ですよね！」

「ははは……まぁ、それでなぁ……ちょっとそこでトラブルが起きた……その犯人はぶっちゃけわかったんだけどな……国でも重要な役職の人間の息子でな……まぁ、その結果、罪を俺にかぶせられたんだ……俺が名前を隠してるのも、まぁ……それが原因だよ……偽名でもよかったんだけどな、考えるのも面倒で旅人だなんて名乗ってるよ」

「え、えっと……それだと、旅人様は戻るのはた、大変なんじゃ？」

「そうだな……今がどうなってるかは知らないけどな……俺としては出来れば聖国には近づきたくはなかったってのが実情でな……ただ、安心してくれ、そのせいで考えこんで心配させたのは申し訳ない……行くことは自分でも納得してるから、安心してくれ」

「旅人様……あ、ありがとうございます、教えてくださって……」

「いや、改めてこっちもすまなかった、心配かけたな」

「いえ……でも、で、でも！聖国でなにかあったら、わ、私が、私がかならず！お助けしますからっ！」

「ふっ…そうか、そうだなぁ、期待してるよ」

「はいっ！」

「さて、そこそこ時間も経ったし、食事の準備をするか」

「そうですね！」

　旅人様が少しでも元気になってくれたならよかった……私、私が出来ること……どうなるかはわからないけど、彼のためにがんばらなきゃっ！まずはご飯の火の番をしっかりしなきゃ！

「きゅい」

「カペラ～♪　そろそろご飯だからね～」

「きゅぃぃ！」

「ん？え？宝石が欲しいの？」

「きゅぃっ！」

「えぇ……さ、さすがに持ってないよぉ」

「きゅっ！」

「あっ！カペラー！」

　カペラは私の膝から飛び降りると走って行ってしまいます……驚いてカペラが駆けていったほうを見ると、旅人様の姿が見えます。

「きゅぁー！」

「ん？カペラ？どうした……お前から、俺に近づいてくるなんて初めてじゃないか？」

「きゅぅううー！」

　カペラは旅人様の服にしがみつくとどんどん身体を登っていきますっ！奇跡ですっ！あのカペラが、ついに自分から旅人様に触れられていったのですっ！！！

「きゅー！」

「ん？あー宝石か？」

「きゅぃ」

「わかった、わかった」

　旅人様は懐から袋を取り出し、その中に入ってる宝石を取り出しました……びっくりです、まだ持ってたのもびっくりですが、持ち歩いてるんですねっ！落としたらと考えたら怖いですっ！

「ほれ」

「きゅぅー」

「美味いか？」

「きゅぃ～♪」

「カペラ、よかったねぇ～」

　美味しそうに宝石を食べるカペラ……宝石、キラキラ綺麗……ｺﾞｸ……はっ！いけない、美味しそうとか思っちゃいけない、人間なんだからっ！宝石なんて食べれないんだからっ！

「どうかしたか？」

　旅人様に聞かれどうにかごまかして？私はその場を離れて火の番に戻ったのでした……とりあえず、カペラと旅人様のふれあい記念ですっ！楽しくご飯を食べたのでしたぁ～！