あれから5日経ったが、何事もなく過ごしている。何事もなくというか。ほとんどルディがくっついているのも変わらない。
ルディは何も聞いてこなかった。そして、本当に誰にも言ってはいないようだ。もし、上層部に報告していれば、今頃、私はどこぞかに軟禁でもされていただろう。
この5日間は、朝起きて、森の中のぽつんと一軒家に出社して、特に何もせずに宿舎に戻るということを繰り返した5日間だった。
他の部隊がどのような事をしているかわからないが、この13部隊は日々隊員は自分の好きな事をして過ごしている。そして、気まぐれのように討伐命令が下りてきて、それに数人が駆り出されるという具合だ。
先日のように全員が出撃するのは珍しいらしい。
隊員が何をして過ごしているかといえば、ファルは何かと書類に目を通してはいるが、ちらっと見てみたが、どう見ても13部隊のことに関しての書類ではなく、個人的な貴族が管理している領地に関する書類だった。微妙に計算が合っていなかったところを発見してしまったが、黙っておいた。ファルの仕事に口出すことではない。
ルディは私を膝の上に乗せて、本を読んでいることが多い。私はそこにいる必要はないような気がする。
ティオは足が折れているので、医務室でベッドの上の住人となっているので、ここには居ない。
ミレーはシャールとゲームをしている事が多い。カードであったり、ボードであったり、ビリヤードであったり、まぁ暇だということだ。
ヴィオは部屋の隅で怪しいものをブツブツと言いながらかき混ぜている。ファル曰く、新しい毒を開発しているらしい。1ヶ月ぐらいはあの状態だそうだ。
そして、私はと言うと……やることがない。今までは午前中は早朝から聖水作りに訓練があり、午後からは小銭稼ぎに街に出て、色んな仕事をして夕方の門限までに戻ってくるという忙しい日々を送ってきたので、何もすることがないとなると困った状態になってしまう。
仕方がないので、増産品を私の手に合った剣に改造してみようか。私は5日目にして暇に耐えきれずに刀を創り出そうとしていた。
火が入っていない暖炉の前に座る。その横には勿論ルディが本を片手に座っている。
黒いすすがついた暖炉の中に剣先を入れる。そして、炎の魔術で鉄剣を焼く。
私の手にあった鉄剣とは長めの幅のある剣だ。いわゆる大剣。小柄な私が使うには違和感がある大きさだ。だが、普通の剣だと重力の聖痕に耐えきれないのだ。3本ほど壊したところで、神父様から大剣の鉄剣を勧められ、それから剣を壊すことはなかった。
赤く熱したところで、不純物を飛ばすために叩くそうだが、形を形成させながら、不純物を落とすようにする。
『魔法とは想像力だ!』
正にそのとおりだ。
形が出来上がったところで、水の魔術を使って冷やす。なかなかいい感じだ。それを風の魔術で片刃に沿わすように研いでいく。本当は波紋を入れたいところだけど、あれは特殊な土で焼きを入れるらしいとしか知識にないので、無理そうなので諦めた。
「ふふふ」
大太刀とまではいかないが、反りが強い太刀の形でおおよそ刃渡りは80
何か試し斬りができるものはないかと、後ろを振り向けば、8つの目が私を後ろから見ていた。ルディは横にいるので、そこには入らない。ということは、ティオ以外の全員が私のお遊びのような作業を見ていたのだ。
「暇なので、魔物で試し斬りをしてきていいですか?」
「気になるからいいですよ。一緒に行きましょう」
お、珍しい。ルディからOKが出た。
「あら、でも何処にいきます?近場だと北の森でしょうか?」
「でも、あそこは緑の奴らの管轄だよね。揉めたら、面倒だよ」
「で、では、東のモ··モルド山はどでしょう?」
「いや、あそこは最近、数頭のドラゴンが巣を作ったという報告が来ているから止めたほうがいい」
ああ、皆さん暇だと。
しかし、ただの試し斬りなので、近場でいいのだけど。
「魔物がいる近場だとどこですか?冒険者たちが依頼を受けるような浅瀬でいいのです」
「なら、北の森でいいでしょう。このまま森を抜ければ、外壁越しに隣接していますからね」
あ、このまま森を抜けると外に出られるわけか。そして、皆がいそいそと外に出る準備を始めた。本当にこの第13部隊って何なのだろう。あまりにも自由すぎる。
そして、私はルディに恋人つなぎで手を握られ、森の中を歩いている。傍から見れば森の散策を楽しんでいる恋人に見えるかもしれなが、私の左手には抜身の太刀もどきが握っている。その前にはヴィオが出来上がった毒の自慢話をたどたどしくしている。その話をミレーとシャールがワインにでも混ぜてみる?なんて恐ろしい話をしていた。
「で、なんで剣を作っていたんだ?」
ルディの横を歩いているファルから質問された。なぜって?それは勿論。
「暇だったから」
それ以外の何物でもない。