1月下旬、寒さもまだまだ緩まなく外に出たら震えるであろうそんな日、ぬくぬくと暖かい布団の中で絡まる足を擦り付ける。
頬にあたる暖かさや、普段感じない身体の窮屈感に、ん?と半分覚醒し始めた芽依は疑問に感じた。
いつもよりも暖かい布団の中、部屋の温度調節の魔術に何かあったのだろうか……と目を開けると、布団とは違う広がる布に、緑の髪。
そして少しの肌色が見える。
「………………え」
腰に回る何かを触るとツルスベで、恐る恐る上を見ると眠るシャルドネがいた。
すやすやと眠っているその顔は穏やかで、芽依を優しく抱きしめている。
思わず自分の服とシャルドネの服を触るが異変は無いようだ。
「…………未遂!良かった、綺麗さのあまりに私シャルドネさん襲ったかと思った……」
「襲ってくれても良かったのですよ?」
「ぴぎゃ!!」
意味は違うが襲ったのとあまり変わりのない芽依。
酔っ払い芽依にしがみつかれて、あちこちあむあむされたシャルドネは就寝前には部屋を出ようとしていた。
しかし、しがみつく手が離れず寧ろ力が入る。
「………………メイさん離してください……寝ましょう?」
「うん……おやすみ」
「このままでは一緒に眠ってしまいますよ?」
「うん……あったか…………い…………」
「……………………困りましたね」
深い眠りに陥った芽依を抱き締めたまま、その暖かさと甘い香り、そして少しの酩酊にシャルドネも眠気を加速させる。
しかし、眠気に負けてしまうと朝芽依が驚いてしまうと腕を外そうとすると、眉を寄せた芽依が両足を絡めてきた。
ぎっちりと押さえつける女性の体に無闇矢鱈に触れないようにしている紳士なシャルドネは隙間なくくっつかれ両手を上げた。
「………………これは、困りましたね」
甘い芋の相談だったはずが、まさかの惨事にシャルドネは息を吐き出した。
シャルドネとて人外者であり男である。
気になりだした女性が甘い香り全開で抱き着きあむあむと自分の肌を甘噛みするだけでなく、そのまま寝るという暴挙だ。
「私も食べてしまいますよ……?ふふ」
そう言うだけで一切唇を芽依に触れさせることをしないシャルドネは、目を瞑った。
「…………今日だけ、一緒に眠るのを許して下さいね」
「……………………大変、大変申し訳ありませんでした」
「いえ、いいのですよ。私も貴方を離せなかったので、お相子ですね」
優しく芽依のせいじゃないと言うシャルドネだが、確実に悪いのは芽依である。
ベッドの上で土下座する芽依に手を振り答えるシャルドネは足を崩しているせいで、土下座する芽依の視界にシャルドネのツルスベの足が見え、思わず昨日のように手を伸ばしそうな痴女っぷりである。
ギュッと手を握りしめ自分を諌める芽依の後ろに現れるラスボス。
「……………………何をしている」
「ひっ!!お母さん!これには訳がっっ!!」
「セルジオ、いきなり寝室にくるなど随分無粋な真似をしますね」
「あ?なにが無粋だ……朝に女の部屋で寝起きをしたお前に言われたくないな」
「それを貴方に説明する必要性が見つけられませんが?」
「………………メイ」
「はい!ごめんなさい!!」
ピクリと眉を跳ね上げさせたセルジオと、微笑むシャルドネに挟まられ芽依は朝から生きた心地のしない起床をする事になった。
「メイ?」
「メイさん?」
「ごめんなさい!!私が悪かったです!!」